森と木のクリエーター科木工専攻
卒業生の進路

迫間 涼雅

飛騨の森と暮らしをつなぐ工房の一員として家具づくりを次世代へ

プロフィール

1998年生まれ 三重県伊勢市出身 22期生
武蔵野美術大学建築学科を卒業後、都内でクラフトマーケットのイベントを企画運営したのち、家業の電気工事業で現場作業に従事。アカデミー卒業後は高山市にある「木と暮らしの制作所」で制作スタッフとして働く


質問1)今の仕事内容を教えてください。

私の勤める「木と暮らしの制作所」では、テーブルをメインに、飛騨地域の木材を使った家具をつくっています。
私たちが材料として使っているのは、一般的な家具用材として流通している木ではなく、これまで製紙原料やチップの原料になっていた木材です。飛騨地域の木は、雪の影響などから曲がりや節といった特徴があったり、直径の小さい木が多かったりするため、家具材としては扱われにくいものがあります。そうした木を家具の材料として使うことで、これまでとは違った価値を与え、一本一本の木の個性を活かした家具へと変えていきます。
この流れ中で木と暮らしと森をつなぎ、そうして生まれた循環を次の世代へ残していくことを目指して活動しています。

実際の仕事では、全国の販売店さんからいただいた注文に応じて、家具の製作をしています。
私たちはすべて卸売で、会社の考え方やものづくりに共感してくださる販売店さんと共に、お客様へ家具を届けています。

また、家具の制作以外では、2026年から「森のバトン」という高山市主催のインターンシップ見学ツアーの企画・運営も担当しています。アカデミーを含む大学生や専門学校生などを対象に、森や木に関わる仕事に関心のある学生と、飛騨地域の事業者をつなぐことを目的とした取り組みです。ツアーでは、川上・川中・川下の各分野の企業や事業者を訪問し、実際の仕事から“現場の空気”を体感していただき、インターンシップにつながる機会を提供しています。

 

質問2)今の仕事で大変だなと思うことと、やりがいを感じることを教えてください。

制作担当が4人なので、単純に制作が追いつかなくなってしまっているときは大変です。

実務的なところでは、地域材を使っているという点で、製材乾燥後の1枚1枚の板に対してや
樹種に対してなど、材料に対して気を付けることがとても多いところです。でもこれは地域の木を使っていくために必要な技術でもあるので、難しさでもあり、やりがいにもつながっています。

また、頑張ってよかったと感じるのは、販売店の方から自分が担当した商品のフィードバックをいただけた時です。卸売が中心なので、エンドユーザーの方々と直接お話しする機会はあまりありません。そのため、販売店の方から客観的な意見をいただけることは、とてもありがたいです。良い意見だけでなく、改善につながるような意見も含めて、自分の仕事に対する反応を直接聞けることがが嬉しいです。

 

質問3)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?

自分たちの仕事を通して、飛騨地域の木を使い続けられる環境をつくることが、社会への貢献の一つだと感じています。
飛騨には地場産業としての木工とそれを支えてきた職人や事業者がたくさんいます。
ただ、地域に木があるだけでは、それを使う仕事は続いていきません。
私たちは、これまで家具材として使われてこなかった木にも価値を見出して家具にすることで、地域の木を使う仕事そのものをつないでいく役割を担っているのだと思います。

また、自分たちだけですべてを完結させるのではなく、飛騨地域にはさまざまな加工技術を持った職人や事業者がいるので、そうした人たちと一緒にものをつくることも大切にしています。家具をつくることが、木を育てる人、木を加工する人、家具を販売する人など、地域のさまざまな仕事につながっていく。そうやって地場産業としての家具づくりを次の世代につないでいくことも、自分たちの仕事の役割だと感じています。

 

質問4)アカデミーに入学を決めたきっかけは何ですか?

決定的なきっかけがあったわけではないですが、大学生の頃から、漠然と「地域に貢献できることがしたい」「建築のような大きなものよりも、もう少し小さなものづくりがしたい」という思いがありました。

その後、実家に戻って家業に就く中で、これから自分が何をしたいのかを改めて考えるようになり、そこで興味を持ったのが木を使ったものづくりでした。
木という素材は、森や林業、製材など、地域とのつながりがとても強い素材です。そんな木を使って家具をつくってみたいと思うようになり、家具づくりを学べる場所を調べたときに見つけたのがアカデミーでした。

岐阜県内にも木工を学べるところはありましたが、アカデミーでは、川上から川下までの流れの中で木工を学べることを1番の魅力を感じました。また家具制作だけでなく、さまざまな木工に触れられること、2年間かけてじっくり学べること、実技と講義のバランスが良いことなども決め手になりました。

 

質問5)アカデミーの学生生活で印象に残ったことは?

特に印象に残っているのは、グリーンウッドワークの活動です。

グリーンウッドワークは、入学前には特別興味を持っていたわけではなかったのですが、入学後はすっかりはまってしまいました。グリーンウッドワークとは、身近な木から生活の道具を刃物などを使って自分の手でつくる木工のこと。
木や森のことを学ぶアカデミーとの親和性が高く、学んでいることが全部つながっている感覚がありました。
もちろん、純粋に自分の手でものをつくること自体も楽しかったのですが、グリーンウッドワークには、身近な木を活用するという点で、地域材の利用や森林資源の活用といった地域の取り組みとも結びつけやすいところに魅力を感じていました。
また、完成したものを自分たちの暮らしの中で使うところまで含めて、森と暮らしの距離を近づけられることも魅力だと思います。

今はまだ会社の仕事として取り組めているわけではありませんが、自分たちの活動や目指している方向との相性は良いと思っているので、今後、何らかの形で取り入れていければと思っています。

 

質問6)今の仕事をしていく上でのモットー、若い人へのメッセージは?

アカデミーで過ごした2年間は、どの瞬間を切り取っても、とても濃い時間だったと感じています。授業や実習だけでなく、そこで出会った人や、いろいろな考え方に触れたことが、今の自分の考え方や働き方、暮らし方にも大きく影響しています。
これから進路を考える人には、いろいろな人に出会ってみてほしいなと思います。
自分とは違う考え方や価値観持つ人や異なる分野の人に触れることで、思いがけず興味のあることが見つかったり、自分がやりたいことを考えるきっかけになったりすると思います。
アカデミーで過ごす時間も、そこで出会う人も、その先の自分につながっていくものだと思うので、ぜひたくさんの人や経験に触れてみてほしいです。

 

木と暮らしの制作所
https://kitokurashi.com/