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2025年12月18日(木)

ドイツフォレスターの野生動物管理③

3日目:巻狩りと解体を通して感じたこと

今日も昨日に引き続き、狩猟から始まる一日でした。
参加したのは、ロッテンブルグから車で30分ほどの距離にあるNagold(ナゴルト)地区で行われた巻狩りです。

 

今回の巻狩りは、この区域を担当する森林官に声をかけられて集まった地元の猟師の方々によるもので、昨日参加したロッテンブルク林業大学主催の巻狩りと比べると、20人(フォレスター&猟師14名+我々)ほどの小規模なものでした。※昨日の巻狩りは合計150人程

巻狩り開始前のミーティング。 地元の猟師と森林官が対等な立場で意見を交わされていて、狩猟が森林保全の一つの手段として地域の中に位置づけられているように感じた。

この日の巻狩りでは、残念ながら一頭も捕獲することはできませんでした。しかし終了後、バイムグラーべン先生が反省点を皆で振り返る時間を設けてくださったことが印象に残っています。射手の配置が人間目線で決められており、ノロジカがどこを通り、どこへ逃げるのかといった動物の視点が十分ではなかったという指摘でした。結果だけでなく、その過程を分析する姿勢に、狩猟を学びとして捉える文化を感じました。

ホッハジッツに立ち獲物を待ち構える射手(左)。勢子のリーダーを中心に左右20mおきに8人が横一列の隊列を組み森を歩く(右)

この森は平坦な地形でドイツトウヒを天然更新で育成している森でした。一見歩きやすそうに見える森でも、ブラックベリーが繁茂する場所はトゲが鋭く足を取られます。 地形と植生が動物の行動を左右することを実感しました。

昨日の演習と比較し、今日の巻き狩りを振り返る

 

巻狩りの後には、森林官の事務所を見学しました。

特に印象的だったのは、事務所のすぐ隣に解体処理施設が併設されていたことです。森林の管理、狩猟、捕獲後の処理が、空間的にも一続きとして扱われており、その配置自体がドイツの森林観を象徴しているように思えました。

森林官の事務所(右)と、その隣に併設された解体処理施設(左)森林管理・狩猟・処理が一体で考えられていることが伝わる配置だった。

 

午後には、ロッテンブルク林業大学で、前日の巻狩りで捕獲されたノロシカの解体処理を見学しました。指導してくださったのは、チュービンゲンで食肉加工の職業訓練学校の先生をされているブッチャーのヨッヘンさんです。

食肉加工学校の先生でもあるブッチャーから、解体と衛生管理を学ぶ。
 捕獲後の工程も含めて「狩猟」であることを実感した。

ブッチャーの手際の良いナイフ捌きに驚きながらも、狩猟免許とは何を意味するのかを考えさせられました。ドイツでは、狩猟免許を持つことが単に「捕獲ができる資格」ではなく、捕獲から解体、衛生管理、さらには流通までを理解し、社会に説明できる立場になることを意味しています。

解体や食肉加工の知識が求められるのは、教育カリキュラムが特別に手厚いからというよりも、狩猟が森林管理の一部として制度化されているからだと感じました。狩猟は森から動物を切り離す行為ではなく、森林をどう維持し、その恵みをどう社会につなげていくかを考える営みとして位置づけられているのだと理解できました。

お昼ご飯に食べた「農家のソーセージ」という料理。塩見の効いたマッシュポテトと紫キャベツのサワークラウトがソーセージにとても合う

今回の研修を通して、狩猟は単に動物を減らす行為ではなく、森林の更新を支え、人の暮らしへと資源を丁寧につないでいく文化なのだと実感しました。そしてその視点は、岐阜県立森林文化アカデミーが掲げる「森林文化」を学ぶ姿勢とも深く重なるものだと感じています。

クリエーター科1年 長航介

 
あとがき

森林官の事務所と解体処理施設が併設しているなんて、非常にユニークな場所だな!と思いましたが、実は森林官の事務所は解体処理施設を有しているそうです。ここにもドイツの森林と野生動物の関係性を感じますね。また、巻き狩りでは開始する前にバイムグラーベン先生がハイシートにスタンバイするやいなや「今回は難しそうだな」と呟いていた通りになりました。大切なのは目的を明確にし、その為に何を行うのか?という事前の準備や段取りが大切だということを考えさせられました。

 

過去の活動報告

1日目

2日目

報告:引率教員 新津裕(YUTA)