【アニュアルレポート2024】小径広葉樹を活用した学内オーダ家具受注製作
小径広葉樹を活用した学内オーダ家具受注製作
講師 渡辺圭
目的
国内各地で小径広葉樹の活用機運は高まっているものの、情報や流通量が限られ、販売ルートもまだ整っていない。そのため、積極的な利用が進んでいるとは言いがたいのが現状である。まとまった量が確保でき、材の質が一定である外国産材に比べ、国産の小径広葉樹は節や曲がりがあることが多く、同一樹種のまとまった供給も難しいため、使いにくさがある。そうした材をどのように活用すれば、魅力的な木製品を生み出せるのか。まずは、小径広葉樹を用いたさまざまな家具づくりに取り組み、さらなる利用拡大の可能性を探った。
概要
2024年11月、森林環境教育の谷口吾郎講師より、屋外などで使用できる持ち運び可能なホワイトボードスタンドの製作依頼を受けた。この製作をきっかけに、教員研究の一環として学内でオーダー家具の受注を行い、小径広葉樹の利用可能性を検証することを思いついた。以前から授業で小径広葉樹を使用し、テーブルや収納家具の製作を進めてきたが、授業の時間枠では製作できる種類や数に限りがあった。そこで、できるだけ多くの事例を作ることで、より多くの人の目に留まると考えた。
学内で受注を募った結果、6件の依頼があり、現時点でホワイトボードスタンドを含む2件の製作が完了している。本稿では、それらの製作物について紹介する。
ホワイトボードスタンド
製作には根尾地区で伐採されたブナ材を使用した。この材は簡易製材機で板に加工し、ビニールハウス乾燥庫で半年間乾燥させたものだ。
同じ1本の木から製材されたものではあるが、軽く木目が真っ直ぐな板もあれば(写真右)、重く少しクセのある部分もあった(写真左)。
特にクセのある板は曲がりが強く、目的の寸法にするのに苦労した。しかし、多少の曲がりがあっても影響が少ないデザインとしたため、使用上の問題はなかった。
持ち運びの際にやや重くなってしまうという課題はあるが、個性的な見た目となり、重さがある分、強度も高いと考えられる。今後、経年変化による反りなどの問題が生じないか、引き続き観察していく予定だ。
ローテーブル
林業専攻の学生室で使用するローテーブルを、前述のブナ材と、学内で伐採されたカツラ材を用いて製作した。
天板にはカツラ材を使用し、木目方向を直交させた4層のパネルを作成した。
その上に、ブナ材とカツラ材をランダムに貼り合わせ、合計5層の構造とした。
脚材には、カツラ材より比重の大きいブナ材を用い、3層構造とした。
このように手間を掛けてパネル構造とした理由は、節や割れなどの欠点が多い小径材でも、内部に組み込むことで有効活用できるためである。また、細かい部材を貼り合わせることで、寸法安定性の向上を図る狙いもある。さらに、分厚い材は乾燥が難しく時間もかかるため、薄い材を貼り合わせることで、乾燥不足による不具合を回避できることも期待される。
欠点のある節などを内部に使用すると述べたが、今回はあえて天板にも取り入れた。
節は木が自然に生きてきた証でもあり、その意匠を活かすことで、立木の姿に思いを馳せ、より愛着を持って使ってほしいという願いを込めた。完成したテーブルは、もともとそのカツラが立っていた場所に設置し、撮影も行った。
まだオーダーを受けて製作できていないものが4つあり、その中には、学生とプロジェクト授業の形で進めるものも含まれている。新年度にも引き続き受け付ける予定で、今後も小径広葉樹の活用事例を増やしていきたいと考えている。
教員からのメッセージ
ホワイトボードスタンドをオーダーしてくれた谷口先生からは、「使っている様子を見た方が欲しいと言っていた」とか、「折りたためる構造で、コンパクトになるので使いやすい」との言葉をもらいました。どのような構造が最適かを話し合い、試作を重ねた甲斐がありました。今後は経年変化によって小径木の使用がどのように影響するかを見守っていきたいと思います。ローテーブルをオーダーしてくれた林業専攻23期生の梅村さんは、全体的なデザイン、構造と天板に残した節も気に入ってくれました。アカデミーの学生は特にクセのある表情の木を好むところはありますが、もっと一般にもそういった価値観が浸透していくと、愛すべき小径広葉樹ももっと注目されていくのになあと思います。今後もその魅力が伝わるような活動を続けていきたいと思っています。
活動期間
2024年11月〜継続中
関連教員
谷口 吾郎
新津 裕
杉本 和也
活動成果発表
・森林文化アカデミーHPで活動報告
関連授業・課題研究&関連研修
Cr1,2木工プロジェクト授業(予定)
過去のアニュアルレポートは、ダウンロードページからご覧いただけます。