活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2026年07月27日(月)

【アニュアルレポート2025】美濃市牧谷保育園の伐採ソメイヨシノを活用したテーブル製作

岐阜県立森林文化アカデミー活動報告より

美濃市牧谷保育園の伐採ソメイヨシノを活用したテーブル製作

准教授 渡辺 圭

目的

これまで都市部の公園や学校の支障木など、未利用のまま廃棄される広葉樹は多く存在してきた。私自身、福岡県で家具職人をしていた頃に庭木や倒木の活用相談を受けた際、地域に製材所や乾燥設備がないため断念せざるを得ず、それらの樹木は使えないものと思い込んでいた経験がある。現在、全国的に戦後植樹されたソメイヨシノが樹齢約80年程度となり、倒木の危険性などの理由から伐採される事例が急増している。美濃市内でもすでに美濃中学校で伐採が行われ、来年度には美濃小学校でも計画されている。このような地域課題に対し、比較的簡易な設備で身近な材を近い範囲で活用するモデルを示すことは、環境への負荷を軽減し地域経済への貢献にもなる。本プロジェクトは、美濃市牧谷保育園の園庭で伐採されたソメイヨシノを活用して併設の子育て支援センター用テーブルを製作し、今後増え続ける未利用のソメイヨシノ活用の先行事例とすることを目的とする。

概要

本プロジェクトは、当アカデミーの卒業生が主体となって企画および製作の進行を務めたものである。地域子育て支援センターのカフェ営業のオープニングに合わせ、園庭のソメイヨシノをテーブルとして再生させたいという思いからスタートした。みんなで一緒に作り上げる感覚を持ってもらうため、事前に牧谷保育園で脚の面取りや天板の接ぎ合わせの順番を園児や地域の方々と検討するワークショップも卒業生の主導により実施された。

一方で、今回テーブル製作に使用したソメイヨシノは伐採から半年余りしか経過しておらず、含水率が家具用材としてはかなり高い状態であった。さらに材には腐れや割れ、曲がり、ねじれなどが激しく現れており、決して作り手として使いやすい材ではなかった。通常であれば家具用としては敬遠される状態だが、依頼者には経年変化による割れや反りが生じるリスクを十分に説明し、実験的な取り組みであることの承諾を得ている。

 

製作にあたっては、私自身の教員研究として、CNCルーターを用いて曲がりのある材を接ぎ合わせる加工部分を担当し、技術面からプロジェクトをサポートした。激しい曲がりや欠点のある材をなるべく有効に使うため、木の自然なカーブに合わせてCNCルーターで加工を行い、接ぎ合わせることで歩留まりを向上させている。具体的な加工方法としては、板を一枚ずつ木表・木裏から撮影し、データ上で重ね合わせて接ぎ合わせのラインを描き、それに合わせて加工を行った。

 

また、本来であれば使えない腐朽した部分については、ソメイヨシノの木くずとレジンを混ぜ合わせたもので埋める処理を施し、見た目の違和感が少なくなるよう工夫した。

当初は使い勝手を優先し、もう一台の直線で接ぎ合わせをした天板と同様に、四方を直線でカットする予定であった。しかし、CNCで加工を行った材を並べた際、直線でカットしてしまうとソメイヨシノ本来の自然な形状が失われてしまうことに、作り手として非常にもったいなさを感じた。そこで依頼者に確認していただいた上で、耳(樹皮の部分)は自然な形状を残し、長さのカットも緩やかなカーブで行う設計へと変更した。これにより、ワークショップで園児たちに並べ方を選んでもらった際の印象を、なるべくそのまま残した天板とすることを目指した。

完成したテーブルは、一般的に家具用として使われるヤマザクラなどに比べても、見た目の荒々しさと木目の美しさが際立つ唯一無二のものとなった。ソメイヨシノ特有の暴れやすさや乾燥の難しさなど、今後検討すべき課題は多いものの、完成品は依頼者や地域の方々に大変喜んでいただくことができた。 

地域の材を近い範囲で使っていくというのは環境的にも理にかなっており、今回の実践が地域の伐採木の新たな活用方法の道標となることを願っている。

 

教員からのメッセージ

園庭で子どもたちを見守ってきたソメイヨシノを、再び人が集うテーブルへと生まれ変わらせることができました。実現にあたりご協力いただいた後藤真紀園長を始め牧谷保育園の皆様、地域住民の大谷美穂さん、そして丁寧な企画運営で本取り組みを支えてくれた卒業生に心より感謝申し上げます。

 

伐採後半年と少しの高含水率での製作という挑戦でしたが、手間をかければ、激しい割れや曲がりも木が自然に生きてきた証として魅力的な長所へと変わります。依頼者にもその表情を大変喜んでいただけました。今後の経年変化を見守りつつ、こうした愛すべき地域の木々の価値が広く浸透するよう、引き続き活動を続けていきたいと思っています。

 

活動期間

2025年12月〜2026年3月

関連団体

社会福祉法人牧谷会 牧谷保育園|地域子育て支援センター

関連学生、卒業生

久野春奈(En21期)若田拓也(Cr23期)後藤里花(Cr23期)中村幸恵(Cr23期)西川知花(Cr25期)

 

 

過去のアニュアルレポートは、ダウンロードページからご覧いただけます。