活動報告
2020年03月13日(金)

照明計画と光の質(morinos建築秘話9)

コンセントはどこ?(morinos建築秘話8)に続き、設備関連で照明について。

光環境を考える際には、①時間のリズム、②強度・明るさ、③質(スペクトル)を考えないといけません。
そのための光環境の基本は太陽光(昼光)を活かすことです。

なぜなら、朝から夕方まで、動く光源(太陽)が③色温度と②強度を変えながら①時間のリズムを作ってくれます。また、太陽光はプリズムで分光すると虹のような鮮やかな③スペクトルを見ることもできるからです。

ただし、②強度は雲量に影響を受けるためしっかりと予測できず、活動によって明るさが必要なら照明で補助する必要があり、夜間の利用ともなれば照明は必須です。

そのための照明計画になります。昼光はまたの機会に解説するとして、今回は照明計画について紹介します。

夜のmorinosです。建物が浮かび上がってつい近寄りたくなりませんか。さらにプログラムが運用され始めると内部の人の動きも相まってより吸い寄せらることと思います。

美濃和紙を使ったイサム・ノグチのakariやルイス・ポールセンのPH5など洗練された照明を使って空間をうまく演出し雰囲気を作り上げる場合もありますが、morinosの照明はコンセント同様、主張しすぎず仕事(光を出すこと)をしっかりこなす裏方として計画しました。

空間の機能が固定されていれば、雰囲気をつくる照明もアリですが、morinosでは実施される様々なプログラムに対応できるように器具の存在は黒子に徹しています。ペンダントがぶら下がっていると、子供たちが的にして物を投げそうな予感しかしません。

天井を見上げた写真です。大きな空間の天井パネルを列状に並べ、大きな面の圧迫感をなくすために黒いスリットをアクセントに入れてパネルを長く見せています。南へ抜けていく視線の誘導も考えています。
登り梁横の75mm巾のスリットの効果は「大断面集成材の登り梁(morinos建築秘話6)」で紹介。

他のスリットは150mm巾として、内部に照明や火災報知器、防犯センサー(これは黒く塗れなかった)など機能的な設備が仕込まれています。スリット内の色は、単純な黒ではなく、照明器具の黒に合わせて調色して目立たないようにそろえています。色合わせは隈事務所からのアドバイスです。

次に、照明の役割を4段階で考えていきます。押さえるべきは

まず①安全性です。段差や危険物など察知して安全性を確保するための最低限の明るさです。
次いで②視認性です。文字を読んだり、精密な作業する際に、必要な場所や空間に適切な明るさを供給できる明るさです。

この①安全性と②視認性は「光の量」でコントロールします。

次に③快適性です。文字が最低限見えるという視認性だけでなく、色温度やスペクトルの豊かさなどを考える部分です。
最後に④演出の付与です。空間や雰囲気を演出すための配置や調整機能を備えた照明です。

この③快適性、④演出の付与は「光の質」を向上させる必要があります。

基本設計段階で、当時照明について研究していた学生と照明メーカーまで伺って、アドバイスをいただいたり、シミュレーションしたりと、安全性、視認性、快適性、演出の付与について検討してきました。(下の写真は学生がmorinosのコンセプトと照明の考え方をプレゼンしているところ)

設計段階の照度シミュレーションがこちら。3Dモデルは学生が中心に作成し、照明メーカーの方に配光データを埋め込んでいただき、検討を進めてきました。

外部は固定照明で、上からの光のみ。ただし回路はいくつかに分けて利用状況に合わせてオンオフででコントロールします。(多灯分散照明といいます)

天井面は、床面に反射した光で染め上げています。床に埋め込むアッパーライトは、近寄った際の眩しさがあるため使用していません。
一部は人感センサーを取り付け、移動や施錠の際の①安全性、②視認性にも配慮しています。

室内は各種プログラムに合わせられるように、②視認性、④演出の付与を確保しやすい可変式として、照明のほとんどが調光機能付き、さらに照明ダクトで光源の移動や追加もできます。落ち着きのある安らげる空間を目指し、色温度は低めの電球色として、③快適性にも配慮しています。全灯するとかなり明るいです。使用するときはうまくコントロールしてくださいね。

また、夜間は外部が暗いため、ガラス面が光を反射して鏡のようになります。
勾配天井が外に向かって下がっていく切妻屋根に見えたり、入口側は室内が伸びたかのような拡がりが見えたりと、意外な発見がありました。

これらの写真撮影をしていて、何か光の質(③快適性)が上品だなと感じたので、どのような波長の光を出しているのかを見るためにスペクトル測定をしてみました。

上から、太陽光、morinosのLED照明、アカデミー本校舎のLED照明、アカデミーの蛍光灯です。

太陽光

太陽光

morinos LED

アカデミーLED

蛍光灯(電球色)

やはり、圧倒的に太陽光のスペクトルが豊かです。これが太陽光を優先する理由です。
そして、一番下の蛍光灯の貧弱なスペクトルが目立ちます。光の3原色のRGB(赤、緑、青)の光を中心にしか発していません。
LEDはその中間の位置づけですが、アカデミーのLEDは青い光は勝過ぎて少し落ち着きません。morinosは比較的バランスが良い状況です。

やはり人の目の感覚は大切ですね。夜間のプログラムに参加される機会があるようでしたら光の質や演出にも意識してみてくださいね。

准教授 辻充孝


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