【アニュアルレポート2025】造園木の木材利用 -木材利用のための技術的課題-
准教授 吉野安里、後藤里花(美濃市地域おこし協力隊)
背景と目的
ある学校の校庭の桜が老朽化し、伐採することになった。長年親しまれてきた桜を、木工の材料としての活用を検討することになった。校庭や街路樹などの造園木は用材として育林施業されていない。造園木を木材利用するための技術的課題の抽出を目的に、天然乾燥の予備的な試験を実施することになった。
概要
【樹形的な特徴】
直径50cm程度、長さ1m程度の素材に、樹木は玉切られた。質量は約100㎏程度である(写真‐1)。人力のみでの軽トラックへの運搬は困難であった。転がすには不安定な樹幹の形状であり、作業の安全性や効率性の上からも、運搬方法 (器具の使用や方法)を十分に検討する必要があることがわかった。
校庭の桜であるため、芯腐れや枝わかれ、樹幹の曲がり、樹心の偏りなどを有しているのが通常である。家具用材には使用できない部分を多いが、小木工には利用の可能性がある。枝分かれした材は、利用には不利であるが、意匠的な面白さもある。本報告では、意匠的な価値は扱わず、木工家や消費者の判断にゆだねることにする。
【製材】
径級や素材の形状に応じて、適宜58㎜厚と38㎜厚の板に製材した。製材は、1)広い材幅となるように採材する、2)枝分かれした形を残す、3)なるべく樹芯を挽き割る、という方針のもとに、製材を行った。
【天然乾燥】
天然乾燥を2025年6月17日から2026年2月19日までの219日間実施し、試験材の質量と割れの長さを測定した(写真‐2、図-1)。乾燥試験終了後に全乾法により全乾質量を求めた。全乾質量と測定時の質量から測定時の含水率を算出した。天然乾燥は、30mmの桟木をはさみながら、試験材を積み重ねた。約300㎏のおもりを搭載した場合と搭載しない場合の条件とに2分した。おもりを搭載する目的は、乾燥時に発生する割れを低減できるかを確認することにある。
生材時には含水率は65~80%であったが、約30日後には半分以下にまで低下した。その後、厚さ38mm方が58㎜より乾燥がすすんでいたが、60日を超えると、両者の含水率はほぼ20%であった。120日経過以降は、両者ともに含水率は20%を切った状態で乾燥は停滞気味で、ほぼ平衡状態になった。219日後では日本の気候値平衡含水率である15%には達していなかった。家具用材としては、やや乾燥不足(乾燥時間不足)である。おもりの有無は、乾燥速度に大きな影響を与えていなかった。測定結果をもとに、経過日数と含水率との関係について回帰式へのあてはめを行った。あてはめ具合を示す決定係数は0.93以上と高い結果が得られた。

【割れの発生状況】
材の割れは、歩留まりに直接影響する。グラフからも明らかなように、急激に乾燥が進んでいる状態では、木口割れの伸展も大きい(図―2)。おもりの効果は、幅ぞりの抑圧を期待したものであったが、おもりがなくても、そりは利用上支障のあるレベルにはならなかった。主な割れの発生状況を写真-3に示す。植栽木は、用材のための育林施業が行われていない。それゆえに、材の性質は、個々の生育状況の影響が大きい。同一の板の中でも、生育時の応力が複雑に交錯し、乾燥時に応力が開放されると考えられる。

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教員からのメッセージ
造園木を木工用に利用するのは不向きです。乾燥前に、乾燥後の板の形質変化が想定できれば、合理的に素材を利用することが可能です。しかし個性豊富な素材から一般性を見出すのは困難ですから、多くの試験事例から学ぶことになるでしょう。最適な玉切りや製材木取り、材を短尺に使う、板を髄で分割するなど、歩留まりを向上するための工夫、何日間乾燥が必要かなどを検討しました。さらには急激な乾燥を防ぐための工夫も必要性を感じました。通常の用材の利用以上に経験的、技術的な知識と知恵の両立を図ることになります。一方、造園木の製材品ならではの木理のおもしろさも満喫できます。校庭の桜の木がどんな木工製品になるのか楽しみです。この試験は、森林文化アカデミーと美濃市地域おこし協力隊との連携により実施しました。