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2026年06月01日(月)

【アニュアルレポート2025】ドイツの木工職業訓練校視察と今後の連携の可能性

岐阜県立森林文化アカデミー活動報告より

ドイツの木工職業訓練校視察と今後の連携の可能性

教授 久津輪 雅

目的

 森林文化アカデミーとドイツ・バーテンビュルテンベルク州のロッテンブルク林業大学とは2014年度に連携協定を締結して以降、10年以上にわたり林業専攻、森林環境教育専攻、木造建築専攻の教員や学生が交流を続けている。しかし先方には木工の授業科目がないことから、これまで木工専攻では交流を実施してこなかった。2025年10月にアカデミーで日独連携シンポジウムが開催され、カイザー学長が来日した際にそのことを話すと、「バーテンビュルテンベルク州には木工の職業教育機関がいくつもあるので、それらの学校との連携の可能性を探りに来ては」とのお誘いをいただいた。そこで3月に訪独し、ロッテンブルク林業大学、同州内の3つの職業訓練機関、および木工関連企業数社を訪問し意見交換を行った。
 2026年度以降、木工専攻とこれらの教育機関との交流を開始するとともに、岐阜県内の木工業界にも情報を共有し、将来的により広域での連携の可能性をも探ることを目的とする。


概要

 ドイツでは組織的に職業教育が行われている。まず10歳までの初等学校卒業時に高等教育コースか職業教育コースかに分かれ、後者は15歳までの中等学校を終えると16歳頃から職業訓練機関で学び始める。1年目は学校で講義と実習を受けるが、2〜3年目は週3日半は企業で働き、残り1日半は学校で学ぶという仕組みになっている。これをデュアルシステムと呼び、木工に限らずあらゆる職種で採用されている。最短で18歳ほどで卒業し、就職となる。そこからさらに起業を目指してマイスターの称号や国家認定資格を取るための1〜2年間のコースで学ぶ学生もいる。

 私が訪問したテュービンゲンとカールスルーエの2校はそのような職業訓練校だった。特にカールスルーエでは、州内の木工の職業訓練校の教員を指導する立場の教員であるフォルカー・クロス先生に大変親切に対応していただき、1年生の手工具の実習を見学したほか、3年生の学生に英語でミニ授業もさせてもらった。ドイツの職業訓練校はどこも設備が充実していて、ドイツメーカーの大型木工機械が並んでいる。コンピューター制御の大型CNCルーターもある。現場では手工具の出番はほとんどなさそうだが、1年生たちはノミや鉋を手に道具箱を製作していたので、教員たちに理由を聞いてみた。「どんなに機械が発達したとしても、手道具で木を削る感覚が分かっていないと、機械を使いこなせない」とのこと。これは私たちがアカデミーで手工具の実習を行う理由と同じだったので、心強く感じた。

 ミニ授業では森林文化アカデミー木工専攻の紹介をして、特に2年生が弁当箱を10個製作する「商品化」の実習について説明した。その際、ドイツの学生たちが使っている弁当箱を机の上に出して見せてもらったところ、すべてプラスチック製や金属製だった。日本では今も木製弁当箱が人気であり、学生にとってはやりがいのあるテーマであることを伝えると、とても興味深そうに聞いてくれた。ドイツでは木工といっても日常生活で使う小物の需要はあまりなさそうで、学校での実習は家具や建具などやや大型のものが多いようだ。

 このカールスルーエの学校では最近までロシアの学校と交流があり、保育園の家具を合同でデザイン・製作し贈呈するような実習も行っていたそうだが、ウクライナとの戦争のため中止されている。そのような事情から、そして豊かな木工文化を持つ日本への関心からも、ぜひ交流をしたいという話があった。

 一方、ロッテンブルク林業大学では興味深い活動が行われていた。地元の中等学校の教師からの提案で、毎週1回生徒たちが同大学にやってきて、森や工房で実習を受けるのだという。同大学の教授たちが持ち回りで先生になり、学生有志がサポートする。中等学校では比較的豊かな家庭の子供は私立のカトリック系の学校へ行き、そうでない家庭や親が外国出身の子供などは公立の学校に集まるのだという。公立学校では通常の授業が成立しにくくなることもあり、思い切って教室の外で学ぶ機会を設けているそうだ。私が見学した時は林業のセバスチャン・ハイン教授が担当で、1時間目は森でトウヒの苗を植え、2時間目はナラの丸太を見ながら材積を計算するという授業だった。アカデミーでもmorinosで行っている「森で算数」の中学生版というところだろうか。

 このプロジェクトを発案した中等学校の教師と話していると、アカデミーで実践しているグリーンウッドワークに大変興味を持ってくれた。グリーンウッドワークについてはドイツ各地で聞いてみたが、ハウス・デス・ヴァルデスのような森林環境教育施設では行われているものの、日本や英米、北欧諸国ほど浸透していない。このことから、ドイツには木工を学びに行くだけでなく、日本からグリーンウッドワークを提供しに行くという交流もあり得ると感じている。

 

教員からのメッセージ

 私自身イギリスで家具職人として5年間勤務したほか、アメリカやスウェーデンの木工家たちと交流がありますが、短期間でも海外の木工に触れることで視野が広がるとともに、自国の木工文化の独自性を再認識することになります。学生にとって得るものは少なくないと思うので、ぜひ実現させたいと考えています。また、アカデミーとの交流にとどまらず、高山の木工教育機関や木工業界とドイツとの橋渡しができればとも思います。

 

ドイツ・カールスルーエ職業学校の訓練の様子

写真1 手工具を使って道具箱を作るカールスルーエの学校の1年生

▼活動期間

2026年3月

 

▼連携団体

ロッテンブルク林業大学

テュービンゲン職業学校

ビーベラハ木造建築教育センター

カールスルーエ ハインリヒ・ヒュプシュ・スクール職業学校

 

▼活動成果発表

森林文化アカデミー他にて、2026年度中に報告会を実施予定

 

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