活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2026年06月25日(木)

飛騨市 広葉樹 ツアー開催レポート!

遠くは大阪など各地から12名の方にご参加いただき、「木工家ウィークNAGOYA」の関連企画として飛騨の森と繋がる。広葉樹トレーサビリティ&買い付けツアーを開催いたしました!

このツアーを企画したきっかけは、私(木工専攻教員渡辺圭)自身が森林文化アカデミーと飛騨市との連携の一環で初めて飛騨を訪れた際、飛騨市の「広葉樹のまちづくり」の取り組みに触れたことでした。いつか木工関係者に直接来てもらうツアーを企画したいとずっと思っており、今回、木工家ウィークの関連企画として実現したという経緯があります。

2日間のツアーの様子をレポートします。

 

初日は、やまかわ製材舎、柳木材、西野製材所の3カ所を訪問し、それぞれ及川幹さん、柳和憲さん、西野真徳さんにご案内いただきました。

まず、やまかわ製材舎で及川さんからは、家具用材としての利用率を上げる工夫について伺いました。他地域とも連携したネットワークづくりや、ブナ・シラカバといった樹種の個性を引き出す提案、木のポテンシャルを最大化する製材・乾燥の徹底した管理など、現場での試行錯誤をとても丁寧にお話しいただきました。

 

 

 

続いて柳木材の土場へ移動し、柳さんからは、シーズンではないので少ないですと言われていましたが、それでもたくさんの丸太を前に、山のストーリーを届ける「中間土場」の取り組みについて伺いました。

曲がり材や小径木の活用で用材率が20%まで上がっていることや、山を応援したいという買い手の理解が市場以上の取引額に繋がっているというお話は大変印象的でした。丸太にどこの現場から出たのかわかるようにマークをしてトレーサビリティの価値を生み出し、山の所有者のことまで語ることのできる土場であることや、ナラ枯れの丸太をお宝と呼んで価値を伝えていく姿勢から、単なる流通にとどまらず、背景を含めて木材を価値化する強い想いを感じました。

 

 

 

西野製材所の西野さんからは、飛騨に広葉樹専門の製材所が残った歴史的な経緯を伺いました。飛騨高山という家具の産地において、家具メーカーや作り手たちが、ある程度寸法が決まってしまう海外での現地挽きではなく、丸太のまま輸入して産地の近くで挽くという選択をしてきたからだそうです。使いたい用途に合わせて厚みなどを柔軟に指定できることは作り手にとって大きな利点であり、製材所がそのニーズに応え続けてきた歴史があります。

現在は外国産材と国産材の取り扱い割合が半々くらいとのこと。お話を伺ったあと、実際に丸太の皮を剥くところから板になるまでの製材工程を見せていただきました。現場にたくさん並ぶ桟積みの材も見学し、厚さや樹種にもよりますが、1年程度天然乾燥させて材が黒くなったのを目安に人工乾燥にかけるといった、木とじっくり向き合う乾燥プロセスのお話も大変勉強になりました。

たくさんの木材が積まれている様子を目の当たりにし、参加者からは「こんなに国産材があるなんて知らなかった」「話を聞いただけではわからないことを体感できた」といった声が上がりました。実際に材を買い付けてくださった方もいて、今回のツアーをきっかけに飛騨の材や国産材の利用がもっと広がっていくと良いなと強く感じました。

 

 

2日目は、株式会社飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)の松本剛さんにご案内いただきました。

古民家を活かしたFabCafe Hidaに併設される、歴史ある蔵を改修した工房。ここは単に木で家具を作るだけでなく、森の資源の価値を最大化するプロダクトの展示室のようでした。

森林文化アカデミーをこの春卒業し、ヒダクマに入社した安達彩佳さんにも現在携わっているプロジェクトのことなどを説明してもらい、生き生きと仕事をする姿を見ることができて安心しました。

その後、2022年に新設された「森の端オフィス」へ移動しました。ここは森林資源の活用と森づくりを繋ぐ拠点であり、構造から断熱材まで飛騨の広葉樹を余すことなく使った実践的なモデル空間です。

こちらではまず、過去のプロジェクトについてお話を伺いました。特に、建築家や企業とアイデアを出し合い、欠点のある広葉樹や端材を活かして空間を作り上げる共創のプロセスは大変興味深いものでした。ほかにもデジタル技術の活用や、伐採現場での下草(クロモジなど)の救出活動など、その取り組みは多岐にわたります。私自身も数年ぶりにお話を伺ったのですが、さらに先進的な仕組みが増えており、多くのヒントを得ることができました。

 

お話を伺った後は、参加者を交えて簡単なディスカッションを行いました。参加者の中には、ご自身で木を伐採したり森林空間の活用を考えたりされている方もいて、松本さんのお話を通じて、お互いに大きな刺激を与え合うような充実した時間となりました。意見交換を通じて、今後も関わっていける有意義な関係性が築けたようで本当に良かったです。

 

 

今回巡った、やまかわ製材舎、西野製材所、柳木材、ヒダクマの4カ所では、それぞれの役割や取扱材の違いについても詳しく伺うことができました。地域の中でうまく棲み分けながら柔軟に連携し、助け合いながら相乗効果で資源の価値を高めている姿勢は大変印象的です。

私自身、数年前に初めて飛騨を訪れた際と比べても、その関係性がさらに深く醸成され、地域一体となった取り組みがより強固な仕組みになっていることが目に見えて分かり、とても嬉しい気持ちになりました。

 

 

 

ツアー終了後の6/19から21には名古屋で「木の家具40人展」が開催され、出展者の皆さまと直接お話しする機会がありました。

「外国産材が高騰していて、材の確保に困っている」 「国産材を使いたいけれど、どこに行けば買えるのかがよくわからない」 「今回のツアーも、日程さえ合えば参加したかった(展示会準備で難しかった)」という声がありました。40人展の直前という日程を組んでしまい、出展者の方々が参加しにくくなってしまったことは今回の反省点でした。

私自身、飛騨で見てきたことや聞いたことを言葉や写真で伝えることはできます。しかし、やはり直接現場へ見に行ってもらうのが一番だと改めて感じました。実際に目で見て、その背景にあるストーリーを知り、材を使って体感してもらう。その結果として自分の用途には合わないと判断される方がいても、もちろん良いと思っています。大切なのは、まず選択肢として知ってもらうことです。

飛騨の広葉樹に向き合う皆さんは、しっかりと話を聞き、使い手に合った材を丁寧に提案してくれます。もっと製材の現場と作り手が近い関係性を築くことができれば、活かせる材はさらに増えていくはずです。

もちろん、外国産材にもいいものはたくさんあるので、全てを国産材に変えようと言いたいわけではなく、仕事やお客さんに合わせて提案できる選択肢が増えることが、作り手にとってもいいことだと思っています。

また同じような機会をぜひ作りたいと考えています。ご参加いただいた皆さま、ご協力いただいた飛騨の皆さま、企画に加えてくださった木工家ウィークNAGOYA実行委員のみなさま、本当にありがとうございました!

木工専攻教員 渡辺圭