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2020年08月13日(木)

高性能林業機械を運転する資格を取得しよう9(オリジナル横取り編)

スイングヤーダによる集材方法には、下図のように原木を上側に引き上げる「上げ荷」と下側に降ろす「下げ荷」がありますが、架設作業(集材するため搬器や滑車一式をセットすること)が容易にできることや作業の安全面から「上げ荷」集材が多く用いられ、集材距離も100m以内とすることが一般的です。

今回の実習では、「下げ荷」で集材距離も150m程となりましたが、これはアカデミー演習林の所々に硬い岩が露出し、作業道が山の上まで開設できず、機械が山に登れないことから、「下げ荷」集材となったものです。

今回のように長距離を「下げ荷」集材する場合には、いくつかの課題があります。

① 搬器を架設する作業に時間と労力がかかる。

② 距離が長いので集材に時間がかかる。

③ ワイヤを引き出して「横取り」する作業が困難になる。

授業実習なので、受講した学生も多く労力は十分にあったので①の課題はクリアできました。また、集材工程にある程度時間がかかっても運転の練習として必要であったり、2速走行も可能なので②の課題も大きな問題ではありませんでした。

問題は③の課題でした。小面積皆伐地の現場(下の写真)の端で立木を伐倒すると搬器が往復する場所まで引き込むための横取り距離は、約40mになります。立木の樹高は約20mとすれば、残り20m程は横取りが必要になります。

このため、荷掛けワイヤ(ホールライン)を引き出して倒した原木の所まで持って行くのですが、ワイヤを引き出そうとしても重くて簡単には引き出せないという③課題が発生してしまいます。

なぜなら、ワイヤの重量は1m当たり0.54kgなので、これが山腹に150m横たわれば総重量81kgになり、30度の斜面を使って引き上げようとしても少なくとも40.5kgを超える力でないとワイヤは上がってこない計算になります。実際には摩擦があるのでこれ以上の力が必要になりますが、一人で20mのワイヤを引き出し荷を掛けに行くことは極めて労働負荷の高い困難な作業になります。

そこで、あらかじめホールラインを出して山へ送り、横取りしたい地点で搬器を繋留させ、ホールラインを解いて伸ばし、伐倒木を集材する方法を考えたので紹介します。

先ず、荷降ろし場で予め横取りに必要な距離のホールラインを引き出し、これを30cm程度の直径に巻取り搬器に固定した紐に留め、インターロック状態でもホールラインが引き込まれないよう、あらかじめ準備した引き込み防止用クランパーを搬器取り付け、ホールラインを固定し荷掛場へ送ります。 

搬器が山に到着したら、繋留用クランパー(上側)でホールバックラインを固定し、搬器を空中に繋留します。

次に、ホールラインを十分に緩め、さらに人力で山側へラインを引き上げて緩ませ、引き込み防止用クランパーをホールラインから外します。この時、ホールラインは摩擦で山腹に横たわり安定した状態になるので、巻いたワイヤを解いても自重で山を滑り落ちることはありません。そのまま荷掛け位置まで持って行き伐倒木に掛けることができます。

この方法で、横取り作業が順調に運び、林内に散らばった原木をすべて集材することができました。

数年前から、いろいろな方法を試行錯誤し、ようやく実践で使える方法を見つけ、上手く集材できるようになりました。搬器にホールラインを出してセットする荷降ろし場では、少し手間を要しますがワイヤを巻くことに慣れれば、横取りが楽にできるので、全体の集材時間を短縮することができます。

このような条件下でスイングヤーダを用いた集材する場合に有効な方法になるのではないかと考えます。来年度以降も同様な「下げ荷」集材が想定されるので、この方法を試していこうと思います。

林業専攻教員 池戸秀隆