ドイツ木工視察報告③ 学校同士の連携を探る
将来の交流プログラムの可能性
カールスルーエのハインリヒ・ヒュプシュ職業学校(以下HHS)は、日本との交流にとても前向きでした。
HHSではかつてロシアの木工教育機関と交流プログラムの実績があり、相互に訪問したり、保育園など公的機関の家具を合同でデザイン・製作して納品するなどの活動をしていたそうですが、ウクライナ戦争のために中断してしまいました。そのようなことから海外との新たな交流を模索しており、木工の長い歴史と文化を持つ日本に関心を持ってくれています。

学校の廊下にはこのような継手見本がたくさん展示されていました。
また実技系のピーター・ヴィンクルフォーファー先生は、過去にドイツで行われた日本の鉋を使う競技「削ろう会」でなんと3回優勝した経験を持つなど、日本との交流経験があるとのこと。そこでHHSとの連携モデルとしては、
①両校の学生で保育園など公的機関の家具をデザイン・製作し、寄贈する(過去にロシアの学校と実践していた内容)
②ドイツの日本製手工具の通信販売会社などに協賛を依頼し、ドイツの学生向けに日本の道具についての授業をしたり、両校の学生で鉋削りの競技会を実施。
などの可能性があると思っています。

ドイツの削ろう会で優勝経験を持つというヴィンクルフォーファー先生。

ヴィンクルフォーファー先生の木製システナー(道具箱)には日本のノミがずらり!

学校の廊下には、日本の手工具などの通信販売会社(DICTUM)の展示品もありました。鋸、ノミは日本製のものが世界中で使われています。
不確実な時代だからこそ
ただし実現には壁があります。特に、私がドイツ滞在中にもどんどん状況が悪化していった中東情勢の影響です。エネルギー価格が高騰しており、海外と自由に行き来するのはしばらくの間難しくなるかも知れません。また、日本、ドイツとも経済は低迷しており、いずれの国でも移民排斥を掲げる政党が躍進しています。滞在中、いろいろな人との会話で話題になりました。
「しかし、そんな時代だからこそ」とHHSのフォルカー・クロス先生や後述するロッテンブルク林業大学のバスチャン・カイザー学長が強く意識していることがあります。それは異なる文化を持つ人と交流し、学び合うこと。危機に負けないしなやかな強さを持つこと。私もそう思います。学生たちにもぜひそんな機会を与えてあげたいので、実現に向けて努力したいと思います。

木工の理論を教えるフォルカー・クロス先生。ハインリヒ・ヒュプシュ職業学校の校章のモチーフにもなっている階段にて。いずれ森林文化アカデミーの学生とまた訪問できれば。

カールスルーエ市内にあるクリエイティブ・スタートアップセンター「パーフェクトフューチャー」。起業する若者が安価にオフィスを借りられる。
報告:久津輪 雅(木工・教授)