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2016年05月13日(金)

クリエーター科1年生、林業経営の神髄に触れる

クリエーター科の共通科目『森林の姿』で、入学早々の1年生が林業の現場を訪ねました。訪問先は、山県市で林業経営を営む中原氏の山林。中原氏に山林を案内いただきながら、林業経営などについて数々のお話しを伺いました。

現場は午後という約束でしたので、午前中に座学で予習。本日のキーワードは、①持続的な林業経営、②目標林型、③針葉樹一斉林施業、④長伐期施業、⑤施業体系、⑥法正林、です。初学者にとっては少し難しいかもしれませんが、午後に現場を見て話を聞く上でぜひ知っておいてほしいことがらです。「肌感覚で現場に触れてほしいので、予備知識はここで」ということです。

早めの昼食をとった後、バスで現場に向かいます。ほとんどの学生にとって、初めての人工林施業の現場です。スギ人工林やヒノキ人工林をきちんと見るのも初めてという学生が多かったことでしょう。

本日の見学は、「若い林分から順を追って」コース。最初に見せていただいたのは、植栽後3年目のスギ造林地です。皆伐後の再造林からスタートです。スギ植栽木が白くみえるのは、忌避剤のコニファーが塗布されているからです。

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二番目は、7年生のヒノキ造林地。ここでは、「今年、下刈りをするかどうか」を考えました。植栽木と雑草木との競争関係だけでなく、雑草木によるシカ食害の軽減効果、育林経費など、いろいろなことを考えなければなりません。中原氏のところでお世話になっているエンジニア科卒業生の羽柴くんを交えて、議論です。

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次は15年生のスギ造林地。以前にクリエーター科林業の学生が実習で調査と選木をさせていただいた林分です。当時に間伐を見合わせて枝打ちだけを行った林分も間伐が必要な状態になってきています。

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今度は34年生のスギ造林地。谷を挟んだ両者面に同じ林齢のスギ林があり、間伐・枝打ちの仕方を少し違えてあります。それによる差は一目瞭然。森林の姿が人工的にコントロールできるという、よい見本です。

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お次は、50年生のスギ人工林。間伐・枝打ちが繰り返されて、かなり形になってきた林です。50年といえば、短伐期施業ではそろそそゴールのはず。しかしここでは、この姿が今後の数十年間を過ごすための再出発の状態。いわゆる「途中段階の目標林型」ということがよくわかります。学生も、その感覚が持てたかな。

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そして、ゴールとも言える100年クラスのスギ人工林(中腹から上はヒノキ)。主伐を数回に分けて行う漸伐作業中の林です。さすがに天然更新は厳しいので、更新は植栽で。谷沿いにはトチノキが、それより上にはスギが植えられています。けっこう明るくなっているので、トチノキもそこそこに伸びています。ただ、少し成長に陰りが出始めているので、下木のためにはそろそそ受光伐もしくは後伐がほしいところ。そんなことを題材に、林木の成長のコントロールと経営判断について考えました。

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最後に、収穫した長尺材を前に本日の総括。途中途中も含めて、とてもここには書ききれないほどの(だからここには書きません)メッセージを中原氏からいただきました。

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学生たちは、2年間の学び始めに際して、きちんと施業されている針葉樹人工林の現物を前に、林業・林業経営の神髄に触れることができたと思います。これからの糧になると期待しましょう。

 

報告:横井秀一