活動報告
2020年03月30日(月)

二層構造の屋根や壁 ~防露・防雨設計~(morinos建築秘話25)

断熱性能日射制御性能など、温熱環境が高まってくると、冬でも室内が暖かくなったり、夏も暑くなり過ぎません。
非常にいいことですが、気を付けないといけないことがあります。

それは、室内と室外の温度差ができると発生する「結露」です。
結露は空気が冷やされると、空気中の水分(水蒸気)を持ちきれなくなって水滴となって現れる現象です。
結露によって水分供給されると、生物である腐朽菌やカビ、ダニの繁殖を助長してしまい建物の耐久性や空気環境に悪影響を与えます。

みなさんが日常的に良く見る結露は、ガラスだと思います。
1枚ガラスだと、室温20℃、美濃市の外気温-0.8℃でガラス表面は4.7℃まで下がってしまいます
これだと、室内の温湿度が20℃、40%では結露でびっしょりになります。

アルミサッシ、1枚ガラスの結露

morinosのトリプルガラスは表面温度が16.6℃(上記と同じ条件)です。室内の湿度が80%近くなっても、結露は出てきません。
ただ、湿度が高すぎると他の部分にカビなどの害が出てきますので、加湿しすぎないことが肝要です。

つまり、目に見える部分の結露は、断熱性能(熱貫流率U値)を高めて表面温度を高くすることで解決できます。
morinosでは、ガラスコーナー部など少し断熱が弱い部分以外はまず見ることはないでしょう。

 

これで結露対策は万全かというと、まだ気を付けるべき結露があるのです。
それが「内部結露」、屋根や壁内部の目に見えないところで発生する結露です。

morinosでは、夏も冬も、ばっちり対策していますので大丈夫。安心してください。

 

内部結露対策の基本は、①屋根や壁の中に湿気を入れないこと、さらに②入ってしまった湿気を抜いて上げること、の2つに気を付ければ大丈夫です。
と簡単に説明しても、夏と冬では湿気の入り方が違ったり、材料の湿気の透過特性をしっかり意識しないと湿気が内部に溜まって結露してしまいます。
ここは建築の専門家の領分です。。

一番気を付けないといけないのが、外壁や屋根の外装材廻り。
防水効果が高いために排湿もうまくいかず、そのままでは、内部に溜まった湿気を外に排出することができません。
そのために、外装の内側に通気層という湿気を排湿する層を確保する必要があります。

morinosの壁を見上げて見ます。

壁の下に隙間が開いているのがわかるでしょうか。これが通気層の空気取り込み口。上部までつながっていて湿気を抜いてくれます。

屋根はというと、見上げて見ると、、、わかりませんね。
目立たないように納めたからです。

工事中の様子を見てみましょう。(下の写真)
写真上は先端に虫が入らないようにステンレス網が張られています。
写真下には現在、見えている化粧の天井板が張られています。網部分が屋根の下の方とつながっていて、湿気を抜く仕組みです。現在はこの網部分を黒く塗装していますので目立ちません。

屋根下の取り込み口は樋の奥に隠れて見えにくいですが、よく見るとこちらもステンレス網が取り付いています。
ここから空気を取り入れ、湿気をからめとりながら上部先端から排湿しているのです。

その他の外壁なども通気層が確実に設けられ、湿気が留まらないようにしています。
下の写真では、外壁の通気層(縦の桟)の上に、外壁板を縦に張るためにもう一度横桟を組んでいます。
手間がかかりますが、見得ない部分のつくり込みで耐久性が変わってきます。

通気層にはもう一つ重要な役割があります。

上の写真で通気桟の下に白いシートが張られているのが見えますが、これは、透湿防水シートと呼ばれるものです。
その名の通り、外からの水(水分子が集まってクラスターを作ったもの)は防ぎながら、壁内の湿気(水分子単体)は通すシートです。(屋根にも同様の性能のものが使われています。)

つまり、もし屋根や外壁が破損しても、通気層部分で水を流す仕組みの役割があり、二重に雨水の浸入を防止しています。
台風の多い日本では、何が飛んできて外壁や屋根を破損するかわかりませんので大切な設計です。(破損後は、そのままではなくしっかり直す必要があります。)

通気層の役割は他にもあります。
通気層の目的を整理してみると、主に以下の4つです。

1.壁や屋根の中に入った湿気を抜くため
2.二重に雨水の侵入を防止する二次防水層のため
3.日射が当たった高温の熱気を抜くため
4.柱や梁などの構造躯体を傷めず外装材を交換できるようにするため

3番目の性質は、日射熱の項目で紹介します。

4番目の性質は長寿命化にとっては重要な要素。
morinosは外壁は無塗装で仕上げています。腐朽菌、シロアリは来にくいといっても、気象劣化によって、取り換えが来ることもあります。
その場合に、柱や梁を傷めることなく、外装材だけ修繕することができるのです。

見えないところにも工夫を凝らす。
日本古来から、大工さんはじめ職人さんが大切にしてきた考え方です。

morinos実習秘話+マニアック----------------------

今回の結露判定も、断熱計算同様、学生の実習でも再確認しています。

私の作成している判定シートで外壁を分析してみます。下の図の右下の折れ線グラフが結果です。
室内10℃、70%、外気温0.9℃、70%と想定して、この状態が長く続いたときの計算です。
赤いラインが、壁内の温度変化、青いラインが露点温度変化を示します。(左が室内、右が外部)

赤いラインが、青いラインを下回ると結露のリスクがあるということ。
下の外壁では問題なく赤いラインが上に来ています。

では、屋根(下の図)はというと、真ん中あたりで結構ぎりぎりになっています。
学生も計算してみて少し心配そう。

理由を考えてみると、中央部のピンク色の層がCLT36mmです。CLT素材は接着層によって湿気を止めてしまいます。
そのため、室内(左)から湿気が入っていくと、CLT層で湿気がストップしてしまいます。そこで屋根内の温度が下がっていると、結露リスクが上がるのです。
morinosはCLT層をはさんで、上下にセルロースが吹き込まれています。そのため、CLT層の室内側で屋根内温度が下がったためにぎりぎりの状態(相対湿度96.7%)です。

このように、CLTに対して上下2層に分けてセルロースを吹き込んだのには理由があります。
下の写真は、基本設計の最終段階で、隈さんやデデリッヒ教授をお招きした基本設計講評会の模型です。

屋根に段差があるのがわかりますか?

当初は、CLTパネルの上部に断熱層をたっぷり確保する設計でした。これであれば、CLTによって屋根の断熱層内に湿気を入れることはありません。
そのため、室内に面する断熱部分だけ屋根を分厚くし、途中で段差を付けて、破風板周りは薄く軽快に見せる計画としていました。

ですが、講評会の場で隈さんから「雨仕舞いを考えると、屋根はシンプルな方が良い。」という提案を頂き、現在のような形になりました。
つまり、屋根上部は最低限の厚み(結露しないようにCLTを冷やさない)を持たせて、CLTの室内側に断熱層を持ってくることです。(集成材の梁成との関係もかなり検討しました。)
木造建築にとって、雨仕舞は長寿命化に非常に大切な要素。本年度の学生も真剣に課題研究に取り組み、雨仕舞特記仕様書というかたちで発表しています。

それで、できた屋根構成が上の計算シートです。

ぎりぎり内部結露判定をクリアするのですが、このままでは、学生も心配する通り、少しリスクが大きめでしょうか。
ですが、ここでセルロースファイバーの性質が効いてきます。調湿性能や蓄熱性能があるということです。
この湿気や熱を調整してくれることで、伝達時間がかかり結露対策として有利にしてくれるのではないかというもの。(不利になることもあるので計算は必須です)

そのためには、室内や室外の温度、湿度をリアルタイムに変化させた場合の計算が不可欠です。
今回は、ドイツ・フラウンフォーファー建築物理研究所のWUFI Proというソフトで安全性を確認しました。

1時間ごとに変化させながら3年間分の計算をします。上のグラフの上段が温度(赤が屋根内温度、紫が露点温度)、下段が湿度(緑が相対湿度、青が素材の含水率)です。
2月1日の12時で止めた状態ですが、緑のラインを見ると、CLT室内側で最も高くなっていますが90%には届いていません。(色が塗られた部分が3年間で変化した範囲です)

湿気移動が逆転する夏型の内部結露に関してもセルロースの調湿という性能が効いて問題ないことが確認されました。
ただし、結露計算の注意点としては、施工がばっちりできている想定での計算ということです。
今回は専門職の断熱職人が来て、しっかり施工されていますので、こちらも問題ありません。

余分な心配なく、morinosプログラム活動に専念してくださいね。

准教授 辻充孝


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