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2018年01月25日(木)

野生動物捕獲の覚悟を決める

 クリエーター科2年生の『野生動物捕獲実習(担当:伊佐治教授)』、今回のメイン講師は猪鹿庁の興善健太さん。それに郡上市大和町のベテラン猟師にして、ぎふジビエ登録店も経営されている坪井富男さんにも指導を受け、ニホンジカ一頭を購入させてもらい、学生自身が自己消費するための解体、精肉加工を学びました。

なお、以下の写真には掲示が憚られるものもありますので、自己責任でご覧いただきますようお願い致します。

 

 

 この授業は、決して趣味の狩猟や無意味な殺生、単に肉食のためのものではありません。地域で問題となる獣害対策、林業上の問題にどのように対処し、最終的に捕獲したニホンジカなどの命を尊重して、最後まで覚悟を決めて最後まで処理するための訓練です。本来、今回は山林内で巻狩りをする予定でしたが、大雪のため急遽、解体作業となりました。

 最初にニホンジカの足を関節部分で切り落とす体験から始まりです。

 

 

 ニホンジカの皮下脂肪は少ないのですが、毛皮を傷つけず、なおかつ背ロースやモモ肉を傷つけないよう細心の注意を払って毛皮を剥いでいきます。

 このとき、どこにナイフを入れるのか、どのように力を入れるのかを興膳さんや坪井さんからアドバイスを受けます。最も難しいのは、関節の切断位置の見極めで、これを失敗すると商品価値があるはずの肉が台無しになってしまいます。

 

 この個体はあばら骨に弾の跡がありましたが、収穫する肉にはほとんど影響がありませんでした。肋骨部分にはスペアリブにできるような肉もありません。

 

 学生が初めて処理したニホンジカのヒレ(仏: filet)肉です。

 ここが一番おいしく、一番高価な部位なのですが、あまりうまくとれちません。

 

 

 次に採取したのが背ロースです。これは結構なボリュームで、筋膜も無いので、調理しやすい部位です。下の写真は片側一本分を3つに切り分けました。

 

 

 ヒレ肉2本と背ロース1本分は昼食として頂きました。なお、画面のフライパンの中にある白いものはツキノワグマの背脂です。

 ヒレ肉は歯が無くても食べられるほど柔らかく、最高に美味しい。背ロースも低温で焼くと、柔らかく、臭みも無く、学生の箸が止まりません。

 

 

 坪井さんのご厚意で、保存してあったツキノワグマの肉もごちそうになりました。肉は赤味が強く歯ごたえがあり、脂はあっさりして、繊維質。臭みも少なく、これまた学生大喜びで頂きました。

 

 

 午後からはモモ肉などの精肉です。モモ肉はたくさん肉が取れるものの、筋膜が多く、相当細かく切り分けないと製品になりません。

 

 

 

 最後は坪井さんが肉を真空パック、急速冷凍して下さったので、それを持ち帰ることにしたのです。

 学生によっては「ニホンジカに見つめられているようで何か気になる」とも言っていましたが、捕獲した命を無駄にするのではなく、最後まで責任をもって処理する覚悟がなければ、獣害対策や狩猟に向き合えないことを実体験できる時間を過ごしました。興膳さん、坪井さん、ありがとう御座いました。

 

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。