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2026年04月03日(金)

ドイツ木工視察報告① ハインリヒ・ヒュプシュ職業学校の視察

 木工専攻教員の久津輪です。3月15日から24日まで、ドイツ・バーテンビュルテンベルク州の木工教育機関などを視察してきました。数回に分けて報告します。

視察の目的

 目的は2つあります。1つ目は、森林文化アカデミーとロッテンブルク林業大学(以下HFR)の交流を木工分野にも広げること。アカデミーとHFRは2014年に連携協定を締結して以来、林業、森林環境教育、木造建築の各専攻で交流を重ねてきましたが、HFRには木工の授業がないため木工専攻では交流を行ってきませんでした。この点をHFRのバスチャン・カイザー学長に相談したところ、バーテンビュルテンベルク州(以下BW州)の職業学校との交流を行ってはどうかとの提案があり、今回の視察が実現しました。

 2つ目は、岐阜県とBW州の木工教育機関、木工産業同士での連携の可能性を探ることです。木工・家具産業の盛んな岐阜県全体にも利益をもたらす関係が築けないかを模索しました。

 教育機関では以下の4校を視察しました。
Heinrich-Hübsch-Schule in Karlsruhe(カールスルーエ・ハインリヒ・ヒュプシュ職業学校・公立)
Gewerbliche Schule Tübingen(テュービンゲン職業学校・公立)
Bildungszentrum Holzbau in Biberach(ビーベラッハ木造建築訓練センター・職人組合立)
Hochschule für Forstwirtschaft Rottenburg(ロッテンブルク林業大学、正式にはロッテンブルク応用森林科学大学)

 

ドイツの職業教育について

 各校の視察報告の前に、ドイツの職業教育システムについて触れておきます。州ごと、学校ごとに違いもあるようで全体像がつかみにくいのですが、大きく言うと次のような仕組みです。私が視察したカールスルーエやテュービンゲンの学校は③にあたります。

①初等学校 4年間(7〜10歳)(無償)
→ここで高等教育コースか職業教育コースかに分かれる。後者の場合、

②中等学校 5年間(11〜15歳)(無償)

③職業学校 3年間(無償)
ここでは1年目は学校で講義、実習を受ける。
2〜3年目は週3日半は企業で働き、1日半は学校で授業を受ける。(デュアルシステム)
→この後、働き始めたい人はそのまま働いていた企業へ就職。
→起業を目指す人はマイスター資格取得コースへ。

④マイスター資格取得学科 1年間(有償)
→起業も可能。

 

カールスルーエ・ハインリヒ・ヒュプシュ職業学校

 人口30万人のカールスルーエ市の中心部にあり、19世紀に活躍した建築家ハインリヒ・ヒュプシュの名前が冠せられています。木工、金属加工、建築、屋根工事、塗装などの学科があります。上記③の職業学科のほか、③と④の中間にあたる国家資格を取得する技術専門学科(2年間)、④のマイスター取得学科などもある、大きな学校です。教員数は100人、学生数は1760人です(ただしデュアルシステムで学生たちの半数は企業で働いているため、学校で学ぶのは常時半分程度です)。

 

ドリス・ホーマン学長(中央)とフォルカー・クロス先生(右)

 同校のドリス・ホーマン(Doris Hohmann)学長にご挨拶した後、木工の理論部門のフォルカー・クロス(Volker Kloss)先生と、実技部門のピーター・ヴィンクルフォーファー(Peter Winklhofer)先生に案内していただきました。クロス先生はBW州全体の木工教員を指導する立場の先生とのこと。

実技のピーター・ヴィンクルフォーファー先生(中央)と理論のフォルカー・クロス先生(右)

 

 様々なレベルの学科があるため、このような作業台のある手作業室、機械室が何部屋もあります。作業台の下には学生が使うことのできる手工具がセットで納められていました。

 

 職業学科の1年生(16歳〜)の授業の様子です。自分用の道具箱を作っています。私が視察したドイツの木工現場は機械化が進んでいたので、「なぜノミやカンナを使わせるのですか?」と聞いてみました。「どんなに機械が発達したとしても、手工具で木を削る感覚が分かっていないと、機械を使いこなせない」とのこと。これは私たちがアカデミーで手工具の実習を行う理由と同じだったので、心強く感じました。

 ちなみに彼らが作っている箱、木工に詳しい人なら「お、これは」と気がつくかもしれません。ヴィンクルフォーファー先生が持っているのが完成品ですが、先生の左の棚に収まっているドイツ・FESTOOL社の電動工具用コンテナ「システナー」です。先生はFESTOOL社のアドバイザーを務めているので、教育用にコピーを製作することが認められているとのことでした。

 

 この学校では建具・建築も含めた教育をしているので、機械は全般に大型です。3校見学しましたが、いずれもドイツ製の木工機械が備え付けられているのが印象的でした。もちろんドイツでは高性能の木工機械が国内で揃うからということもありますし、公立学校なので国内産業保護の意味もあるのかもしれません。一方、日本は木工分野でこうした機械を作れるメーカーが少なくなっているのを危惧しています。

 アーテンドルフ社(Altendorf)の横切盤、マーティン社(Martin)の自動鉋盤、ヴァイニッヒ社(Weinig)のモルダー、ホマッグ社(Homag)のCNCルーターなどが並んでいました。

 

(続きます)

報告:久津輪 雅(木工・教授)