山の暮らしを“つながり”から考える(山村資源利用演習 第1回)
<2026.5.20> エンジニア科2年・林産業コースの授業「山村資源利用演習」がスタートしました。
この授業は、山村地域に実際に足を運び、様々な資源を知りながら、実際にそれらを利活用する方々の作業を体験し、お話を伺う中から「山村資源」とその利用とは何かを考えていく実習です。
今年度は、林産業コースだけでなく林業コースの学生も履修し、9名でスタート。
私が担当してから、これまでで最も多い人数での開講となりました。
第1回目のフィールドは、郡上市明宝地区です。
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最初に行ったのは、「他々己紹介」。3人グループになり、互いに「出身地」「アカデミーでの思い出」に続き、「卒業後は?」について聞き合った後、「隣の隣」の人を全員に紹介しました。
1年間一緒に過ごしてきた同級生同士ですが、「意外と知らなかった」という声も。今年、共に学び合うこの科目の仲間たちを、あらためて知る機会となりました。

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続いて、「山村とは?」「里山とは?」について考えます。
普段から使う言葉ですが、意外とその定義を知らないものです。
学生からは、
「人が利用しているかどうか?」
「人が住んでいる場所の違い?」
「森林の利用する場所の違い?」
など、さまざまな意見が出てきましたが、さて正解は・・・。
定義をレクチャーした後は、現場を見ながら理解を深めていきます。

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オリエンテーションの後は「里山散歩」。
その中で出会った「山村資源」について、学生から挙げられたのは、
「薪」「田んぼ」「果樹」「石垣」「水路」「水車」「木造住宅」「川」など。
歩いてみると、山村にはさまざまな資源があることに気づきます。

自然農法の田んぼを見学
そして、「エネルギー」「食料」「水」などの、暮らしに必要な大切な要素も。
学生たちは、実際に集落を歩きながら、「山村とは何か」「山村資源とは何か」を少しずつ考え始めていました。

田んぼの水の取入口を見る
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午後からは、明宝でジビエ工房を運営しながら、地域の里山保全活動にも取り組む
元満真道(もとみつ・しんどう)さんのお話です。

明宝ジビエの元満真道さん
猟師として活動しながら、ジビエ肉の生産、そしてキッチンカーでの販売も広げています。
事業と並行して、里山保全活動にも力を入れています。
田んぼでの米づくりや林業などを体験的に学ぶ「明宝と森とエコサイクルWS」というイベントを主催。
昨年度は述べ300名もの人が参加したそうです。
「都市と山村が連携しないと、どちらも生きていけない。食料など生きる糧を生み出す山村、それを都市の人が消費する経済が回ることで、山村の生活も成り立つ。都市の人に、田舎の役割を知ってもらうという目的もあります」
元満さんは、福岡から郡上へ移住しました。
人口が減っていく山村で、地域の外から入ってきた元満さんは、山や田んぼなどの資源を活かす役割を担い始めています。
「空いていく田畑にブドウの樹を植えて、ワインをつくる。そして、自分たちの美味しいジビエに合う、美味しいワインをつくるのが夢ですね」
― 自分が生きていくのに、居心地がいい場所をつくる。
― そのために山村の課題を資源に変えていく
そんな想いが伝えられました。
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元満さんにお話いただいた後は、実際に山へ入り、「くくり罠」の設置体験です。

くくり罠を説明する元満さん
動物の痕跡(フィールドサイン)を探しながら、動物の動きを想像します。
「獣の動きを想像しながら歩くと、山の見え方が変わってきます」
という元満さんの見ている世界を、罠をかけながら学生たちも体感していきます。

シカの食痕
実際に罠を設置する作業では、カモフラージュやワイヤーの位置、小動物への対処など、多くの注意点があります。
ただ仕掛けるのではなく、獣の視点を想像しながら、彼等に“見抜かれない自然さ”をつくる。
ー 学生たちは、想像以上に繊細な作業であることを実感していました。

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元満さんは、狩猟を始めたきっかけについても話してくださいました。
「捕獲されて、捨てられていくシカを見て、なんとかしたいと思った」
そこから、命を“いただく”ことと向き合い続けています。現在は、「捕まえた命を、最大限おいしく食べてもらう」ことを大切にしているそうです。
命を受け取ることへの責任と技術のお話を、学生たちは真剣に聞いていました。

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1日の実習が終わって、ふりかえりでは学生からこんな感想が聞かれました。
「シカの視点で山を歩いたのは初めてだった」
「獣道が見えてくる感覚が面白かった」
「狩猟を生活の一部としてやってみたい」
「ジビエに携わる人の努力や思いがわかった」

これから森に関わる仕事、そして生き方をしていくアカデミー生に、元満さんからはこんなメッセージが伝えられました。
「仕事で山に行くだけではなく、”山に入ると気持ちいい”という感覚を忘れないでほしいです」
仕事と暮らしを分けるのではなく、つながったものとして生きていく ー 山村に住む人の山の見方、そして関わり方のリアルを、学生たちは明宝で感じ取っていたようでした。
元満さん、貴重な学びの場をつくっていただき、本当にありがとうございました。
これから1年間、「山村資源利用演習」では、さまざまな地域を訪ねながら、山村資源について学んでいきます。

<森林環境教育専攻 教員 小林(こばけん)>
