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2021年09月04日(土)

閉め切り冷房ナシのmorinosの夏~夏の実測その4~(morinos建築秘話63)

前回は最も暑かった夏の実測データを紹介しましたが、閉め切った室内で冷房を使用していない時の素のままのmorinosの性能はどの程度なのでしょうか。

8月でスタッフも含めてmorinosが完全休館日は3日間しかありません。morinosの皆さん、働きすぎで無人の良いデータがとれません(笑)

そのうち最も暑かった8月11日(水)を含む8月10日(火)から12日(木)の3日間を見てみます。

まずは外気温と日照時間、電力消費量(エアコンの稼働時間)です。

青い実線がmorinos北側での実測値、青い点線が美濃気象観測所の値です。概ね同じ傾向を示しています。
黄色い棒グラフが日照時間を示しており、1時間毎のデータなので。右のメモリで1まで伸びているとその時間は晴れていたということになります。
緑の面グラフが電力消費量(右目盛り)を示しています。

8月11日(水)の様子を見てみると、外気温は夕方に30.3℃(実測値)、31.9℃(気象庁アメダス)と、ものすごく暑くはないけど夏らしい暑い日です。
日照時間から午前中は晴、午後から少し雲が出て日照時間が少なくなっていますが、一日中太陽が出ていた感じです。快晴時の西日の影響も見たかったのですが、少し雲があったようです。

電力消費量を見ると、11日は常に1時間当たり0.14kWh(2.24円/h)と換気やセキュリティなどの最低限の機器だけ稼働しています。
翌12日は2.00kWh弱(32円/h)まで増加していますので、エアコンを使用しています。
前日の10日は、午後から晴れてきて、電力消費も多くないため、少人数でゆるく活動していた感じでしょうか。西日の影響はこちらで少し確認できそうです。

では、上のグラフに、4カ所で計測した室温を重ねてみます。(下図)

一番下から、茶色が床下、黄色が足元、オレンジが腰高、赤が頭の高さです。
床下は25℃程度で安定しています。12日にぐっと23℃近くまで下がっているのはエアコン稼働の影響でしょう。

11日(水)の室内の様子です。
明け方6時が最も涼しく、足元から頭の高さまで安定して涼しい環境です。
足元25.2℃、腰高25.5℃、頭25.6℃です。
そこに日射が入ってきて、室温が上昇していきます。
10時の時点で足元26.4℃、腰高27.3℃、頭27.7℃です。
12時には足元27.4℃、腰高28.8℃、頭29.3℃と、さすがに暑くなってきました。この時間までは快晴で南からの日照です。次年度からは南面の緑化計画によって地表面反射が抑えられてマシになっていくと考えられます。
14時には足元28.4℃、腰高30.2℃、頭30.6℃です。2時間で1℃程度上昇中です。日照時間は半分くらいになってきましたが、このあたりから徐々に西日の影響が出てきます。
最も暑くなった16時には、足元29.0℃、腰高30.6℃、頭31.0℃まで上がりました。
ここから室温が下がっていき翌朝は27℃程度に落ち着きます。

断熱が強化されているため外気が暑くなっても明け方の涼しい空気は逃げにくいですが、ガラス面から日射が入ってくるため、さすがに閉め切っていると30℃を超えます。ですが外気温と同程度かそれ以下で、温室のような暑さにはなっていません。

morinosはなかなかの日射遮蔽ができているのではないかと考えます。

もし断熱が弱いと、屋根から熱が入ってきたり、日射遮蔽が不十分だと温室のように50℃を超えることがあります。古民家の調査に行くと、無断熱の2階は大変な暑い状況をよく体験します。

morinosの屋根も外部表面温度が80℃を超えますが、断熱によって室内に熱が入ってこないのです。
この状況は下記のブログを参照してください。

見えない熱を見る~夏の実測その1~(morinos建築秘話46)
断熱で熱を遮る~夏の実測その2~(morinos建築秘話47)

 

西日の影響を見るために前日10日(火)の夕方も見てみます。
10日(火)は昼から晴れてきて、ゆるーく冷房を使用しており1時間あたり0.4kWh程度(6.4円/h)で、17時には冷房を停止しています。

この日は14時頃から晴れてきて、室温の上昇がみられます。
14時には足元24.6℃、腰高26.3℃、頭27.7℃ですが、
16時には足元24.9℃、腰高27.5℃、頭29.3℃で最高室温を記録します。そこまでの暑さではないです。
これ以降は徐々に室温が下がってきます。

morinosは山間部ですが、西に向かって下がっている地形のため、日没時間が早いことは無く、この時期の日没は18:50頃。桜の木による日射遮蔽とエアコンの緩い運転が効いているのでしょう。

また、日射が出ても急激な温度上昇がみられないことから、室内仕上げで蓄冷されており、多少の熱では急激な室温上昇につながっていないことが考えられます。

准教授 辻充孝

morinos建築秘話の全話はHPから見れます。