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2026年08月07日(金)

IAMASと2泊3日の合同合宿!「FbSのためのデザインキャンプ」

<2026.7.31–8.2> クリエーター科1年生の共通授業「FbSのためのデザインキャンプ」を、2泊3日で実施しました。

森林文化アカデミーが取り組むのは、持続可能な社会はどうつくるのか、という「正解のない問い」です。その問いに森林や森林文化からアプローチする考え方として「FbS(Forest based Solution)」を掲げています。

アカデミーの目指す「FbS」をより深く考えるため、今年からこれまであった科目の名称を変更し、新しい内容でスタートしました。

参加したのは、森林文化アカデミーのクリエーター科1年生9名と教員3名。
そして、大垣市の「情報科学芸術大学院大学」、通称「IAMAS(イアマス)」の修士1年生4名と教員3名です。

林業、森林環境教育、木工を学ぶアカデミー生と、情報科学や芸術、デザイン、メディア表現などを研究するIAMASのみなさんが混ざり合い、美濃市をフィールドに「デザイン思考」のプロセスを体験しました。

この授業のきっかけは、森林文化アカデミーの授業「コミュニティビジネス起業論」に、デザイン思考を取り入れ始めたことでした。

より実践的に学びたいと考え、IAMASでデザイン思考を用いた教育や研究に取り組む小林茂先生に相談。アカデミーの杉本先生、前野先生、私の3名が専攻を越えてつながり、小林先生と一緒に合同合宿を企画しました。

同じ岐阜県立の学校でありながら、学ぶ内容も、環境も、学生の得意分野も大きく異なります。

だからこそ、一緒に取り組むことで、自分たちだけでは見えなかったものが見えるのではないだろうか。
昨年度、小規模に始めた合同合宿を、今年度は「FbSのためのデザインキャンプ」として再構成しました。

 


合宿に先立つ7月28日には、アカデミー生が大垣市のIAMASを訪問。制作工房や撮影・録音スタジオなどを見学し、学生が昼夜を問わず研究や制作に取り組む環境に触れました。

IAMAS(イアマス)の見学

アカデミーには無い様々な施設に興味津々


そして今度は、IAMASのみなさんを森林文化アカデミーへ迎えます。
夏の暑さの中、森や川に囲まれたアカデミーを学生がご案内。

いよいよ、合同授業が始まりました。


Day−1 デザイン思考を、3日間で一回転させる

「デザイン思考」を体験する3日間の全体設計は、IAMASの小林茂(こばやし・しげる)先生が手がけられました。

IAMAS 小林茂先生

合宿の冒頭、小林先生から、3日間それぞれの内容と目標が示されます。

1日目: インタビューと分析。
2日目: デザインチャレンジからプロトタイピング
3日目: バリデーション

自分たちが考えていることは、だいたい間違っている ーー その前提で、新しいアイデアを試す時に、時間をかけて完成度を高めた後で間違いに気づくよりも、まず小さく形にして、早く確かめる、ことが有効になります。

デザイン思考では、正解を最初から持つのではなく、観察やディスカッション、試作を重ねながら、そもそもの問題や必要とされるものをスピーディに探っていきます。

この合宿では、その一連のプロセスを実際に体験します。当然、課題が次々と現れる、濃厚な日々となります。「IAMASでは、24時間体制で課題や研究を進めるのは日常です」というIAMAS学生のみなさんに、アカデミー生は早くも刺激を受けているようでした。


 

今回とりあげる問いは

森林文化アカデミーと美濃市がもっとつながるには

その背景には、学生たち自身が感じていた問題意識がありました。森林文化アカデミーは美濃市にありますが、市民からは「何をしている学校か分からない」「林業を学ぶ学校という印象が強い」と言われることがあります。一方、学生にとっても、美濃市が通学時に通り過ぎるだけの場所となり、地域の魅力や人々の活動を十分に知らないまま卒業する者も多いです。

今年の1年生が立てた問いについて、アカデミー卒業生で現在、美濃市の地域おこし協力隊である久野さんから、美濃市の説明がなされました。そして、久野さんの協力で、6名の美濃市の方々からヒアリングさせていただくことができました。

午後からは、3つのグループに分かれて、それぞれのヒアリング先に向かいます。IAMASのみなさんは、初めて美濃を訪れたという人がほとんど。まだ知らない美濃の様子をそこに住む人々から聞き、想像する時間となりました。

「住まい」をテーマにインクの中島さん(奥・右)と美濃市役所都市整備課の梅田さん(奥・左)からお話を伺う

道の駅にわかち茶屋で美濃市役所の加納さん(画面左・手前)と地域プロジェクトマネージャーの大谷さん(画面左・中央)から「教育」をテーマに伺う

アカデミー卒業生で美濃市で「カフェ灯屋」を営む西潟さんに美濃の暮らしを伺う

ヒアリングを終え、アカデミーへ戻った後は、聞いた内容を「完了相:歴史的認識」「完結相:メタ認識」「未完了相:主観的認識」という3つの相に分けて整理します。ヒアリングしたグループで、あらためて何を聞いたのか、何を観察したのかを確かめながら、シートを作成していきました。

同じ話を聞いても、どこに注目したかは人によって違います。事実と解釈を分けながら、自分たちがフィールドワークで見聞きしたものを捉え直していきました。


Day−2 問いを立て直す

2日目、学生たちはヒアリングチームを離れ、新たなデザインチームでの活動が始まりました。IAMASとアカデミーの学生が混ざり合った3チームに加え、今年は教員だけのチームも編成。計4チームで、それぞれデザインに取り組みます。

まず行ったのはデザインチャレンジです。

初日に掲げた「森林文化アカデミーと美濃市がもっとつながるには」という大きな問いを、そのまま解こうとはしません。「誰にとっての課題なのか」「どんな場面で起きていることなのか」を考え直し、より具体的な問いへと言い換えていきます。

その結果、4つのチームは、それぞれ異なる問いを設定しました。

Aグループ
森林文化アカデミーの学生が地域の人々(美濃市)と共に、モーニング文化を通じてコミュニケーションの場を形成するには

Bグループ
森林文化アカデミーの学生が美濃市で暮らしやすくするにはどうすればいいか。

Cグループ
森林文化アカデミーのファンを増やすにはどうすれば良いだろうか?

Dグループ(教員チーム)
森林文化アカデミーの現役学生の帰宅してからの生活を美濃市にもっと根付かせるためにはどうすればいいか?

同じテーマから始まっても、「誰に」「何を」問いかけるかが変わるだけで、見えてくる課題も、考えるべき未来も大きく変わっていきます。

その後は、「Who」と「When」を軸にマトリクスを作成し、組み合わせの中から着目したい場面を選び出します。

マトリクスを作成して交点を探る

さらに、一人ひとりがアイデアスケッチを描き、それぞれの発想を持ち寄って議論。アイデアを組み合わせながら、一つのプロトタイプへとまとめていきました。

アイデアを短時間で考え、スケッチにする

ここからは、一気に制作です。

森林文化アカデミーとIAMASの発想が重なり合い、葉っぱにレーザーで加工する、新しいアイデアも生まれました。
学生チームの中には遅くまで熱心に取り組むグループもありました。皆、ホンキです。

プロトタイプの制作


Day- 3 説明するのではなく、反応を見る

そして3日目はバリデーション。プロトタイプを持って、美濃のまちへ飛び出します。

各チームは、美濃市内で地域の方々にプロトタイプを見てもらい、その反応を確かめました。ここで重要なのは、「良い評価をもらうこと」ではありません。自分たちの考えと、相手が受け取った印象との間に、どんなギャップがあるのかを知ることです。

そのため、小林先生は最初に「プレゼンテーションではなく、自然な反応を見てください」と学生たちに伝えていました。

しかし、普段プレゼンテーションに慣れている学生ほど、つい説明したくなります。私が同行したチームでも、プロトタイプを見てもらっている間に詳しく説明してしまい、相手がどう感じたのかが見えなくなる場面がありました。

カフェ灯屋の西潟さんに説明する学生チーム

なぜ説明したくなるのか ーー それは、作成したプロトタイプが正しいのかという問いにもなります。
プロトタイプも作り直し、質問の仕方を変えて、もう一度まちへ行くチームもありました。

観光案内所で、IAMASの学生がヒアリングを担当

道の駅のスタンプ台にプロトタイプを置いて観察

限られた時間の中でも、「試して、直して、もう一度試す」というデザイン思考のプロセスを体験していました。


異なる専門性が混ざることで見えたもの

午後は3日間の締めくくりとなる報告会です。

報告会は完成したアイデアを競うものではありません。バリデーションを通しての気付きや学びを共有することで、参加者から新しい視点を得たり、他の参加者の気付きになったりといった、学びを生み出す時間です。

起こったこと、体験したことを報告する教員チーム

こうして3日間のデザインキャンプが終了しました。
最終のふりかえりでは、参加者から様々な思いが述べられました。

 「一人ではなく、仲間とつくる楽しさと心強さを感じた」

 「短時間で形にして反応を聞くことで、早く進化できることが分かった」

 「自分たちが特別だと思っていたものが、相手にはそう見えない。その感覚のギャップに気づいた」

 「IAMASの学生と一緒に取り組み、自分とは違うものの見方に触れられた」

一方で、

 「スピードについていくのが苦しかった」

 「フレームワークに従うことで、出しかけた意見が消えることもあった」

 「このアイデアが、今後どう扱われるのか気になる」

という率直な声もありました。

そうした感想を受け、小林先生は最後にこう話されました。

「デザイン思考は万能な方法ではありません。正解が分からないだけでなく、何が本当の問題なのかさえ分からない状況で、試しながら進むための一つの方法です。だからこそ、「分からない状態」に耐えながら進む力も必要になります」


「共創」が、新しい発想を生み出す

 

そして「正解のない問い」を解こうとする時には、これまでと違う全く新しいアプローチが必要、すなわち、イノベーションを起こす必要があると考えます。

しかし、こうした「正解のない問い」は、一人ではなかなか解くことができません。だからこそ必要なのが、自分とは異なる専門性や価値観を持つ人たちといっしょに考える「共創」が求められています。

今回のキャンプでは、IAMASと森林文化アカデミーという全く異なる学校が交わることで、学生にも教員にも新しい刺激が生まれていました。

そこには、小林先生による負荷の高いカリキュラム設計と、時間を徹底的に意識した進行がありました。

さらに今年は、教員チームも学生と同じ立場で本気で課題に取り組みました。学生たちは、教員が試行錯誤し、悩みながらプロトタイプを作る姿を間近で見ることになります。教える側・教わる側ではなく、一人の実践者として同じ問いに向き合う、そんな時間を共有することも、このキャンプならではの学びだったように思います。

忙しい3日間でしたが、その合間には、長良川鉄道で温泉へ出かけたり、美濃市民花火大会を学生のシェアハウスから一緒に眺めたりと、学校を越えた交流も自然に生まれていました。授業はここで一区切りですが、この出会いをきっかけに、新たな協働やプロジェクトへと発展していくことを期待しています。

長良川鉄道で温泉に向かう

美濃の町家で花火見学

協力いただいた久野さんをはじめ、美濃市のみなさま、本当にありがとうございました。
そして、IAMASの小林茂先生、アリーナ先生、萩原先生、参加してくださった学生のみなさん、ありがとうございました。
これからも、互いに学びの多い「共創共育」の場を一緒につくっていきたいです。

最後にIAMASのみなさんと集合写真撮影(写真提供: IAMAS 萩原先生)

<森林環境教育専攻 教員 小林(こばけん)>