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2019年03月17日(日)

森のようちえん「森のだんごむし」卒園に寄せて

森や川や田んぼなど自然環境を主な舞台に、お母さんたちが交代で子どもたちの成長を見守る「野外自主保育 森のだんごむし」。8組の親子で活動してきた小さな小さな森のようちえんから、今年も3人の子どもたちがお母さんと一緒に卒園しました。

この「森のだんごむし」は、アカデミーの「生涯学習部門」に位置付けられています。最短でも3年間365日続く森の空間を活用した学びと成長の場なんです。(多分、日本最長の生涯学習講座ではないだろうか!?)

実はこの講座、学び手は毎日森のようちえんに通う子どもだけではありません。実はお母さんたちにとっての学びと成長の場でもあるのです。もしかしたら子育てをきっかけに、お母さんたちの方が学ぶのかもしれません。子どもたちのこともた〜くさん報告したいところではありますが、今回はお母さんに向けて思うことを書きました。

そもそも野外自主保育という言葉に惹かれて集まったお母さんたちにとって、価値観もバックグランドも異なるお母さん同士がコミュニケーションとりながら一つの活動を維持運営していく、しかも子育てや家事をしながら、となるとそれはそれは物理的にも精神的にもディープでハードな経験です。

すでにある「森のようちえん」というサービスをお金で買うのではなく、自分たちが「森のようちえん」を「毎日」創って維持運営していかないといけないのです。こんなに面倒なことやっている大人たちは、今時少ないんでしょうね。誰かに預けて気の合う友達とお茶したり、趣味や好きな仕事をバリバリしたりすることを選ぶ人の方が圧倒的に多いはずです。。

その上、楽しいことばかりではありません。時には(いや、しょっちゅうかも?)意見がぶつかり合い、遠慮しているとストレスが溜まったり、保護者同士のコミュニケーションがうまくいかないと子どもたちにも影響が出たり。。
運命共同体の中でのベタで大変な活動です。天に唾すればすぐ自分に降りかかってくる関係性のるつぼです。

実はナバも、「本当にこの自主保育スタイル、やめた方がよいのではないだろうか」と何度も自問自答してきました。

しかし社会にも様々な課題があります。文明が発達して何もかも便利になり、選択肢も増え、異なる価値観の人同士がコミュニケーション取り合い、何か一つのことをやろうなんてことがほとんどなくなってしまった現代。

 気の合う仲間だけで、あるいは1人で、我慢もせずに、モノと情報が豊富に揃った世の中で、自分の思うままのペースで、たいていの欲求は気軽に解消できてしまうコンビニエンスな今。

私たちは、異なる人と過ごし、耳を傾け、意見を言い、多様性を認め、譲歩しあい、受け入れ、今までにない世界に飛び込み、行動し、失敗し、助け合い、笑い合えるそんな、人間という動物が群れで暮らしていく上で最も大切なコミュニケーション力や「生きる力」を失いつつあるのかもしれません。

そうした中、お世辞にもコミュニケーション上手とは言えないお母さんたちが、あえてこの森のだんごむしを選び、不器用ながらも(ごめんなさいね)なんとか勇気を振り絞って、それでもなんとか直球で、そしてボコボコに傷つきながらも、コミュニケーションを取り合いながら活動してきました。答えも何もない世界で、いま目の前で起きていることを自分の感覚でとらえ、自分で考え、自分で行動する毎日。。。

うまくいったかいかないかではなく、向き合っていたか、自分に正直でいられたか、今ここにいたか、心と言葉や行動がつながっているか、というゴールに向けて、ひたすら考え悩み続けてきたのではないでしょうか。

そんな中、3年間疲れても歩かずに走りきったお母さんたちに、乾杯です! そしてお疲れ様でした。でもこれが「はじまり」と思って、これからもズンズン前に進んでください。

これほど真剣に向き合ってきた母親たちに見守られてきた子どもたちは幸せだなぁとつくづく思います。決してスマートでなくとも、その思いはしっかりと感じ取っているはずです。上手にやることが重要ではなく、真剣に向き合うことの暖かさや気持ちよさを実感しているはずです。

森はそんなお母さんたちを包み込むように、3年間見守ってきてくれました。そんな森に、またいつでも戻っておいで。そして一緒に遊びましょう。

卒園、おめでとう!そしてありがとう。

 

実は恥ずかしがり屋でマジなメッセージを面と向かって伝えられない
コミュニケーション下手な「なんちゃって先生」
萩原・ナバ・裕作