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2021年08月16日(月)

森と木のクリエーター科とは(オープンキャンパス資料)

8月22日(日)に予定しているオープンキャンパスが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、県外からの参加ができなくなりました。当面の間、県外の方向けにはオンラインで情報提供したり、個別相談を行ったりすることになります。22日に説明する予定の内容をここにも掲載しておきますので、県外の方はご覧いただき、進路検討の参考にしてください。

森林文化アカデミー・クリエーター科とは

森林文化アカデミー・森と木のクリエーター科についてご説明します。

 

設立の経緯

森林文化アカデミーの前身は1971(昭和46)年に開校した林業短期大学校です。当時は林業・木材産業の現場で働く技術者を養成する2年制の学校で、高校卒業生が対象でした。2001年に森林文化アカデミーに改編された際、それまでの現場技術者を養成する学科は「森と木のエンジニア科」として残され、新たに「森と木のクリエーター科」が作られました。林業を経営できる人、森林を空間として活かすことのできる人、木材を建築に活用できる人、木工や木育の活動を担える人など、新しい時代の新しい人材が求められていたためです。

 

業界を担うプロフェッショナル・新しい事業の創造者

クリエーター科が育成しようとしているのは、これからの森林・林業や木材産業を担うことのできるプロフェッショナル、そして既存の枠組みにとどまらず新しい事業を創造=クリエイトすることのできる開拓者です。そのため対象年齢はエンジニア科よりも高く、22歳以上、つまり大学卒業程度か高校卒業後4年程度の社会人経験を有する人、としています。(社会人経験というのは、林業などの専門分野の経験でなくてもかまいません)

 

4つの専攻

現在クリエーター科には、林業・森林環境教育・木造建築・木工の4つの専攻があります。

このうち林業と木造建築は、既存の業界があり、法制度があり、対応する省庁があり、さまざまな資格が存在します。そのためこれら2つの専攻では、それらの制度や専門の知識・技術などを体系的に学ぶことになります。

一方、森林環境教育や木工は、既存の業界や法制度などが確立しているわけではなく、資格も限られたものしか存在しません。そのため、幅広い学びの中で自分が担えることを見つけて深めたり、新しい事業や活動を立ち上げたりすることになります。

その他、たとえば林業と木造建築の間、森林環境教育と木工の間など、専攻の垣根を超えたところにも新しい事業の可能性は潜んでいます。クリエーター科では、そのような可能性を追求することも奨励しています。

 

17人の常勤教員

森林文化アカデミーには、森や木に関わる様々な分野の常勤教員が17人います。内訳は、林業専攻6人、森林環境教育専攻4人、木造建築専攻4人、木工専攻3人です。それぞれが専攻での授業を担当するほか、専攻の垣根を超えて複数の教員で担当している科目もあります。さらにそれぞれの専攻に多数の非常勤講師も関わっています。

実は、こうして森や木に関わる学科を集めた学校というのは日本国内では唯一で、世界的にも珍しいのです。17人の教員から複眼的な学びが得られるのは、画期的なことだと言えます。

詳しくは教員紹介のページを参照してください。

 

学生の年齢・経歴

クリエーター科に年齢の上限はありません。そのため20代から60代まで、幅広い年齢の人が学んでいます。入学時の平均年齢は36歳です。入学前の経歴もさまざまです。森林組合や建築設計事務所などこれまでも森や木に関わる職場に勤めていて、さらに専門知識を深めるために入学する人もいれば、まったく他分野から転職を志す人もいます。大学から進学してくる人、大手企業を中途退職してくる人、中学・高校や大学で教鞭を取っていた人など、実にさまざまです。

共通しているのは、森や木に関わる仕事や地方に生きる暮らしに前向きな思いを抱いていること、そして自分の趣味のためだけでなく社会に貢献するために学びたいという意思があることです。

 

林業専攻には緑の給付金

いま林業界では、これからの事業の中核を担える人材を求めています。そのため岐阜県が支援制度を設けていて、森林文化アカデミーの林業専攻を卒業後に林業分野へ就業する意思を持つ人には、在学中に最大300万円(1年間に150万円、最大2年間)の給付が受けられます。就業条件を満たせば返済する必要はないのです。これから林業を志す人にとっては経済的に大きな支えになります。詳しくは緑の給付金のページで確認してください。

 

成績優秀者には奨学金

緑の給付金のほかにも、クリエーター科の1年生と2年生でそれぞれ2人ずつ、成績優秀者に対して年額56万円(1年間の授業料を賄える金額)を給付する特別給費生制度や、各学年1人ずつ年額105,000円の奨学金を給付する制度などがあります。クリエーター科は12年生あわせて定員40人ですから、多くの学生に機会が与えられています。詳しくは学生支援制度のページを参照してください。

 

5市町から就学補助金

森林文化アカデミーと連携協定を結ぶ岐阜県内の5つの市町、揖斐川町・美濃加茂市・中津川市・飛騨市・白川町では、アカデミーで学び卒業後にそれらの自治体で働く意思を持つ人に就学補助金を出す制度を設けています。就業条件を満たせば返済する必要はありません。授業料の1/2を補助する自治体や、授業料全額に加えて教材費や実習費まで補助する自治体もあります。

つまり、これらの市町にある事業所の求人情報や生活環境などをよく調べ、就職・移住の意思を固めた上で受験すれば、入学後の経済的負担を大きく減らせることになります。積極的に活用していただきたい制度です。詳しくは学生支援制度のページを参照してください。

 

入試

クリエーター科の入試は、複数の単語から論題を作成して論述する800字程度の小論文と面接です。10月と12月に一般入試が、2月と3月に追加入試が設けられていますが、定員に達した場合は追加入試は行われません。昨年度から入学希望者が非常に増えているため、なるべく早めの入試に申し込むことをお勧めします。詳しくは森と木のクリエーター科・入試概要のページを参照してください。

なお入試に際しては、どの専攻を希望するか面接で尋ねることはありますが、書類等に明記する必要はありません。専攻への所属は、入学後2週間ほどで事務局に登録手続きをすることになります。しかし、どの専攻に所属するかはなるべく早く決めておくことをお勧めします。分野横断的な研究や活動を希望する人にとっては悩ましいところですが、いずれかの専攻に所属し、自らの軸足を定めなければなりません。

 

授業

授業は月曜日から金曜日まで行われ、特に1年次の前期はほぼ講義や実習で埋まっています。授業はすべての専攻の学生が受講する共通科目と、専攻ごとの専門科目に分かれていて、1年前期は半々程度の比率です。非常に忙しい毎日を過ごすことになります。

1年後期から2年に進むにつれ、共通科目が減り、専門科目の割合が増えてきます。また、2年生では後述する課題研究に多くの時間を費やすため、それ以外の授業の時間数は減ってきます。

シラバスに記載された授業科目以外にも、森林文化アカデミーではさまざまなプロジェクト授業が行われます。教員と学生有志で企画して立ち上げるもの、外部の企業や自治体から委託を受けて行われるものなど、さまざまです。このようなプロジェクト授業は、平日だけでなく週末や夏休み・冬休みなどに行われることもあります。

分野横断的な研究や活動を志す人は、他専攻の授業を取ることも可能です。特に2年次では空き時間が増えるため、他専攻の授業を受講しやすくなります。

これまでの仕事を辞め、わずか2年間の学びを経て新しい分野で仕事をするわけですから、極めて中身が濃く忙しい毎日が続きます。また、森林文化アカデミーは森や木に関わる人と情報の交差点のようなところで、ここで得られる人脈や知識・経験はかけがえのないものです。そのため「入学後にアルバイトをすることは可能か」という質問を受けることがありますが、できる限り貯金をしてから入学し、在学中は学業に専念することをお勧めしています。一方、卒業生の働く事業所でアルバイトを募集していることがあり、そのような森や木に関わるアルバイトができれば学びにもつながり理想的です。

 

インターンシップ

それぞれの専攻で、夏休みや春休みにインターンシップを体験することを勧めています。インターンシップ先は、卒業生が働く企業や、昔からアカデミーと関わりが深い事業体などさまざまですが、クリエーター科ではそれぞれの学生が関心を持つ森林組合、設計事務所、自然学校、木工房などへ直接連絡を取り、インターンシップを受け入れてもらう場合が多いです。インターンシップでの体験が、その後の就職につながる場合も多くあります。

 

課題研究

課題研究とは、それぞれの専門分野の学びの中で現場における課題を見つけ、その解決につながる調査・研究・実践などを行うことです。2年生の4月にテーマを定め、1年間をかけて研究を重ね、2月下旬の課題研究公表会で120分のプレゼンテーションを行い、成果物を展示します。それぞれの学生には主査として教員が付き、アドバイスを行います。

専門学校でありながら大学の卒業研究のようなボリュームです。これは必修科目でクリエーター科の学生は全員実践しなければなりません。大変な労力を伴う科目ですが、研究内容が卒業後の就職や起業につながることも多くあります。

過去2年間の学生の課題研究タイトルを、こちらのページからご覧いただけます。実践的なテーマが並んでいます。それぞれの研究の要旨をA4用紙2枚にまとめたものをダウンロードすることもできます。入学の検討や専攻選びの参考にご覧ください。

 

就職・起業

林業、森林環境教育、木造建築、木工ではいずれも求人は多くあり、30代半ばまでであれば卒業後に就職は可能です。民間への就職のほか、公務員試験を受けて林野庁や都道府県の林政部職員になる例もあります。

一方、40代以降では当然ながら就職の機会は減ります。そのため入学前に培ってきた他分野の知識・技術と、森林文化アカデミーで身につけた森や木に関わる知識・技術を組み合わせて、新しい事業を起業する人が多くいます。社会的経験や総合力を買われて40代、50代でも企業に就職した例もありますが、数としては多くありません。

森林文化アカデミーで過ごす2年間は短いので、なるべく入学前に卒業後の進路について具体的なイメージや情報を持っておくことをお勧めします。

 

もっと知りたい人へ

さらに森林文化アカデミーのクリエーター科について知りたい人は、森林文化アカデミーのウェブサイトの「活動報告」を見てください。さまざまな授業の報告が載っています。また、アカデミーのSNSアカウントもありますし、個人のSNSで情報発信している教員もいます。森林文化アカデミーの情報発信量は、他の学校と比べて群を抜いています。

コロナの感染状況悪化により、しばらくの間は県外からのオープンキャンパスにお越しいただけない状況ですが、オンラインでの相談は随時受け付けています。森林文化アカデミーのウェブサイトから申し込んでください。

 

森と木のクリエーター科長・久津輪 雅