活動報告
2020年09月02日(水)

見えない熱を見る~夏の実測その1~(morinos建築秘話46)

見えない熱を見る?
いったい何のこと?
と思われるかもしれませんが、サーモカメラを使って熱を可視化することができます。

morinosでは、いろいろな計測器を設置して設計通りの性能が出ているのか確認をしています。

夏真っ盛りでは、どんな状況になっていたのでしょう。

 

建築秘話27で夏場の屋根の表面温度について書いています。

なんと、よく晴れた日は90℃近くまで上がる計算結果。

建築秘話27から抜粋「日射強度900W/㎡(よく晴れた日)、屋根の日射吸収率90%(黒い屋根)、風速1 m/s(扇風機弱程度の風)と仮定すると、屋根表面温度は90℃くらいまで上がります。(無風だと110℃まで上がります)」

実際はどうだったのでしょうか。

今年も美濃市は非常に暑い日が続きました。
美濃気象観測所のデータを確認すると、8月16日に38.2℃、17日に今年最高気温の39.7℃、そして18日は38.1℃を記録しています。

今回紹介する実測データは、高温3日目の2020年8月18日のmorinosでの実測データです。

13:00の時点で南デッキの水平面日射量は、701W/㎡、この時のmorinos周辺の外気温は36.8℃。風速は、地表面ではほとんど感じません。

体感的にも溶けそうなほど暑いです。

この実測データから、屋根表面の温度を計算してみます。

表面温度 = 外気温  +(日射吸収率÷表面熱伝達率)×日射量

で計算できます。

省エネ法では、日射吸収率0.8(80%)を使います。校舎の黒っぽい屋根に近い日射吸収率です。
また、表面熱伝達率は省エネ基準では23W/㎡Kを使います。風速3m/s程度の想定ですが、今回の地表面の微風速から屋根高さでもここまでの速さではないと想定して1 m/s程度を考えると、14W/㎡Kの値くらいでちょうどかな。

つまり、

今回の実測状況での屋根表面温度は、36.8℃+(0.8÷14W/㎡K)×701W/㎡ = 76.9℃ と予想できます。

 

実際の屋根表面温度はどうだったでしょうか。

アカデミーで使用している広角レンズのFLIR E8のサーモカメラで撮影してみます。
(アカデミーはいろいろ機材がそろってますね。木造建築専攻で所有している主要な機材はこのページでも見れます。)

上の写真は可視画像です。アカデミー本校舎の南面の屋根が大きく写っています。(左手前がmorinos)

下の写真はアカデミー本校舎のサーモ画像。
温度分布は20℃以下(青)~50℃以上(白)の範囲で色分けされています。

アカデミー本校舎(情報センター)の屋根(写真中央の四角で囲った範囲Bx1)は平均87.3℃です。

計算値の76.9℃より10℃以上高くなっています。風速が1 m/sより遅かったのかもしれません。
影になっている外壁(写真下のSp1)は44.5℃。外気温が36.8℃なので、7.7℃高いです。地表面反射などの日射の影響で熱くなっています。

余談ですが、今回の空(写真上のSp2)は18.5℃です。
宇宙空間はおよそマイナス270℃。ですが、大気中の水蒸気などの影響でそこまでの低温は観測されません。
昼間も空への熱放射(熱が宇宙に向かって逃げている)が行われていますが、太陽からやってくる日射熱が支配的なので全くわかりませんが、日射の無くなる夜間にも、常に宇宙空間に向かって熱放射が行われています。放射冷却といいます。そのため、デッキなんかでゴロッとしていると涼しく(寒く)感じます。
冬には、氷点下までいかない外気温でもこの放射冷却で冷やされたデッキなどで、霜がおりるのをよく見ますよね。屋根や庇があれば放射冷却を防ぐので、霜はおりません。

さて、話は夏に戻って、morinosの屋根表面はどうでしょうか。脚立に上って撮影してみました。

morinosの屋根(写真の左の四角で囲った範囲Bx1)は平均66.2℃です。本校舎の屋根より22.1℃低く、計算より10.7℃低いことになります。

これには2つ理由があって、緩勾配とはいえ、北に傾斜した屋根で日射を斜めに受けたため、日射強度が下がったこと。
近年、板金屋根の日射反射率が上がったこと。(カタログには色毎に反射率が書かれていることが多いです)

morinosで使用した屋根の日射吸収率は0.6(60%)です。20%も日射熱吸収を抑えられています。上の計算式で計算しなおすと、66.8℃です。おおむね実測とあってきます。

また、西側に5m以上張り出した屋根の影響で、ピロティの外壁(写真下のSp1)は37.6℃。外気温が36.8℃ですので、1℃程度の上昇ですんでいます。

利用する人にとっては、屋根表面温度はそれほど影響ありません。実際には、室内に入ってくる熱が重要です。この話は次の機会に紹介します。

 

※日射に内容に関する内容は過去の建築秘話でも書いてますので、ご覧ください。

太陽の熱で冬はポカポカ、夏はガード(morinos建築秘話24)
・日射熱は屋根からもやってくる(morinos建築秘話27)


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