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2018年10月22日(月)

『野外で算数・英語』遊びながら野外で学ぼう

 スウェーデンのRobert Lattmanさん、北海道のNPO法人当別エコロジカルコミュニティの代表理事である山本幹彦さん、同NPO法人の山本草さん、そして京都でコミュニティづくりを指導している山本風音さんをお招きして、『スウェーデン発!「はじめよう!野外で授業」1日ワークショップ』を開催しました。

 スウェーデンでは行政が運営する自然学校が約90校あり、多くはストックホルム周辺に集中している。Robert Nynashamns(ニュネスハム)市の市の職員として自然学校で18年年間勤めている。最初は焚き火を囲んで、本日の簡単なスケジュールを紹介、森の情報センターで午前講義。

 

 Robertによると、スウェーデンでは1~5、6~19歳など年齢層による指導要領があり、彼の勤めるNynashamns(ニュネスハム)の自然学校では110校から3000人を対象にプログラムを提供しており、ニュネスハム市の人口(28000人)10%を受け入れ、先生方も年間300~600人の研修を受け入れている。

 

 自然学校は学校の一科目、または一教室のような存在で、学校のカリキュラムに則り、学年毎に組み込まれ、子どもたちは9:00~14:00まで野外と室内の両方で学ぶプログラムが提供される。また、先生にはこの自然学校で、どのような学びができるのかを示すガイドブックが配られている。

 

 

 幼稚園の子どもたちには『The Magpie:カササギ』というプログラムで、カササギの生態だけでなく、カササギになりきることで学ぶのです。

 

 小学校1年生は『昆虫と蜘蛛』小学校2年生は『哺乳動物とその生活』、小学校3年生では『石器を使い歴史を学ぶ』、小学校4年生は『野外で算数と共同』・・・・9年生(日本の中学校3年生)は『湿地帯の窒素成分と水質』などのついて学びます。それぞれに対応したテキストも揃っています。2018年には移民のためのテキストを作成した。

 

 

 子どもたちへのプログラム提供だけではなく、行政機関へのアピールも重要である。清掃活動を指導したり、水道局のキャンペーンに一躍かったりして、自然学校の存在意義もしっかり伝えている。

 

 『野外教育とは何か』と言う定義として、スウェーデンでは「現実の状況における確かな体験ふりかえりにより得られる」、ヨハン・ハインリッヒは「手と頭と心の3つを」、エレン・ケイは「学びをより深く導く」、ジョン・デウエイは「体験を通して学びをするがふりかえりが重要である

 普段教室でのみ学んでいた子どもたちが、野外で学ぶとより高いレベルに至る。野外では単に算数をするのではなく、コミュニケーションする能力も高めることができる。

 

 イギリスで4000人の子ども、250人の教員を対象に2012~2116年の4年間アンケートした結果、楽しんで学べたが95%、自然を親しめた94%、意欲的に学べた92%。

 教員に対するアンケートでも同じような高評価が得られている。

 

 4年間のプロジェクトを通して、円の中心に『楽しむこと』があり、学びの到達目標に達する。

野外教育によって集中力が高まり、学習意欲が高まる報告もなされており、効果的な学びにつながっている。

 

 野外で太陽光線のUVBを浴びることで、ビタミンDを作り出せる重要性も叫ばれている。

 

 野外でのアクティビティではOne自分でのふりかえり、Pairs2または3人でのふりかえり、All全体でのふりかりが重要

 

Experiencing 1m3』では、1立方メートルについて学びます。棒を使って1立方メートルをつくるグループ活動。自然学校に来る前に事前に学校で1立方メートルについて学んでくる。

 棒をどのように結びつけるのかも課題である。

 そして、1立方メートルのキュービックをつくれたグループは記念撮影する。

 

 

 講義終了後は質問タイム、

   スウェーデンでは1クラス30人、1学年2クラスが一般的。

   Robertさんは市の職員。学校の教室の一つがこの自然学校。

   障がい者向けのプログラムのある。

 

 

 さぁ、外で活動です。最初にサークルになりますが、隣の人と親指と親指でつながります。子どもによっては隣の人の手を握るのに抵抗があることもあるので、最初は軽いタッチとして親指でつながる。

 

 

 

 では具体的な活動です。

【アクティビティ1】

 60秒用の砂時計を手にしたRobertさんの合図で、横一列に並んだ全員ができるだけ遠くに歩き、60秒丁度に戻ってこられるかを試みます。これは算数に時間の要素を組み込んでいます。同じように走って遠くに行って戻ってくるのも実施。

 

 60秒を頭の中で考え、カウントし、推測する。面白いことに幼稚園の先生は戻るのが早い傾向があり、小学校低学年の先生は戻るのが遅い傾向があるそうです。

 さて、「ふりかえり」です。まずは一人で、次にペアで、最後に全体でしっかり「ふりかえり」ます。これをOPAと言います。これが重要なのです。多くの自然体験活動で、重要と言われているのに、日本ではあまり実施されていない。これが要です。

【アクティビティ2】

 ペアになった組に一枚のカードを渡されます。まずは10本の棒を拾い集め、1m間隔で並べます。

1.最初は1本目の棒まで飛び越える。

2.アリのような小さなステップで、2本目の棒まで行く。

3.ゆっくりと3本目まで歩く・・・・・といった感じ 、最後に「ふりかえり」があります。

 

 

 みな指示書に従って、真剣に取り組んでいます。やっている人はまじめに、しかし第三者として見ていると、結構、ペアごとの個性が見られます。

 

 

【アクティビティ3】

 次は、野外で英語です。最初に山本さんが英語のアルファベットを記したカードを地面に散らします。スウェーデンでは森の中でカードを木に吊るすそうです。

 5人ほどのグループを作り、縦一列になびます。

 先頭の人が走ってカードを一枚とって戻ったら、次の人とタッチして、次の人がカードを取りに向かいます。戻った人は列の一番後ろに並びます。

 この要領でカードをどんどん集め、競争ではありませんがどこのグループが何枚獲得したか確認します。

 

 

 そしてこれからが本番。

 各グループで獲得したアルファベットを並べて、Robertさんからのお題に答えます。今回は①良い先生の名前、②悪い先生の名前をつくり、そのアルファベット1文字ずつの形容詞を考える。

 例えば、「KIDA」ならば、Kind、Intelligent・・・です。

このアクティビティもOPAによる「ふりかえり」を実施します。

 

 

【アクティビティ4】

 Doing the verbsは「動詞をやってみよう」です。

 4つのグループに分かれてグループ毎に縦一列に並び、渡された一枚のカードに記された内容を、声を出しながら実践します。

 

 

 

例えば、「I just stride」と言いながら大股で歩くのは、こんな感じと、Robertさん、風音さん、幹彦さん、ナバさんが実演。

 

 

 参加者もみなそれぞれ実践です。楽しみながら、声を出し、一体感を体感。

 こうした活動も事前に学校で英単語を勉強してきた後に体験するため、実際にはどういうことかを体感することで、言葉の理解度が深まるのです。

 

 

次は森へ移動です。

【アクティビティ5】

 その前に、2人ペアになってカードを渡されます。想定はガイドとツーリストです。目的地に着くまでも学習の場として、ガイドは見るものを英語で説明し、ツーリストは質問する。

 

 

【アクティビティ6】

 目的地に到着するとRobertさんから、「 これから4つのグループに分かれて、各自が森の中で珍しいもの、何でもいいので見つけてください」と言われ、探します。

 「ではグループ毎に、持ち寄ったものを大きさで順位付けしましょう」と言われて実践します。

 

 「大きさで分類」と言っても、長さか、太さか、全体のボリュームか、グループ内全員が納得しなければ意味がない。参加者が議論し、合意形成することが重要です。

 対象が小さなお子さんの場合には、「木の枝」とか「まつぼっくり」と具体的にお題設定することも重要。

 

 続いて同じものを「古い順に並び返してください」と言われる。「どうしてこちらが古いのか?」そんな議論が生まれる。グループ内の人が同一見解になる、合意形成されることが重要。答えを与えるのではなく、議論できるように誘導することがポイント。

 

 

 続いて、「これから4つのグループ毎に、白い布を3枚渡します。そこに森で見つけたもの一品ずつを置いて、3つのカテゴリーで分類してください」と言われました。

 このカテゴリー分類も算数の要素が入っている。また合意形成の過程で社会性も培う。

 

 

【アクティビティ7】

 次に算数アクティビティです。2人でペアになり、1mの細い紐と一枚のカードを渡されます。そのカードの指示事項をペアで実践です。

 

 

 1mの紐を木に巻き付けて、幹の周囲がどれくらいかを感覚でも覚える。自分の体との比較、測定してみて初めて知ることも多い。紐の長さと、まつぼっくりの長さ比較も同様です。

 そして最後にOPAの実施。

 

 

【アクティビティ8】

 最後に、「Little finger」とういアクティビティ。

 Robertさんが渡してくれるのは、小枝1本と30cm物指です。グループによって渡される枝の長さは異なり、短いもの長いものがあります。その小枝をグループの代表者の「小指」だとして、それを換算して、その人の縮小・拡大版の人型をつくる。

 このグループは小指の無さの3倍の小枝を渡されたので、それを再現しました。

 

 

 次のグループは半分のサイズの自分を再現。

 OPA「ふりかえり」の中では、今まで自分の頭の長さを意識したことがなかったが、今日は26cmと理解できた。換算するのに簡単な方法は何かを考えた。自分の腕の長さを客観的に見ることができた。サイズ感の違いを実感できたなど、様々な意見によって新たな学びが起こるのです。

 

 

 最後に外は真っ暗になってしまった森の情報センターで記念撮影です。

 今回は森の中で授業、算数と英語を中心に実施してもらいましたが、「学ぶことを意識せず、楽しく体感できた」と思います。また次回も楽しみに!!

 

 

 最後にRobertさん、山本幹彦さん、山本草さん、山本風音さん、楽しく学べる時間をありがとう御座いました。またご参加いただきました皆さんにも感謝です。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。