森林環境教育専攻
卒業生の進路

前原 融

わらび粉で地域を盛り上げる

プロフィール

1989年生まれ。飛騨市地域おこし協力隊員。群馬県出身。山梨県の大学で地域の資源について学ぶ中でわらび粉に興味をもち、わらび粉復活を夢見る。卒業後警備保障会社に入社。日々の業務をこなす中でワラビ粉への夢が捨てきれず、2014年に大学の恩師の紹介で森林文化アカデミーに入学。アカデミーでは山村の資源や自然科学、起業などについて幅広く学ぶ。卒業後飛騨市の地域おこし協力隊員に採用され、現在飛騨市山之村地区在住。

 

インタビュー

Q.なぜ、わらび粉なのですか?

大学生のときに、大好きなわらび餅に使われている原材料には、ほぼわらび粉が使われていないことを知ったのがきっかけです。わらび粉はどうなってしまったのか気になり、調べていくうちに、わらび粉は生産するのに手間と労働がかかるため、戦後需要が減るとともに作られなくなったことが分かりました。しかしワラビを使った澱粉の生産は日本に古くから伝わる生活の知恵です。ぜひ本物のわらび粉を復活させてみたくなりました。100%ワラビを原材料としたわらび餅はまったく別の食べ物と言っていいほど素晴らしい食感です。

山之村で生産されるワラビのみを原料とした幻の100%わらび粉は、うっすらと色を帯びた白色で美しい

 

わらび粉のみで作ったわらび餅は粘りが違う

 

Q.現在どんな仕事をしているのか教えてください

地域おこし協力隊員の身分で暮らしていますが、地域に関わる多くの仕事をこなしています。山之村地区は岐阜県最北部に位置する飛騨市の中でも特に山間部に位置しており、暮らしを成り立たせるために必要な仕事は数多くあります。一例をあげると、冬季の集落の除雪作業車のオペレーターや、有害鳥獣を駆除した際に獣を道まで引っ張り出す際の人夫、雪下ろしのできない方に替わっての雪下ろし、ハウスのホウレンソウ収穫、牛舎での餌やりと搾乳などで手間賃をもらって生活しています。

清潔な牛舎。餌やりも大切な仕事のひとつ。

 

搾乳器を使った乳搾りにも慣れてきたという

 

Q.肝心のワラビ粉生産はどうですか?

昨年4〜5月に原野を野焼きしてワラビの成長を促し、邪魔だったノイバラを抜き取ってから、9月下旬から11月にかけてワラビの根を掘り取りました。ほんの20m2程度の面積を掘っただけですが、ワラビの根が120kg収穫できました。そこから3.5kgのわらび粉を生産することができました。収率は約3%であり、粉の品質を考えるとよい数値であると思っています。今後は野焼きするエリアを増やして生産を安定させ、都市の高級和菓子店などに出荷しようと考えています。

一面のワラビ畑。野焼きをしながら徐々に使える面積を増やしていきたいそうだ

 

ワラビの根を掘る作業も重労働。高価なわらび粉にも納得!?

 

掘ったワラビの根は水洗いした後、たたいて澱粉を取り出す

機械を使わずひたすら木槌で叩いて澱粉を取り出す作業は大変です

Q.これから入学、あるいは卒業する学生に伝えたいことはありますか?

自分は、わらび粉の復活という目標を持ってアカデミーに入学、卒業後もわらび粉の生産に関わっていけて幸せな立場です。しかし、地域に暮らすということは、自分の夢だけを追えばいいということではありません。わらび粉の生産や、山之村での暮らしには地元の皆さんの協力が不可欠です。まず自分が地域の仕事を率先して引き受け、信頼を得ることで今の生活が成り立っていることを実感しています。森林文化アカデミーに入学して、様々な地域に入り込んで地元の方とお話したり、農・林に関わる体験をさせてもらったことが現在の暮らしに活きています。皆さんもまず現場に飛び込んで地域の問題や暮らしを肌で感じてみてください。きっと自分の将来につながる何かが見えてくると思います。

自慢のわらび粉を手にその魅力を語る前原さん

 

前原さんが生産するわらび粉は昔ながらの製法で手間をかけて作られる最高級品で、機械化をせず品質に妥協しない少量生産にこだわっています。それだけにわらび粉の生産だけで生活を成り立たせることはむずかしいでしょう。しかし、地元の人たちに信頼されている前原さんには、小さくても数多くの手間賃をもらえる仕事が依頼されてきます。なので協力隊の期間が終わっても生活については何の不安もないといいます。昔の山村の生活は多くの仕事によって成り立っていました。林業もそのひとつだったわけです。多くの仕事と人の信頼で成り立っている生活は、グローバルな経済に翻弄される都会の生活と違って持続可能で精神的な安定をもたらしてくれます。これからの時代の先端をいく生き方なのかもしれません。

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