活動報告
2020年09月03日(木)

断熱で熱を遮る~夏の実測その2~(morinos建築秘話47)

建築秘話46「見えない熱を見る~夏の実測その1~」に続き、今回は室内の夏の実測です。

室内と室外に温湿度データロガーを設置して、温湿度変化を記録しています。
下の写真のような表示装置をmorinos来場者の誰もが見れるように設置しました。

計5か所の温湿度が同時に見ることができます。

上の写真は2020年8月6日11:08の時点(エアコンはかけてます)で、
CH1は「北側の外部」30.1℃
CH2は「室内の頭の高さ」26.9℃
CH3は「室内の腰高さ」26.2℃
CH4は「室内の足元」25.0℃
CH5は「室内の床下」24.4℃
です。morinosに来たらカウンターに置いてますので、見てくださいね。

表示パネルの左上に24時間の変化グラフが表示されて、過去の変化が見れます。大きく変動しているのが外気温(一番上の折れ線グラフ)で、一日前は35.5℃まで上昇して、明け方に25℃くらいまで下がり、現在(11時)は30.1℃に上がってきつつあるのが読み取れます。一方の室温4か所はそれほど大きな変動はありません。

この夏場の気温変化は別の機会に紹介することにして、今回は前回の続きのサーモ画像でいろいろ検証してみます。

夏の実測その1」で屋根表面温度について紹介しましたので、同じ測定日の2020年8月18日の温湿度変化を確認してみます。

青い線が外気温です。(深夜から明け方はデータ欠損しています。)サーモ画像を撮影した13時の時点で、35.6℃(気象観測所の36.8℃より1℃程度低めです。)
最も暑くなったのが16時の38℃。暑さと日射量は蓄熱によって時間ピークがずれるのが普通です。

室内では、13時の時点で、頭の高さが33.9℃、腰高が32.9℃、足元が30.0℃と、高さ違いで4℃ほど温度差があります。
外気温とまで行きませんが室温が妙に高いですよね。
なんで???と思って、当日の写真を見てみると・・・・・この暑い中、開口部全開で、薄着以上の人(笑)もいます。何かのプログラムの途中でした。
(※このような室内環境は熱中症のリスクが相当高いので家では我慢しないで冷房してくださいね。)

各部の表面温度(下の写真)を見ていくと、西側のガラス窓(Bx1)は33.5℃、中央の左官壁(Bx2)は29.9℃、床(Bx3)は31.5℃です。

室温と比較すると、少し表面温度が低いです。特に中央の左官壁は3℃程度低くなっています。
直射日光が当たらないため、温度上昇が抑えられ、朝の低温を蓄熱し、湿気を吸った水蒸気が気化していることが要因かと推測します。

 

さて、ここからが本題です。

室内はほぼ外気と同等ということがわかりました。
では天井面はどうでしょうか。前回の建築秘話で書いた屋根表面の高温(66.2℃)が伝わってきているのでしょうか。

まずは、半屋外のピロティ部分の天井。外部なので屋根の断熱材は入っていません。

計測結果は、天井パネル面(写真の右側四角Bx1)の平均で 45.7℃。
黒いスリット内(写真中央の〇印Sp1)で 45.6℃ でした。

かなり熱いことがわかります。
冬の床暖房の設定温度が24~30℃程度。壁面に取り付けるパネルラジエーターでも40℃程度ですので、天井全面が暖房器具に変わっています。

つまり、建築秘話46で書いた屋根表面温度の66℃がスムーズに天井に伝わってきています。
スリット内はCLTパネル36㎜の熱抵抗と屋根通気層の性能だけ。熱貫流率U値は2.08W/㎡K。
屋根表面温度66℃、ピロティ外気温36.8℃で、天井面温度を計算すると42.3℃となり、ほぼ計算通りです。
天井部分は、ここに空気層と杉板15㎜がありますが、たいした性能ではないので、ほぼ同じ温度になってました。

では、室内はどうでしょうか。

屋根にはセルロースファイバー断熱材が240㎜とたっぷり入っています。(参照:熱貫流率U値と室内表面温度-焚き火の暖かさの秘密(morinos建築秘話22)

断熱があると、逆に熱が逃げないので夏は暑そうと考えるかもしれませんが本当にそうでしょうか。

天井パネルの温度(写真中央の四角Bx1)の平均値で 35.1℃。断熱がないピロティ部分より10℃も低いです。

断熱によって、屋根表面の熱い温度が伝わりにくくなっています。計算でも妥当性を確認してみます。

屋根表面温度66℃、室温33.9℃(頭の高さの実測値のため天井付近はもう少し高いと考えられる)で、天井面温度を計算すると34.5℃となり、ほぼ計算通りになっています。

一方で、LED照明をつけた部分(写真左上のSp1)は 60.0℃。LEDが省エネで発熱しにくいとはいえ、やっぱり熱くなります。

照明を点灯していないLED器具(写真右上のSp2)は 36.1℃、通常のスリット内(写真左下のSp3)は 35.4℃ と天井面とさほど違いはありません。

 

断熱が入ることで、天井面の温度を抑えることが実測でも確認できました。
つまり開口部から入ってくる熱をいかに抑えるかがポイントになります。

 

 

最後に外部環境を整えることについても書いておきます。

下のサーモ画像は、morinosの南の外観です。

外壁面の温度は建築秘話で紹介した通り40℃程度ですが、手前の真っ白になっているのが、砂利部分です。なんと57.7℃。熱い!!!

砂利は日射を吸収し続けて温度が上がりっぱなしのため、どんどん高温になってきます。
この熱い熱が再放射されたり、日射が反射して建物内に入ってきます。上部を外に倒したV字丸太の足元の方が温度が高いのはこのためです。

一方、下の写真は公園を撮影したサーモ画像です。

アスファルト部分(右下の赤い部分:スポット2)では62℃近くまで温度が上がっていますが、芝生では日なた(スポット3)でも43℃、日陰(スポット1)では35℃程度です。(この時の外気温は33℃程度)
植物は日射が当たっても、高温にならないための蒸散作用があり、葉の温度が上がりすぎない様になっています。

現在、morinosの外構計画が進んでいます。数年後には緑豊かになるはずです。
そうなると、今以上に良い環境で活動できることになります。

常に進化していくmorinosをお楽しみに。

准教授 辻充孝


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