ドイツ木工視察報告② ハインリヒ・ヒュプシュ校でのミニ授業
(①からのつづき)
日本の木工を紹介
ハインリヒ・ヒュプシュ職業学校(以下HHS)では、クロス先生のはからいで職業学科の3年生のクラスでミニ授業をさせてもらいました。岐阜県と森林文化アカデミーの概要を20枚ほどのスライドにまとめて持参しました。当初は短時間の予定だったのですが、だんだん調子が出てきて・・・アカデミー2年生が弁当箱製作に取り組む「商品化」の授業説明のところで「みなさんはお弁当箱を使っていますか?見せてくれますか?」と聞いてみました。

多くの学生が弁当を持参しているんですね。でもさすがに木製はないようでした。パンが多かったですが、グラノーラやフルーツを持参している学生もいました。日本ではご飯やおかずを入れるので、構造、加工方法、接着剤、塗料など、考えることの多い課題であることを説明しました。




なぜ、この学校に?
職業学科3年生の学生たちに、なぜHHSを選んだのか、それまでどこで学んで(働いて)きたか尋ねてみました。
1人目(フィンさん、21歳)
「ここに来る前は普通科の学校を卒業して大学受験資格も取りました。大学に進学するのが一般的ですが、まずは技術を身に付けたかったのでここに来ました。HHSは1年目に学校でしっかり理論と実技を学べるからです。私は隣の州の出身ですが、そこでは1年目からデュアルシステムで企業と学校を行き来して学ぶシステムなのです。この道に進もうと決めたのは16歳頃で、バウハウスの理論と実技を組み合わせる考え方に影響を受けました。卒業後はプロダクトデザイナーになりたいですが、その前にきちんとした手仕事の技術を学ぶことは、とてもよい土台になると思ったのです」
2人目(マックスさん、32歳)
「私はすでにドイツで大工としての資格を持っています。見習い期間の後、ニュージーランド、オーストラリア、デンマークへ行って働きました。建築業界に入ったのは、自分の家を自分で建てる方法を知りたかったからです。ずっと手を使って働くのが好きでした。今は土木エンジニアの学位を取るためにここで勉強しています。より良い給料を得るためと、ドイツ国内外でより多くのチャンスを得るためです」
3人目(ルーカスさん、25歳)
「カールスルーエの高校を卒業して、大学で建築を学び、学士号を取りました。でも勉強しているうちに一日中パソコンの前に座っているのが嫌になり、もっと実践的なことをしたいと思いこの学校に来ました。夏には卒業ですが、その後マイスターコースに進学予定です。将来は起業したいと思っています。いま、デュアルシステムではとても小さな工務店で働いていて、床のサンディングから家具製作、窓やドアの修理、古いアパートのリノベーションまで、ありとあらゆる仕事をしています。でも将来自分は一つの分野に特化したいと思っています。あまりに多岐にわたると一つのことを極めるのが難しいので」
ドイツでは10歳までの初等学校を終えた段階で高等教育コースか職業教育コースに分かれるシステムですが、実際にはそのように明確に分かれるわけではなく、いろいろなルートがあるのだということが分かりました。その点では、様々な学歴や職歴を経てやってくるアカデミーの学生たちとも似ています。
ステップアップを保証する社会
ただし明確に異なるのが、マイスターコースを除けば学費が無料であること。それだけでなく、デュアルシステムで企業で働いている間は給料が支給されます。そのため学生たちから「日本では学校に通学中はお金がもらえるのですか?」という質問が出て、日本では授業料があること、高校教育の無償化がようやく今年から始まったばかりであることを説明したら、教室中がどよめいていました。学生たちとの会話から、ドイツではより高いレベルの知識や技術を身に付けたければそれを社会として保証する仕組みがあり、それが働く人たちのレベルアップ(学校へ戻って学び直す)への意欲につながっているのではと感じました。
このような形で2つの学科でミニ授業と意見交換をさせてもらいました。クロス先生、学生のみなさん、ありがとうございました。なお、今回の私の視察とミニ授業のことは、先方のブログにも掲載していただきました。https://huebsch.karlsruhe.de/besuch-von-prof-masashi-kutsuwa-japan/

弁当箱を見せてくれた職業教育学科3年生のクラス。隣の女の子が踊っているので私も踊っています。

こちらは国家資格を取得するための技術専門学科で、やや年齢層が上。
(続きます)
報告:久津輪 雅(木工・教授)