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2026年05月11日(月)

伝統的伐倒技法の見学と体験

斧を使った伝統的な伐倒技法の見学と体験を中津川市の協力で実施しました。

以下はクリエーター科2年の五十嵐さんが報告してくれています↓ ↓

 

Cr科目「森林施業演習」・En科目「選木伐採実習」の一環で、岐阜県中津川市加子母を訪れ、伝統的な伐採技法である「三ツ緒(みつお)伐り」の実演を見学しました。

加子母地区では江戸時代から、伊勢神宮の式年遷宮に用いられる御神木が伐り出されています。この際に用いられるのが三ツ緒伐りで、3人の杣が三方向から斧を入れ、幹をすり鉢状に削りながら貫通させ、最終的に三点の弦(つる)を残して伐倒する技法です。木曽地方でも同様に貴重な材を安全に倒すために行われており「三ツ紐(みつひも)伐り」や「三弦(みつる)伐り」などとも呼ばれます。

今回実演をしてくださったのは、昨年6月に裏木曽御用材伐採式で御神木の伐採を担った【裏木曽三ツ伐り保存会】の方々です。アカデミーの新津裕先生も保存会の一員として作業に加わっていました!対象木は胸高直径約50cm、根元直径は約60cmありました。

伐倒方向と弦の配置について入念な打合せ

作業が始まると、斧が幹に当たる「カツン」という音が林内に響くのが分かりました。水分を含んだ木と斧の刃がかみ合うような、独特な響き。作業が進むにつれてわずかに音の高さが変化していくようにも感じられました。

使用していた斧の重さは約1.5kg。保存会の方々はその重さを感じさせないほど滑らかで無駄のない動作で、感覚を研ぎ澄ましながら作業されている様子が伝わってきました。

保存会の伊藤さんが斧や三ツ緒伐りについての解説をしてくれました

エンジニアの学生も何人かが斧を振る体験をさせて頂きました。学生からは「思ったよりも斧が重い」「削れる感覚が気持ちいい」といった声が聞かれ、作業の難しさと同時に、手作業だからこそ分かる幹の感触を感じとれたようでした。

学生達も斧を振らせていただきました

アカデミーOBで保存会メンバーの山口さんからも指導してもらいました

終盤、すり鉢状の形状が見えてくると、ヒノキ特有の香りが広がり、削り出された木屑からもかなり強い香りがありました。

最終的に追い弦が切り離されると、ミシミシと音を立てながら狙った方向へ正確に倒れていきました。伐倒方向の精度を確保するためには、弦の残し方が極めて重要だそうで、保存会の方々が何度も、削る角度や深さを確認するために切削面を触ったり、意見を交わしたりして注意深く作業を進めていた理由が分かりました。伐倒後に実際に切削面を触ることができましたが、斧で削られた面は滑らかで美しく、保存会の方の経験の積み重ねと技術の高さを物語っているようでした。

今回の授業を通して、斧による伐採の音、ヒノキの香りといった感覚的な要素に加え、熟練者の皆さんの判断力なども間近で学ぶことができました。また、三ツ緒伐りでは、伐る前に杣頭が掛け声を掛けたり、伐倒後は切り株に梢をさして山の神に感謝する「鳥総立(とぶさたて)」が行われたりするなどの儀式的な要素も多く、この地域の人たちがどのように山や木と向き合ってきたかという歴史が凝縮されていると感じます。そうした面も今後さらに学んでいけたらなと思う授業でした。中津川市役所の皆さま保存会の皆さま、貴重な機会をありがとうございました。

加子母での三ツ緒伐り視察集合写真

以上

 

普段はチェーンソーや高性能林業機械を使って木材に向き合っている学生ですが、【斧】という道具を通じて今までと違った木材との向き合い方が出来たのではないでしょうか。何気なく行っているチェーンソーでの木の伐り方も手道具で伐る技術が基になっています。技術・文化両方を深く学ぶことのできた1日です。この機会を提供して下さり、関係各位には感謝申し上げます。

 

報告:新津裕(YUTA)