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2020年08月03日(月)

建築秘話 近江八幡の家(木造建築病理学に基づく調査・プレゼン)

2017年から始まった近江八幡の家の新築プロジェクトが竣工。

学生もプロジェクトに参加しながら調査、設計、現場監理と関わってきました。

 

近江八幡の建築秘話をお届けします。

 

このプロジェクトの始まりは、築100年を超える古民家です。

森林文化アカデミーのある美濃市と同じく古い町並みが残る近江八幡の中心市街地。

伝建地区に囲まれた商家が残る街並みに建つのが今回のプロジェクト物件です。

しばらく誰も住んでいなかったため、劣化が激しい部分があり、相談を受けた時にはすでに一部解体済み。(上の写真の左の方)

それでもまだまだ立派な大きな建物と藏2棟、茶室が残っています。通りに対しても風合いのある塀で守られていて、景観を維持しています。

この建物群の利活用に加え、居住するための住居の計画が今回のプロジェクトです。

まずは現状建物の調査をするにあたり、アカデミーで実施している木造建築病理学に基づく調査から始めました。

この調査には、アカデミーの卒業生が中心となって組織している「一般社団法人 住宅医協会」の協力のもと、総勢25名で、2017年の5月に実施しました。

在校生や卒業生、建築実務者の方々が集まり手際よく調査が進みます。

 

 

すでに3年以上も前なんですね。当時のブログが残っていました。今は就職してバリバリ働いている懐かしい学生が写っています。
2017年05月30日(火)「住まいを診断する」近江八幡の古民家調査

この調査資料は「住まいの診断レポート」全165ページにまとめました。

診断レポートは、劣化対策(耐久性)、耐震性能、断熱性能、省エネ性能、バリアフリー性能、防耐火性能の6つの項目を定量的に診断しまとめていきます。

下のチャートがまとめたものです。下の6本あるバーチャートが100まで伸びると新築の長期優良住宅レベルの性能があります。

当然、古い建物のため性能が伸びていませんが、現状の性能がわかれば改修計画を考える指針が得られます。

この結果シート出すために、調査結果をまとめた下記のようなレポートが100ページ以上にわたって書かれています。このレポートをまとめるだけでも、かなりの力がつきます。

診断レポートの報告に合わせて、住まい手と古民家の利活用、増築部の計画を模索していきました。

 

まずは「木造建築の計画の基礎」の授業で行った条件整理から。

・気象条件はどうか。

詳しい内容は割愛しますが、気温や日照時間、降水量などの説明資料をまとめています。

気象分析

気象分析

・隣棟や既存建物が敷地にどのような影響を及ぼすか。

3次元CADで時間ごとの影の様子を見て、配置を考えたり、日影図を高さごとに追いかけて窓の位置を決めたりしていきます。

日影検討

日影検討

・環境家計簿で現在の住まい手の暮らしはどうか。

床暖房を使用していたので暖房が多めになってました。とすると、断熱強化と日射の熱を取得することにこだわると、エネルギー消費が抑えられます。日射の検討には先の影の位置が重要になってきます。

環境家計簿

これらの条件整理と、古民家利活用を3つのパターンで考え基本方針を検討しました。

1.大きな商家であるN家ゲストハウス
2.N商店のサテライトオフィス
3.古民家ホテル

この3つの利活用からゲストハウスを基本にから計画の方向性を組み立て、プレゼンの準備を進めます。

最初のプレゼン時の模型が下の写真です。模型で見てもかなり大きいでのがわかります。(木の部分が既存建物、色がついているところが増築部分)

当時の学生が頑張って作りました。

建築の専門家ではない住まい手にどのようにわかりやすくプレゼンするか。準備した模型やシミュレーション結果も必要ですが、重要なのはわかりやすい話し方。

学生のうちに、実際のプレゼンをする機会があるというのは学ぶところが大きいです。

 

 

さて、このプレゼンののち、どうなったかは次のブログで。

つづく

准教授 辻充孝