活動報告
2020年03月24日(火)

「土の洞窟」と針葉樹を燃やせる薪ストーブ(morinos建築秘話18)

morinosには「土の洞窟」という、ちょっと奥まったスペースがあります。かっこいい薪ストーブがあって、なかなかいい雰囲気でしょう。

morinos土の洞窟1

薪ストーブは国産「AGNI-CC」。岐阜県岐阜市で開発・製造されているものです。開発元は450年以上の歴史ある鋳物メーカー。日本で売られている薪ストーブは95%以上が外国製なのですが、「AGNI」は日本の森林事情に合わせ、針葉樹の間伐材を燃やしても問題ないように設計された、メイドイン岐阜の逸品です。

「針葉樹を燃やせる薪ストーブ」と聞くと「え?スギもヒノキも針葉樹だけど、普通は使えないわけ?」と思いますよね。多くのストーブは「針葉樹は使用しないでください」とされています。
理由は、針葉樹は広葉樹と比べて高温燃焼になるので

1、早く燃え尽きてしまう。
2、高温すぎて本体や煙突を痛めてしまう。

という2点の問題があり、敬遠されてしまうのです。
「AGNI-CC」はこの問題を克服しました。

1、早く燃え尽きてしまう。
  ハイブリッド燃焼方式で二次燃焼を行い、針葉樹でも長時間燃焼できるようにする。

2、高温すぎて本体や煙突を痛めてしまう。
    鋳物で厚くつくることで熱で割れない強度を確保する。

アカデミーの演習林からはスギやヒノキが、じゃんじゃん降ろされます。また、森林利活用のための学校なので間伐材利用も大きなテーマのひとつです。「AGNI-CC」、アカデミーのmorinosにぴったりですよね。しかも二次燃焼のさせるときに煙が浄化される仕組みなので、大気汚染にもしっかり配慮。

morinos土の洞窟2

見てくださいこの美しい火。

morinos土の洞窟3

空気は外から入れて、煙と一緒に煙突から外に出す。室内には熱だけを放出する仕組みです。

morinos土の洞窟4

空気調整レバーの印には、森のマークが。日本の森を守るコンセプトなのです。

 

……と良いところずくめですが、建築的に気をつけなくてはいけないのは「火事」です。火源があるわけですから、壁や天井を燃えにくくしなくてはいけません。建築基準法でもストーブの周りは内装制限がかかります。火は天井を伝って広がっていきますから、ストーブの直上は燃えにくいものにする必要があります。

ここでも設計時に苦心がありました。morinosは一体空間なので、一室とみなして全部の天井を不燃材料にすることになってしまい、それだと天井を木にできないし、直上だけ不燃材にして区画するためには「50センチ以上の垂れ壁」が必要です。「morinosの勾配天井に垂れ壁か……圧迫感が出るし、天井に要素が増えるとうっとおしいから、嫌だなあ……」と悩みます。
ですが辻先生の考案で、北側に土壁で覆われた洞窟のようなスペースを設けることにしました。これなら不燃認定を受けた土壁で実現できます。しかも天井区画のための「垂れ壁」が効果的に視線を遮って、落ち着く空間になります。よかった。

morinos土の洞窟5

これが「垂れ壁」。ちょっと低めになっていて、中が落ち着くようになっています。

 

さて、法律の内装制限とは別に、ストーブ周りに壁が近いときは「遮熱板」が必要です。普通は、金属や石を立てて壁との間に隙間を開けるのですが、小さな土の洞窟の中に、広葉樹のベンチとストーブとエッチングガラス、さらに別の金属や石が見えると、お互いの良さを潰しあってしまいます。
ですので「土壁のそのものに遮熱性能を持たせるように設計しよう。」ということでメモしたのがこちら。

morinos土の洞窟6

急いで描いたのでちょっと雑ですが、概ねこの通りつくりました。

要するに躯体に熱を伝えないように、仕上げと下地を不燃材で作って、空気の通り道を作ればいいのです。
で、できたのがこちらの壁。

周囲全ての壁を同じように見せています。

morinos土の洞窟8

通気のためのスリットが、壁を軽く見せる効果になっています。

上下のスリットが壁を浮かせて軽く見せる効果も狙い、うまくいきました。

「土の洞窟」は壁も天井も床も、土を使って左官で仕上げています。ベンチがあり、座ると「垂れ壁」で少し視線が遮られることで、こもるように気持ちの落ち着く場所です。

ベンチは「名栗仕上げのカバノキ」。この空間には包容力が欲しいので、厚みを持たせてどっしりとした印象にしています。足元は薪置き場にする時に脚が邪魔にならないように、また、重々しくなり過ぎて主張しないように、鉄で持ち出して脚のないデザインにしました。

morinos土の洞窟9

こちらも分厚い材料が浮いているように見えるけど……

morinos土の洞窟10

下を覗くとちゃんと支えてあります。

床は設計では石だったのですが、隈研吾氏と涌井学長が現場に来られた際「ここは同じように土でやっては?」とアドバイスされ、急遽基礎をかさ上げしてもらい同じ色の土間になりました。確かに、床も土の方がいいですね。
くつろぐ場所は、要素があまり複雑にならない方が、心地よく過ごせます。

morinos土の洞窟11

土間も同じ色。狭い空間で要素を多くしすぎないことがポイントですね。

実は、スクリーン掛けの鉄棒を巻き取る金物や、換気計画の給気口、コンセントなども、目立たず邪魔にならない位置をよく検討して設置してあります。morinosにお越しの際は、探してみてください。なるほどと思う位置にありますから。

 

以下、morinosマニアック----------------

…………ストーブの上の変な形のファン、これはなんでしょう?
これ「エコファン」といって、ストーブの上に置いておくと発電してファンが回り出すのです。

「エコファン」がなぜ発電できるのか。それは「ゼーベック効果」といって、温度差を与えることで電位差(起電力)を生じさせて、コンセントも電池もなく自ら発電してファンが回るのです。
躯体の下部と上部が分かれており、下部は熱され、上部は冷えていると、その温度差が大きければ大きいほどファンの回転スピードが上がります。85〜345℃が作動温度ですが、上部がそれなりに冷えていないと温度差が生まれないので、真ん中に置くと全体が熱くなってしまい無回転になります。ですので端っこに置いておきます。

冬のmorinosでこれが高速回転していたら、天板が熱い証拠です。触らないように気をつけてね。

 

木造建築教員:松井匠


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