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2021年02月22日(月)

昼光の揺らぎのリズムと光の豊かさを計測(morinos建築秘話57)

バウビオロギー授業の電磁波実測では、50Hz帯の低周波電磁波の実測を建築秘話56で報告しました。
同時に同じ電磁波の一種である可視光線や紫外線領域(405~790THz)についてもmorinosで実測をしました。

また光に関する建築秘話は、
照明計画と光の質(morinos建築秘話9)
昼光利用のねらいと効果:日中は照明いらず(morinos建築秘話19)
も合わせてご覧ください。
今回は、建築秘話9の昼光利用をもう少し実測データの視点から考察したものです。

太陽の照度変化

さて、太陽の照度はどの程度あるかご存じでしょうか。

晴れているときは照度100,000 lx(10万ルクス)もの明るさもありますが、夜間は0 lx(ゼロルクス)です。また雲の加減によっても大きく異なります。

morinosの南デッキで実測したデータを見てみましょう。
使用した測定器は「温湿度データロガー おんどとり TR-74Ui」です。
この測定器は、温度、湿度に加え、照度、紫外線照度が測定でき、記録も可能な機材です。

2021年2月17日(水)14時~15時の10秒ごとのデータをグラフにしてみました。この日は、基本的に晴れでしたが、時々雲がかかったりしています。

実測値で最大で85,000 lx(晴れているタイミング)から、最低で10,000 lx(雲がかかったタイミング)まで8倍以上の差がついています。
人の目はこれだけの照度変化を瞳孔で知らないうちに調整している高度な機能を有しています。

室内の照度変化

さて、この1時間の他の場所の照度はどうだったでしょうか。下図の5つの場所で照度計測を行いました。

赤:日当たりの良い南デッキ(外部)
オレンジ:室内の日当たりの良い南カウンター上(ガラスを通すとどんな変化か)
緑:室内中央の机の上(直射日光が当たらない部屋の平均的な場所)
グレー:土の洞窟(室内の最も光が届きにくい場所)
青:外部の北デッキ(計測開始時は外部トップライト下からしばらくして、直射日光が当たらない場所に移動)

では、照度変化を見てみます。

先ほどの南デッキ(赤)に対して、南カウンター(オレンジ)は明るいですね。
その他の場所は照度が低すぎてこのままでは判別できません。
まずは、ガラス越しに直射光が当たる南カウンター(オレンジ)を見てみると、南デッキ(赤)と比べて約半分の光が入っていることがわかります。最大で45,000 lx程度もあります。
JIS Z 9110:2011(日本工業規格)では、事務所の作業環境(設計、製図)や執務空間(事務等)では、750 lx(照度範囲1,000~500lx)が推奨されています。つまり明るすぎるくらいです。
このガラスは3層複層ガラスで、1枚にはLow-E加工が施してありますが、光の透過率は十分です。

計測中は、実際に体感も交えて数値で確認していきました。感覚的にも非常に明るいです。

では、直射日光が当たらない室内はどのような照度分布でしょうか。

上記グラフの縦軸を最大3,000 lxに置き換えてみました。南デッキ(赤)と南カウンター(オレンジ)は照度が大きすぎてほぼ見えなくなっていますが、他の3か所の動きがわかりやすくなりました。

morinosの室内中央あたりの机上(緑)は、500~2,500 lxあたりで推移しています。事務所の作業環境として、少し明るめですが良い環境になっています。

土の洞窟(グレー)のベンチ上は、500~1,000 lx 程度とこちらも、ちょうど過ごしやすい安定した照度になっています。

北デッキ(青)の最初は外部トップライト下に置いていて、1,000 lxを超えることもありましたが、14時5分くらいから、日影の直射光が当たらないところに移動したところ雲の影響はあまり受けなくなり150~200 lx程度で安定しています。JIS Z 9110:2011(日本工業規格)では、事務所の廊下で100 lx(照度範囲150~75lx)階段で150 lx(照度範囲200~100lx)が推奨されていますので、ちょうどよい照度になっています。

昼光を計測してみると、直射光では雲の影響で激しく照度が変化していましたが、直射光の当たらない室内になると、多少の揺らぎがあるものの、ある程度安定した照度が得られています。

この光の揺らぎのリズムは、照明設備ではなかなか出せないもので、心地よさの源になっているのではと思います。
morinosは南カウンターの強い光の揺らぎから、土の洞窟の緩やかな光の揺らぎの空間的な光のグラデーションがありました。心地良い場所で過ごしていただければと思います。

紫外線照度

次に同時に計測した紫外線照度も確認してみます。グラフの色は、照度と同じ測定位置です。

やはり、南デッキ(赤)の変化量が大きいのがわかります。最大で0.65 mW/c㎡、低いと0.1 mW/c㎡を切っています。

一方、南カウンター(オレンジ)と比較すると、照度との透過率の違いが見えてきます。
照度では概ね半分の透過率でしたが、紫外線はもっと少なく、直射光が当たっていても1/5程度です。波長の短い紫外線はガラスによってかなり遮られていることがわかります。

では、直射日光が当たらない室内はどのような紫外線照度分布でしょうか。縦軸を調整して拡大してみました。

南カウンター(オレンジ)は変化量が大きいですが、その他はほぼ0に近い動きです。

室内中央(緑)で概ね0.005 mW/c㎡、土の洞窟(グレー)では0.001 mW/c㎡で安定しています。室内の直射光が当たらない部分はほとんど紫外線の影響を受けないことがわかります。

北デッキ(青)の14時5分までは外部トップライトの影響で、0.015 mW/c㎡ですが、日影に移動してからは0.001 mW/c㎡とほぼ計測できなくなりました。

紫外線は木材の変色にも影響します。
木材は紫外線によって、時間とともに徐々に黄色化し、心材と辺材の差が均一化し、さらに銀鼠色に変化していきます。この変化の美しさも木材の持ち味です。
開口部を閉めてガラスのみにしていると、紫外線が抑えられ、変化がゆるやかに進行します。開口部を開けていると、紫外線が入射、反射し、変化具合がより促進していくと考えられます。

光のスペクトル

計測の最後は、光のスペクトルです。
照度と同じポイントで計測しました。
計測器は「分光色彩照度計 スペクトロマスターC-7000」です。

morinosの照明設備のスペクトルについては、
照明計画と光の質(morinos建築秘話9)
をご覧ください。照明としては、なかなか良い光になっています。

さて、今回は昼光の光の変化です。

まずは南デッキの晴れているときのスペクトルです。(下図)
全ての波長(色)において鮮やかな光が出ているのがわかります。
色温度:5,444 K
照度:54,100 lx
演色性Ra:99.2

同じ南デッキでも雲がかかると、スペクトルも変化します。少し青みが勝ってきます。(下図)
色温度:7,840 K
照度:15,200 lx
演色性Ra:98.7

次に3層ガラスを透過しての室内の南カウンターです。
直射光がある状態でのスペクトルです。(下図)
ガラスによって、紫外線領域に近い青い光が少なくなっています。
色温度:5,225 K
照度:31,500 lx
演色性Ra:96.5

室内の中央ではどうでしょうか。より青みが減って、赤味の強い光になっています。(下図)
電球色(約3,000K)に近い光になってきています。木との相性がいいですね。
色温度:3,695 K
照度:1,600 lx
演色性Ra:96.6

さらに奥まって土の洞窟のスペクトルです。(下図)
ここまでくると、室内中央とそれほど差がありません。
色温度:3,846 K
照度:654 lx
演色性Ra:98.7

では最後に、北側デッキ(外部)はどうでしょう。(下図)
ガラスがないため、ちょうど南デッキの雲がかかった時のように、青い光が勝ってきています。
色温度:7,384 K
照度:126 lx
演色性Ra:96.7

どのスペクトルも鮮やかな波長が見ることができました。照明設備ではなかなか出せません。
照明設備のスペクトルについては、照明計画と光の質(morinos建築秘話9)をご覧ください。

さて、下図は南デッキの晴の場合の演色性評価です。
JIS Z 8726:1990(光源の演色性評価方法)で定められています。

CIE(国際照明委員会)の定める標準光(色温度6774Kの平均昼光)と比較した際の色ずれを100を最良(色ずれなし)とする0〜100の評価指標です。
R1~8の平均を取ったRa平均演色評価と、R9~15の特殊演色評価数で示されます。
今回は直接自然光を計測していますので、当然Raは100に近い99.2になっています。

LowE膜の入った特殊ガラス越しでもRaはすべて95以上の高評価になっています。
ガラスを通しても、照明には出せない豊かなスペクトルが確認できました。

今回は電磁波の一種である、可視光と紫外線についての考察を行いました。豊かな昼光が再確認できる内容でした。

光環境をデザインするには、まずは昼光利用計画をしっかりと行い、明るさが不足する部分や夜間のために質の良い照明を設計する手順が大切です。

准教授 辻 充孝

morinosマニアック------------------

光・視環境の評価

日中の照度変化が激しいと、室内の照度を計測しても、外部の影響が大きすぎて昼光利用がしっかりできているか判断しかねます。

そこで、光・視環境の一般的な評価にはいくつかの指標がありますので、morinosの値と合わせて見ていきます。

1.単純開口率(住宅性能表示制度)

単純開口率は、外壁や屋根に設けられた開口部の面積の床面積に対する割合を「%以上」で表示するものです。

morinosの開口部面積は 97.78㎡、床面積は 129.04㎡ですので、
単純開口率は、97.78 ㎡ ÷ 129.04 ㎡ = 0.764(76.4%)
となります。

一般的な住宅では、14~20%程度なので、いかにmorinosの開口面積が大きいかわかります。

2.方位別開口比(住宅性能表示制度)

方位別開口比は、外壁や屋根に設けられた開口部の面積の各方位別ごとの比率を「%以上」で表示するものです。

morinosの方位別の開口部面積は、東:21.87㎡、南:56.29㎡、西:11.20㎡、北:8.42㎡、真上:0㎡の合計97.78㎡です。

つまり方位別の開口比は
東面:  22.3 %
南面:  57.6 %
西面:  11.5 %
北面:  8.6 %
真上:  0 %
となります。

南面の開口部で半分以上を占めていることがわかります。
南という方位は、夏期は太陽高度が高く、屋根の出によって日射を防ぎやすく、冬期は太陽高度が低くなるため、日射が入りやすい優等生の方位で、太陽光を利用するには最適な方位です。

3.昼光率

野外の明るさは季節、太陽高度、天候などにより刻々と変化し、それに伴って室内の明るさも変わってしまいます。そのため、採光設計では、室内の明るさの基準として照度を用いるのは不合理です。照度に代わるものとして、一般的に野外の照度と無関係に部屋の明るさを判断できる指標である昼光率が用いられます。

昼光率 = ある点の照度 / その時の全天空照度 ×100 [%]

今回の実測(室内中央部)では、概ね
室内の照度 2,500 lx
全天空照度 10,000 lx
とすると、
昼光率は、25%となります。
日本建築学会の作業面の昼光率の推奨値は、LDKの床面 1%以上、長時間の精密な視作業 5%、精密な視作業 3%、長時間の普通の視作業 2%としていますので、圧倒的に多いことがわかります。
実際、日中であれば、照明を使用することはほとんどありません。

日射量の計測

水平面日射量も雲の状態で大きく影響を受けます。今回の時間帯で南デッキの晴れ間のタイミングで600W/㎡程度でした。2種類の機種で計測しましたが概ね同じ値を示しています。

この水平面日射量は、建物に入ってくる熱を計算するのに用いる大切な指標です。

水平面日射量の活用事例は、「断熱と日射熱制御を考慮した温熱性能(morinos建築秘話28)」をご覧ください。


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