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2020年09月12日(土)

続々・建築秘話 近江八幡の家(着工~上棟)

建築秘話 近江八幡の家(木造建築病理学に基づく調査・プレゼン)
続・建築秘話 近江八幡の家(基本設計から実施設計)
に続き、建築秘話 近江八幡の家の3話目です。

前回までで実施設計が終わり、令和元年7月、着工です。
地鎮祭を執り行い、その土地の神様に工事の安全や家の繁栄を祈念しました。

四方祓(しほうはらい)の儀の時に、敷地西の一番奥隅に以前から気になっていた一本の大きなケヤキの木。

道路側に建物ができてしまうと、手入れの難しさや危険木になったときに伐採ができなくなります。

これまで、この土地を守ってくれていたケヤキですが、住まい手の方と話をしてこの機に切り倒すことに。

直径50㎝はあろうかという木でした。
何かに活用できないかと、新居のダイニングテーブルに使うために、現在乾燥中。住まい手と工務店さんの提案です。
ケヤキの木さん、第二の人生に強制転職です。

さて、敷地の懸案事項がなくなったところで、いろいろ基礎工事です。

堀方をして、湿気が上がってこないように防湿フィルムを敷いて、位置を出しやすく捨てコンを敷いて、鉄筋を組み上げ、型枠を仕込んで・・・。

スケールが違いますが、自力建設の基礎と基本は同じ事。

並行して、木材の段取りです。

産地は岐阜県の長良杉で行きたいところですが、今回は、住まい手さんの関係で和歌山県の山長商店さんで段取りすることに。
住まい手家族に加え、学生と一緒に和歌山県田辺市まで行ってきました。

ここの材は色目や年輪の混み具合、節の感じは、きちんと整っていますが普通の並材です。東農ヒノキのような美しい色合いや吉野材のような密実な年輪は感じられませんが、品質管理は尋常ではありません。
乾燥や強度の管理がこれでもかと整理されていて、これ以上ない最高の木材品質が手に入りました。

特に曲げ強さ(ヤング係数)が高いところで安定しているのが特徴です。

この時の様子は、過去のブログ「設計監理」の授業で木材の品質を確認を参照してください。

さて、基礎工事や、木材加工が順調に進み、いよいよ建て方です。

貴重なこの機会に木造建築専攻の学生と見せていただきました。
自力建設とは異なるプロの仕事。

大工さんとレッカー、現場監督さん他、チームワークのとれたスムーズな連携は、私たちの入り込む隙がありません。

ケガや間違いがないように、建て方中も掃除の行き届いた現場で、仕事ぶりを見せていただきました。このような、いい現場を体験できることは学生にとっても非常にいい経験です。

どんどん、建物の姿が出来上がっていきます。
手前の柿の木がいい感じに実がなっていますね。

さて、キモとなるポイントを紹介していきます。

まずは接合部に両引きボルトを挿入していますが、外部に面する部分に座彫りがあると、冷気が金属のボルトに伝って結露のリスクがあります。
座彫り部分は、しっかり断熱材で密閉します。(最終的に表面を平滑にして外壁を張っていきます。)
今回は外張り断熱併用なので、結露の心配は少ないですが、後々手を入れられないとことなので、慎重を期しての対応です。

次に気密性能の対策です。
何重にも気密層を設けています。

気密層1層目は、天井仕上げと水平構面を兼ねる構造用合板での気密層です。
合板の継ぎ目に気密テープを貼って目張りしていきます。この合板は防湿層も兼用しています。
その上に、屋根断熱材の木の繊維ウッドファイバーを分厚く敷き詰めていきます。

この合板は片面(室内側)は杉の突板が貼られ室内からは美しい見え方になります。

室内から見上げると下の写真の通り。
卒業生の構造設計者と協同で耐震性能を考えていきました。許容応力度計算で斜め屋根面の水平構面を固めるのに苦労して、910㎜角以下に構造材を入れて構造用合板(CLTでは強度が取れないとのことで合板となりました)を四周釘打ちを行い、耐力壁線間距離など配置計画を工夫しました。
違和感なく納まったと思います。

屋根上部を見てみると、断熱材が隙間なく敷き詰められていってます。

当然、構造合板端部の小口もぬかりありません。気密テープで閉じていきます。

気密層2層目は断熱材の上に敷かれた2次防水層である透湿防水シート(タイベック)です。

通常は重ね代をしっかりとって重ね合わせるだけですが今回は、気密テープで密着。

この上に、垂木75㎜で、熱気と湿気抜きの通気層を取ります。
斜めの通気層は空気が動きにくいですが、通常の倍以上の通気層厚なのでしっかり効いてくれるでしょう。
よほど無いと思いますが、万が一、屋根材が破損しても、この通気層の防水シートで雨漏りを防ぐ2次防水として機能します。通気層の3つの狙いです。

この分厚い垂木は、そのまま軒先に伸びていきます。

今回の屋根は、断熱材が分厚く入るため、400㎜近い分厚さ。
このままの厚さで外に伸びると、伝統的な古い町並みと合いません。
そこで、外部から見える部分は垂木と野地板、瓦だけという近隣の家々と揃えるように、設計段階でいろいろ工夫しました。
室内からも、構造用合板の野地板が見えるだけで、住まい手も断熱厚さは意識できません。(が、機能的にはしっかり効きます。)

外部になる部分は先行塗装でオスモカラーが塗られています。段取りいいですね。

工務店のチームプレーで建て方が順調に進み、工事が一段落した夕方、上棟式が執り行われました。

学生も含めて、貴重な式に参加させていただきました。住まい手のNさん、ありがとうございました。

当時の建て方の様子はこちらのブログでもアップしてます。「実践プロジェクト N邸 上棟!!」、「祝 N邸上棟!!」」

ようやく、建物の形が見えてきて、工事も中盤を過ぎたところ。
ここからは、化粧として見えてくる仕上げがたくさん。
まだまだ気が抜けませんが、素晴らしい住まいになる気配が見えてきました。

つづく・・・。

准教授 辻 充孝


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