【アニュアルレポート2025】GISデータの活用と森林現場への応用 〜3Dプリンタによる模型作成を通じて〜
GISデータの活用と森林現場への応用 〜3Dプリンタによる模型作成を通じて〜
講師 中森さつき
目的
GIS(地理情報システム)は、位置情報を持つデータを地図上で統合・解析する技術であり、森林分野においても重要な役割を担っている。森林の現場では、地形や林況、作業道の位置などを可視化・分析することで、施業計画の立案や資源管理、災害リスクの把握などに活用されている。特に近年は、公開されているさまざまなGISデータと現地で取得した実測データを組み合わせることで、より精度の高い空間情報の把握が可能となっている。例えば、これらのGISデータを基に3Dプリンタを用いて地形模型を作成すると、地形の起伏や森林の構造を直感的に理解することが可能となる。地形模型は、作業計画の検討や教育、地域住民への説明などにおいて有効であり、森林情報の共有手段としても有用と考える。
本報告では、GISデータの概要と森林現場での活用方法、さらに3Dプリンタによる模型作成の利点について整理し、森林管理と教育への応用可能性について考察した。
概要
GISとはどんな技術?
近年、森林分野においてもICT(情報通信技術)の活用が進み、データに基づいた森林管理の重要性が高まっている。その中でもGIS(地理情報システム)は、位置情報を扱う基盤技術として、森林の調査・計画・管理のさまざまな場面で利用されている。本報告では、GISデータの基本的な概要を整理するとともに、森林の現場における具体的な活用方法について述べる。さらに、地理院の公開データや現地で取得した実測データをもとに作成した地形模型を例に、3Dプリンタを用いた可視化の意義について考察する。
GISとは、地理的位置を持つ情報をデジタル上で管理し、可視化・分析する技術である。地形、土地利用、森林資源、道路などの情報を重ね合わせることで、空間的な関係を把握することができる。森林分野で扱われるGISデータには、標高や傾斜を示す地形データ、森林簿や林班界などの資源情報、航空写真や衛星画像などがある。近年では、地盤高データをはじめとする公開データの整備が進み、誰でも基盤的な地理情報を利用できる環境が整っている。また、現地で取得した測量データや調査結果をGIS上に取り込むことで、より詳細で実態に即した空間情報を構築することが可能となる(図1)。

図1 GISデータのイメージ(左図)と活用例(中央図、右図)
この実習では事前に整理した情報を現地で対象林分のデータを確認しています
GISを使うメリットと今回の取り組み
GISデータを活用することで、森林の現場におけるさまざまな課題に対応することができる。例えば、地形データをもとにした作業道の計画では、傾斜や地形の起伏を考慮した効率的なルート選定が可能となる。また、森林資源情報と組み合わせることで、間伐や伐採の優先順位の検討、施業履歴の管理などにも活用できる。また、地形データ等のGISデータは、三次元モデルとして出力することが可能である。
本報告では、地理院の数値標高データや現地で取得した実測値を用いて、対象地の地形モデルを作成し、3Dプリンタによって模型として出力した(図2)。作成した模型は、地形の起伏や斜面の形状を直感的に理解できる。特に、地図や画面上では把握しにくい微地形や尾根・谷の関係を立体的に確認できるため、作業道計画や施業検討の補助資料として有効である。また、教育現場においては、学生が地形と森林管理の関係を理解する教材として活用できるほか、地域住民への説明においても視覚的にわかりやすい情報提供手段となる。

図2 アカデミー演習林周辺の地形模型
作成した地形模型の活用例
地域の風土と獣害対策についての実習として、山中峠湿原におけるミズバショウ群落と植物分布に着目し、微地形との関係について検討した。本群落では、過去にニホンジカやイノシシの影響により岐阜県の天然記念物に指定されているミズバショウ群落が衰退したが、地域住民による防除活動により、現在ではミズバショウ群落の回復が進んでいる。こうした背景には、地形による水分条件の違いが関係していると考えられる(図3)。学生とともに現地を訪問した際は、開花時期ではなかったためミズバショウの分布を直接確認することが難しかった(図4)。

図3 山中峠湿原の様子
地形の凹凸で水のたまり具合が異なると、ミズバショウの出現状態も変わってくる(2025/4/26撮影)

図4 獣害対策プログラムで現地を訪問した時の様子
ミズバショウの開花の時期は終わっているので、ミズバショウを確認するのは難しい
しかし、地形模型を組み合わせることで、湿原内の凹凸や水のたまりやすい場所を把握することができ、ミズバショウが出現しやすい環境を理解しやすくなる(図5)。この事例は、GISと地形模型を組み合わせることで、現地観察だけでは把握しにくい現象を補完し、学習効果を高められることを示している。

図5 作成した山中峠湿原の地形模型
地形模型に砂をかけると地形の凹凸がよくわかる
さらに、本模型は比較的安価に作成でき、樹脂製で軽量かつ耐久性があり、汚れても容易に洗浄できるといった利点を持つ。これらの特性から、従来の博物館で展示されている固定的なジオラマに比べて持ち運びや現場での活用がしやすく、教育や普及の場面において有効な教材となることが期待されると考える。
まとめ
本報告では、GISデータの基本的な概要と森林現場での活用方法、さらに3Dプリンタによる地形模型作成の意義について整理した。GISは森林の空間情報を統合的に扱うための基盤技術であり、施業計画や資源管理、リスク評価などに広く活用されている。さらに、3Dプリンタによる模型作成を組み合わせることで、専門家だけでなく一般の人にも理解しやすい形で情報を共有することが可能となる。今後は、これらの技術を現場でどのように活用し、森林管理や教育に結びつけていくことができるのか検討と実践を続けていきたい。
教員からのメッセージ
森林は、実際に現地で見て、触れて、考えることで初めてその奥深さに気づくことができます。本校では、現場での体験とGISなどのデータ活用を組み合わせながら、森林を多面的に学んでいきます。今回紹介した地形模型づくりのように、データを形にして理解する学びもその一つです。特別な知識や経験がなくても問題ありません。大切なのは、自然や地域に関心を持ち、自ら学ぼうとする姿勢です。森林や林業に少しでも興味がある方は、ぜひ一歩踏み出してみてください。皆さんと一緒に学べる日を楽しみにしています。
参考文献
日本リモートセンシング学会編(2025)基礎からわかるリモートセンシング第2版.理工図書
活動期間
2025年~
連携団体
・岐阜大学
・高山市荘川支所
関連授業・課題研究&関連研修
・獣害対策プログラム(Cr1,En2)
関連教員
岐阜大学 安藤正規准教授
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