森林環境教育専攻
卒業生の進路

小林 謙一(こばやし けんいち)

中山間地で森林に関わる仲間を呼び込む

 

・プロフィール
1967年 埼玉県生まれ、栃木県育ち。高校から千葉県。専門学校卒業後、約20年間、東京でCGで映像制作に関わる。
2008年、森林文化アカデミー入学、環境教育・インタープリテーション研究会に所属。
2009年から、郡上市交流移住推進協議会の職員となり、郡上市の移住促進事業に関わる。

アカデミーに入学を決めたキッカケ

以前は映像制作の仕事に携わっていましたが、仕事を始める21歳の時に「40歳で仕事を辞める」と宣言していました。クリエイティブな仕事は全身全霊・全力疾走なので「一生続けるのは多分無理だな」と思っていたんです。案の定、楽しいけどもの凄い忙しい日々でした。

30歳を過ぎた頃から「次の仕事は、森に関わる仕事に就きたい」と漠然と考え始めました。仕事をしながら林業の講座などに通っていたのですが、自分の進むべき道がなかなか見つかりません。

時間はどんどんと流れ、40歳になる年に奈良市に行った時に、偶然で木工作品の展示会に出会いました。その作品はみな学生作品で、「森林文化アカデミー」という学校がありるということをこの時知りました。そこにあったパンフレットを見ると、学生を募集していて、その学科名が「クリエーター科」。

そうか、学生になるという手があるのか!とその年に退職と受験を決めました。

1年生の授業でケイビング(洞穴探検)

アカデミーの学生生活で印象に残ったこと

入学してまず感じたのが、「大人になってから、学生になるって楽しい!!」でした。
東京で働いていたときは、例えば環境問題について話したくても、周りに興味を持っている人がいませんでした。

アカデミーでは、周りは森や自然、環境に興味を持っている人ばかり。そして年齢もバラバラ、バックグラウンドも多様です。こうした仲間たちと、24時間・365日ディスカッションできるのは最高に楽しい日々でした。

授業も充実していますが、教員がみな個性豊かで面白いので、授業以外で教員の活動についていったり、県外から来られたゲストと夜通し話をさせていただいたのが、アカデミー生になったから得られた貴重な体験だと思っています。本当に、日々充実していました。

入学してすぐの授業は「1日、川で遊ぶ」!

仕事を選んだ理由、今の仕事のやりがい

アカデミーは2年生になると、各自「課題研究」を手がけるのですが、私は「日本型エコビレッジ」をテーマにしたいと思っていました。

先生方に相談すると、「フィールド(地域)はどうするの?」と言われて、はたと悩みました。その時自分は、どの地域ともまだ繋がりを持てていなかったのです。

そんな中、授業で関東に合宿で訪れている時に、一緒だった教員の八尾さん(当時)に電話が入りました。それは「(岐阜県)郡上市で移住促進の事業がはじまり、その職員を探している。誰かいないか?」という内容でした。

郡上はほぼ知らないけど、この仕事を通して地域調査をできる・・・と思い、八尾さんに紹介を頼みました。ただ、休学になるので一応いろいろな先生に相談したのですが、誰も止めなかったので応募しました(笑)

行政関連の仕事も、もちろん移住促進の事業も初めてでしたが、郡上の魅力的な方々と出会えることはとても楽しいです。また仕事を通して歴史や文化、里の暮らしや技術、そして知恵を学べるので、とても充実しています。

仕事に関連して、様々なまちづくりの分野にもつながり、自分の興味関心、そしてやる気次第で仕事の幅も広がるので、とてもやりがいを感じます。

仲間をつくる移住促進事業「郡上カンパニー」

アカデミーの学びで役に立っていること

環境教育の授業では、学生が主催して実施する「こどもキャンプ」があります。この体験からの学びは、特に大きかったです。

それまでキャンプをしたことがなかったのですが、若い学生の指導の下、とにかく無我夢中でやってみました。こどもたちと学生たちとの1週間のキャンプの中で、お互いの関係の変化や、互いに思い通りにいかないジレンマの体験、こどもの視点や感情などを目の当たりし、こども達に寄り添うと同時に、「自分は何者か」を深く内省する貴重な時間にもなりました。

こどもキャンプでは、統括責任者であるディレクターも経験させていただきましたが、余りの力の無さに終わってから本気で泣きました。なんとか成立したのは、教員のナバさんのおかげで未だに感謝しきれません。この失敗経験のお陰で自分の限界をきちんと理解し、以降はどのくらいまでだったらできるかをきちんと設計できるようになりました。

こうしたアカデミーでのキャンプの経験が、卒業後に仕事で手がけている参加体験型のプログラムの企画や実施をするための基礎になったので、ありがたかったです。

また授業では「インタープリテーション」「ファシリテーション」「カウンセリング」がありました。もともとコミュニケーションは苦手だったのですが(特に不特定多数の人とのコミュニケーション)、この3つの視点と技術を学んだことで、コミュニケーションがとても楽になりました。

「インタープリテーション」を教えてくださったのは、故・小林毅 氏(コバサン)でした。コバサンからインタープリテーションの視点や姿勢、アプローチ手法を学んで、世界の見方が大きく変わりました。日常で辛いことがあっても、インタープリテーションの視点や、インタープリターとしての姿勢を思い出すことで、世界が輝いて見られるようになり、毎日が充実し、楽しく過ごせるようになったのです。

アカデミーで学んだたくさんのことは、仕事でも家庭でもとても役立っていて、ありがたいと思っています。

アカデミーの要素満載の「森をつくる家づくり講座」を企画

今の仕事で意識していること

外から来た人に郡上を好きになってほしい。そのために、郡上の人が好きな、郡上のいいところを、きちんと伝わるようにはどうするか?を常に考えています。

また、郡上の若い人、こどもたちが、郡上を好きになる、郡上を好きでいられる・・・そんな郡上の魅力をどうすれば続けられるのか、どうしたらもっと魅力的になるのか?が大きな関心事です。

こうしたことに必要なのは、自分自身がまだ気づいていない郡上の魅力を見つけ続けることだと思っています。自分自身の感性をアップデートし続けないといけないですね。

郡上に移住して里山暮らしも楽しむ

【学生に向けてのメッセージ】

大人になって、もう一度学ぶことを自ら選ぶというのは、とても大きなな選択だったと思います。だからこそ、まずは自ら得た「学生」を、目一杯楽しみましょう!

社会人ではできなかったことをするのが「学生」です。せっかく学生になったので、社会人の時に自分でつくっていた価値観や常識、制限を一度おいておいて、知らない、新しい世界にまみれる体験を、まずは存分に楽しみましょう。そうすれば、一気に視野が広がります。

その中から、これから本当に大切にしたい自分の「軸」が見つかれば、その後の人生は楽しくなりますよ(もちろん、谷あり山ありだけど)。そのくらい大きなインパクトを与えてくれるのが、”アカデミーの学生生活”です。楽しんでください!!

卒業後に地元の木を使ってセルフビルド