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2020年03月29日(日)

太陽の熱で冬はポカポカ、夏はガード(morinos建築秘話24)

太陽の恵みといえば光と熱のエネルギー。光と熱を同じものに考えがちですが別の性質を持っています。

例えば、照明。
同じ明るさを確保できる照明でも、白熱灯はかなり熱くなりますが、最近のLEDはあまり熱くなりません。
LEDは熱は少なく光を多く出していて、熱の分が省エネになっています。
同様に、太陽も光と熱の波長の異なるエネルギーを出しています。

今回は同じ太陽の恵みでも「日射の話(その1)」です。(昼光利用は建築秘話19で紹介しています)

日射熱は、冬はポカポカと気持ちいいですが、夏は蒸し蒸しと嫌な感じです。
つまり、日射熱を考えるときは、冬は如何に取り込むか、夏は如何に遮るかという、正反対のことを両立できるように設計する必要があります。(光は、夏冬とも適度に取得したいので、昼光利用の考え方はシンプルです。)

morinosの消費エネルギーは8割以上が空調エネルギー。省エネのためには断熱、気密と合わせて日射熱制御は大切な要素です。

例えば冬、なるべくたっぷり日射熱を取り入れたいとすると、皆さんはどう設計しますか。

普通は日射が入る窓をいっぱいつければいい。と考えます。正解です。

ですが、効果的にたっぷり入れるには、ここで勘所と計算による設計力が必要なのです。
①どの方位も同じ日当たりでしょうか。樹木や隣棟は影響しませんか。
②季節によって日射の当たり方は同じですか。
③朝と昼、夕方の時間によっても違いませんか。
④確かに日射は入るけどその分熱が逃げませんか(冬期)。
いろいろな要素を複合的に考えて開口部を設計しないといけません。

順番にmorinosの場合で考えていきます。

まずは①周辺状況の確認です。下のmorinos周辺の航空写真を見てください。
morinos(赤い四角)の北側は情報センターが近接してほとんど日が当たりませんが、南は開けていて陰になる要素はありません。東は演習林の山が迫っているため朝日は遅めです。西は下り斜面ですがすぐ横に桜の木が植わっています。

赤い四角がmorinosです。軸が 15°ほど傾いています。 出典:国土地理院撮影の空中写真(2008年撮影)

南と東は4m近い深い庇が出ていますが西は短め。西日が気になるところです。
西には桜並木があり、この桜の木の遮蔽効果をある程度、期待しています。
葉の無い冬から春にかけてはたっぷりと日射が降り注いで気持ちい状況がすでに確認できています。(上の写真参照)

夏の日差しは、まだ体験が出来てませんが、3Dモデルでの検討があります。
葉っぱが茂ると、ある程度の遮蔽効果が見込めます。

8月1日の15:30の日差しの様子です。かなり直射日光が減っているのがわかります。

8月1日 15:30の影(植栽ナシ)

8月1日 15:30の影(植栽アリ)

いろんな属性の方が来られる施設の性質上、建築的は格子やスクリーンで、完全に直射日光を防ぐことを目標にはしていません。

冷房が効いた部屋で少し木漏れ日が降り注ぐのが好きという人や、夏の日射はやっぱり嫌という人は土の洞窟に移動したりと、利用者が心地いい居場所を、季節や時間に合わせて探すのも楽しみの一つです。
とはいっても、熱が入りすぎて冷房エネルギーが増えすぎるのは注意しないといけません。様子を見ながら外構計画も含めて変化させていくことが学びにもなるのです。

緑のカーテンもつくるのも効果的ですが、あまり建物に近接するのは耐久性の観点から推奨できませんが、今後のプログラムでどう考えるかですね。

まずは、桜の葉っぱが茂ってきたら日射取得エネルギーの実測もいいですね。

②季節についてです。
夏の日中は頭の上から太陽が照り付けますが、冬は割と低い位置から日射が入ってきます。
これは、太陽と地球の公転軸に対して地軸が約23.5°程度ずれ、日本が北緯35°前後の位置(美濃市は北緯35°32′)にあることに起因します。

つまり、夏至の南中時の太陽高度は、90°+23.5°-35°=78.5°の真上に近い角度、冬至は90°-23.5°-35°=31.5°の低い角度になっています。
昔から言われる「深い軒先で夏の日差しは遮り、冬は取り込む」は先人の知恵なのです。

ただ、勘違いしている人も多いですが、「夏至」は夏真っ盛りではありません。
夏至はいつ頃が知ってますか?

夏至は毎年6月21日頃。まだ涼しく夏の始まりの時期です。
最も暑くなるのは、7月下旬から8月上旬。夏至と同様の二十四節気(1年を24の季節に分けたもの)で表現するとその名の通り「大暑」。夏の日射はこの時期を中心に検討します。
(①の検討の3Dパースも最も暑くなる8月1日の図です。)
同様に「冬至」は12月21日頃。寒いですが、最も冷え込むのは1月下旬から2月上旬の「大寒」です。

さて方位別の夏冬の日射強度の変化ですが、東面と西面は、日射の当たる割合が冬に10%程度向上する程度ですが、南面は、昼間に太陽高度のさがる冬は夏期の2倍程度になります。
なので、昔から南の開口部が優遇されてきました。

そのためmorinosでも南面の開口部は大きく取られています。

morinos南の大開口

一方で、南は周辺に遮蔽される建物や樹木もない(①の検討)ため、軒の出を3Dモデルで検証し、夏は概ね直射光を入れないように庇を4m跳ねだしています。

8月1日 14:00の影

一方で、③太陽は時間によって移動する動く熱源ということを忘れてはいけません。
深い軒先も朝日や夕日にはかないません。何せ真横から日光が来るからです。
昼光利用ではリズムを作る立役者ですが、熱利用ではうまくコントロールする必要があります。
といっても、風と違って太陽の動きはほぼ確実に読めますので、まさに設計力です。

コントロールのポイントは、夏と冬で日の出の方位が多少異なることです。
冬の朝日は南東から、夏は北東から上ります。

morinosの東の大きな開口部を見てみましょう。寒い時期の2月1日の朝9時です。ほぼ真横からの日差しが部屋の奥深くまで入り込み熱を供給してくれています。

周辺の山も朝の日差しに影響します。これは2月1日9:00の遠景です。

2月1日9:00の内観

一方、夏の8月1日朝8時は、建物内への日の入り方が浅いです。
日の出直後の真横の日差しは、北東にある「森の工房」の建物と、演習林に阻まれてやってきません。(3Ðモデル秘話の後半マニアック、隣棟や地形のモデルも朝日対策で使ってますよ)
夏の8時頃にようやく建物に日射が当たりますが、すでに日の出から3時間経ち太陽高度が上がってきて、東の4.5mの長い庇でうまくコントロールされています。

8月1日8:00の内観

最後に、壁の5倍も熱が逃げやすいトリプルガラスの性質を考える必要があります。(1枚ガラスだと、20倍以上熱が逃げやすいので要注意)

④日射を取り込む熱量と断熱性能の劣る開口部から逃げていく熱量、プラスマイナスの収支はどうでしょうか。

morinosのトリプルガラスの性能は、熱貫流率U値は1.5 W/㎡K、日射取得率η値は0.58(ガラスに当たる熱のうち58%が透過するということ)です。

概算を見るのに、冬期の標準的な日射量と外気温の条件のもと、1日平均で計算してみると、ガラス1㎡あたり、熱損失の速さは28W程度、それに対して熱取得は南面で49Wと倍まではいきませんが、熱取得がかなりプラスになります。
一方、東と西は22W、北は13Wと熱取得より熱損失が増えます。(昼間は圧倒的にプラスです。)
光を考えず、熱だけで考えると、南のガラス面は大きな方がかなり有利、東西は少し不利というイメージです。

miroinosトリプルガラスの方位別、時間別の熱取得と損失の速さ[ W/㎡ ]

上のグラフは、ガラス性能による熱の損得を見るために、標準的な日射量の場合に、横軸に時間、縦軸に熱移動の速度を取っています。
濃い青が熱が逃げていく速度(面積を取ると量)です。一日中、熱がゆっくり逃げて行ってます。気温の下がる夜間が少し増えます。
一方、カラフルな山なりの色が各方位別に熱が入ってくる速度(面積で量)です。南と水平面(屋根)が、最も熱が入りやすい部位です。東西は、朝や夕方に熱が入ってきますが、最大でも南の半分くらいです。

今回は、日射を考えるうえで注意したいポイント4つについて概観してみました。

次回の日射の回では、建物全体の具体的な性能などを検証したいと思います。

准教授 辻充孝