活動報告
2020年03月23日(月)

エネルギー消費量予測 67%削減(morinos建築秘話17)

エコロジー建築というと、木や土といった自然素材を多く用いて製造や廃棄時にエネルギーが少ない材料でつくられた「材料のエコ建築」と、省エネ性能を高め運用時のエネルギーを極力削減する「運用のエコ建築」に大きく分かれます。

どちらもエネルギーのエコですが、内容は全く異なる場合があり、お互いに私の方が正しいという意見を聞くことがあります。

どちらがよりエコかを考える際には、建物の一生涯を通して考えるといろいろい見えてきます。一般的に50年間建物を運用すると、製造廃棄時のエネルギーは30%程度、運用時は70%程度です。いくら自然素材で作っても運用時のエコを考えないと、毎日の電気やガスで、結局はエネルギーをたくさん使うことになってしまいます。

つまり、運用時のエコをしっかり考える必要があるのです。
morinosは欲張って、地域の木や土を可能な限り使用する材料エコにもこだわっています。(これらは別の建築秘話をご覧ください。)

今回はこの運用時のエコのはなしです。

 

さて、morinosの運用時のエネルギー消費はどのような計画なのでしょう。

計画段階で、用途別(暖房や冷房、照明などの用途)エネルギーの多い少ないがわかれば、設計段階でどのようにエネルギー消費を減らすかを考えることができます。

普通の住宅(岐阜市あたり)では給湯に一番エネルギーを使用します。一般の方は、夏や冬に光熱費が高くなることから暖房や冷房を警戒されている人も多いようですが、給湯は年中使用し水の熱容量が大きいため、エネルギーが大量に必要なのです。

ですが、住宅以外の建築物となると、その建物種別によってかなり異なってきます。私がいろいろな建築種別で計算した値を見てみます。

下のグラフは、床面積1㎡あたりでどのくらいエネルギーを消費するかの目安です。

上の2段が住宅で、最上段は全館空調をした場合(冬の間は暖房をつけっぱなし)、2段目が部屋に入ったら空調をつける場合です。通常は部屋に入った時に空調をつけるため、2段目の給湯(オレンジ)が多いことがわかります。

morinosはというと、このグラフの「学校」あたりが目安になりそうです。
日中の滞在時間が多いため、空調(赤)が最も多く、照明(黄)、その他(グレー:OA機器など)が続きます。
換気(水色)と給湯(オレンジ)は少なく同じくらいです。morinosは給湯設備はありません。

つまり、空調と照明の省エネ化が重要になってきそうです。

morinosで行った対策は、断熱や日射制御をしっかり行い、薪ストーブと、高効率エアコンで「空調エネルギー」を削減、また昼光利用を積極的に行い、必要な場合は照明計画(建築秘話9参照)で補完することで「照明エネルギー」の削減を考えました。(この辺りの省エネ設計はまたの機会に紹介します)

では、省エネ設計を行ったmorinosはどのくらいのエネルギー消費予測になるのでしょうか。
国立研究開発法人 建築研究所が開発している「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)Ver.2.8.6」を用いると予測が可能です。

上のグラフが、morinosの計算結果です。
上段がmorinosの設計予測値、下段が省エネルギー基準値です。省エネ基準値は一般的な同種の新築建築物程度と考えてください。

左の水色のグラフは、断熱や日射遮蔽などの外皮性能(PAL*)を示し、年間でどのくらい熱量がほしいかを示しています。なるべく少ない方が暖房や冷房を使わなくても快適に使用できます。
morinosは、概ね基準値の半分になっていることがわかります。断熱や日射制御の工夫の成果です。

 

右の色付きグラフが、エネルギー消費量予測です。
一般的な同種の建築より概ね7割弱削減されています。(水色の空調が概ね7割減、黄色の照明が4割減)

空調での工夫は、上記のPAL*に加え、暖冷房設備の効率も影響します。照明も、発光効率の高い照明器具によって効果が出ています。

 

ではこのエネルギー消費量は具体的にどのくらいでしょう。

設計値は、46.1GJ/年となっています。光熱費に直すと、13万円/年くらいです。(電気単価が27円/kWhの場合)

一般的な同種の建築(省エネ基準値)が143.2GJ/年ですので、年間光熱費が約40万円/年。断熱強化や高効率設備などmorinosの建物性能向上によって年間27万円の削減効果となっています。

10年間で考えると270万円の削減、50年間では、1350万円もの違いがでてきます。
当然、同じ分だけエネルギーも削減されていることになりますので、エコ度が非常に高いです。

ライフサイクルで考える大切さがわかるでしょうか。

ちなみに、一般的な4人家族の住宅(暖房をオン・オフする住まい方)で85GJ強(25万/年くらい)ですので、一般住宅の半分以下程度です。

ただ、これらは設計図書に基づき、利用想定をいろいろ入れて計算した予測値ですので目安程度と考えています。

 

また、アカデミー本校舎には太陽光発電が50kW搭載され、自家消費(電力契約上、正確に割合が出せませんが)していますので、学内で作られた電力の一部はmorinosでも使用されていきます。(morinosに必要な太陽光発電容量は概ね5kW分程度。)

アカデミー本校舎の太陽光発電。10kWを5か所の屋根に設置し計50kWの容量。

今回の計算には、薪ストーブは含まれていませんので、もっと安くなるか、あるいはmorinosの使い方(冬でも開放?)によってはもっと増えるか・・・。楽しみです。
これから始まる実際の運用状況を計測できればと考えています。

省エネのもう少し詳細な紹介はこれからしていきますのでお楽しみに。

准教授 辻充孝


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