活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2021年04月13日(火)

たのしく森を学べる家具。〜morinosの家具2〜(morinos建築秘話59)

morinosの家具は、morinosのために新しくデザインしてつくられたり、morinosにちょうどいいものをよく選んだりして、置かれています。

家具は居場所。というお話を、前に書かせてもらいました。
morinosは「すべての人のための森の入り口」というコンセプトで出来た建物。
どういう「居場所=家具」にしたら、みんなが嬉しくなるような、森の入り口にふさわしい場所になるのでしょうか?
今回は、その家具についてちょっと説明してみようと思います。

 

■メインの「大きな豆型テーブル」と「ナラのチェア」

【ミズナラ】の「大きな豆型テーブル」

この【ミズナラ】の豆型テーブルは、morinosのためにデザインした特別なテーブルです。

主にスタッフさんが仕事をするためのもので、持ち上げると動かすことが出来ます。
だから、この位置にないことも。

形は、ふたつの円がくっつこうとしているような、曲線を描いた天板です。
morinosは「働き方」も新しい形を目指しました。
決まった机があるのではなく、どこに座って仕事をしてもいい、フリーアクセスの職場です。

丸い形のテーブルは、四角いものと違い、どこ位置にも座ることが出来ます。
ここがポイントなのですが、1箇所くぼんだ部分がありますよね。
これは、造形イメージとして、テーブル側に引き寄せて来るような印象を与えます。
施設の入口にこのくぼみを向けていると、どうぞ、ウェルカム!という感じ。
スタッフさんたちと来館者の分け隔てをつくらないというmorinosの考え方に合っていますよね。

morinos豆型テーブルメモ

大きな円は、模造紙を広げて打ち合わせができる大きさになっています。
どこに座っても、できるだけテーブルの足が邪魔にならないように、スチールの足を2本と、大きな円柱の足で天板を支えるデザインです。
円柱の中に配線して、天板からコードを出せる仕掛けもあります。
フレキシブルで、機能的で、ウェルカムなデザインです。

椅子は【ナラ】。長く座るので「ざぐり」と言ってお尻の形に座面を削られたものを採用しています。
これは飛騨産業の既製品なのですが「あんまり主張しない形」を選んでいます。
建物も、絵も、音楽も、文章もそうですが、どこもかしこも目立たせてしまうと、騒がしくなって、窮屈で疲れる雰囲気になってしまいます。
この椅子は、色といい、座面や背もたれの薄さといい、足の細さといい、さりげなさを目指したデザインになっています。

morinosのナラのチェア

【ナラ】飛騨産業のダイニングチェア。長く座っていても疲れません。

 

■県産5樹種でつくった「みみ付きデスク」と「工作椅子」

morinosデスク1

【ホオ】

ヒノキのテーブル

【ヒノキ】

アベマキのテーブル

【アベマキ】

クリのテーブル

【クリ】

【カツラ】

5種類の県産材を使って「みみ付きデスク」「工作椅子」をつくりました。
みみ付きというのは、四辺のうち一つを、皮を剥いた木の表面のままにしているということです。
写真の手前側の辺ですね。
使うときは体に触れる部分なので、直線でなく木そのままの凸凹を感じてもらうことができます。

工作椅子は、横に倒すと低く座ることができて、小さなお子さんでも座ってもらえます。

このデスクか工作椅子、ちょっと持ち上げてみてください。驚くほど重さが違うんです。
「なんでこんなに重さが違うの!?」という質問は、この方にしてみましょう。
【「読む」植物図鑑】など著書で有名な、森の「生き字引」こと川尻秀樹さん。アカデミーの元教員&元副学長で、現在はmorinosスタッフです。

川尻先生

「アベマキにあいている虫食い穴」についても非常にわかりやすく解説してもらえます。

木と森への愛に溢れた丁寧な解説をしてもらえます。
こういう、プロフェッショナルがいるところもmorinosの大きな特徴です。

木のことを楽しく学びながら使える家具になりました。

 

■外がよく見えて冬は暖かい「南向きのカウンター」と「ナラのカウンターチェア」

【ヒノキ】一枚板のカウンター。コンセント付き。【ナラ】カウンターの高さに合わせたチェア。

南面には、「南向きのカウンター」「ナラのカウンターチェア」が並んでいます。
外であそぶ子どもを見ながらコーヒーを飲める、PCを持ってくれば仕事もできる、誰でも使える【ヒノキ】の一枚板カウンターです。

morinosカウンター持ち出し

カウンターの下に脚があると使いにくいので、スチールの持ち送りで支えています。
スチールが目立たないようにすると、カウンターが浮いて見えて、空間が軽やかになるので、スチールの縦桟は上手に隠しています。

椅子は、引くときにも軽く倒れにくいバランスで、さりげないデザインです。

さっと座って、さっと立ち上がって外に出れる。そういう気軽な居場所になりました。

 

 

いくつかのmorinosの家具について解説してみましたが、いかがだったでしょうか?
次は、ストーブ横のベンチや、カフェスペースのソファと本棚ついて解説します。

 

・建築秘話58:家具は居場所。〜morinosの家具1〜
・建築秘話61:お気に入りの場所をつくる家具。〜morinosの家具3〜

 

木造建築教員:松井匠