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2018年10月28日(日)

第3期ぎふ木育指導員養成講座 ⑤が行われました!

第3期ぎふ木育指導員養成講座の5回目の講座「自然と人とのかかわり、人と人とのつながり」~ぎふの山の現状と課題を考える~が10月13日(土)に行われました。

天候も良く、絶好の山歩き日和となった当日。まずは松井先生の挨拶から始まりました。
「皆さんにとっては、今日は“ハレ”の日だと思う。日常は“ケ”と言う。山に登ること、森や木に触れること、それが特別な日(ハレの日)ではないようにするのが皆さんの役目だと記憶にとどめてほしい。」

そして本日の講師である伊藤栄一講師から導入の挨拶をいただきました。


良い山とは何かということを考えて、いろいろと突き詰めていってほしい。そうすると、森との付き合い方が見えてくると思う。どういう付き合い方が正解かはわからないが、皆さん自身の中に思いを作っていってほしい。」

その後、ラジオ体操をして、ヘルメットなど装備を整えた後、いよいよアカデミーの演習林での研修開始です。演習林入り口でまずは地図を確認します。自分たちが今どこにいるかを確認することは重要です。

午前は人工林の見学から。歩道、林道と通って中に入っていきます。
「森林の形は温度と水分条件によって、パターンが変わってくる。そして、もうひとつは人の手が加わっているかいないか。岐阜県では、ほとんどの森林になんらかの人の手が入っているといってよい。」
進んでいくとアカデミーの学生が伐採施業をしている場所に到着しました。ここで伊藤講師から受講生に質問がされました。

「日本の人工林のイメージは?どうしてスギ、ヒノキばかりなのか。」
この質問に対し、受講生も一生懸命考えて回答されます。それを聞いた伊藤講師からは、
「皆さん、森に関心がある人の回答だなと感じました。これが全く知らない人に聞くと下草の生えていない森のほうが良いと答える。」
「戦中、戦後頃から木材需要が高まり、社会的後押しがあって人工林化が進められた。だが、さぁ切れるぞとなった時には、外国から木材を買えばよいという状況になり、多くの木が残ってしまっている。今はパリ協定など環境問題意識から、森林の公益的機能のためにと言われている。そういった社会の状況で、日本の森林状況は大きく変わってきている。」
「そうは言っても、林業家たちはより良い木を作って売りたいという思いの方が強い。今私が研修で、健全で、社会の変化に対応できるような森づくりをしておきましょうと説明している。」

スギやヒノキの成長の仕方や、獣害、土壌についても説明をいただきました。また林業における施業(木を育てたり、伐ったりする作業)についても実物を前にして解説がありました。
「かつては枝打ちをして節が出ないようにしていたし、それが高く売れたが、今の住宅では隠れてしまうし、節があったほうが本物らしくて良いという若者もいる。消費者のニーズが変わってきており、その変化に対応しなければならない。」
「効率的な施業を国は推進しているが、いろいろなことに対応できる林業があってもいいと思う。その両輪が回ってこそ、今後の林業が回っていくのだと思う。多様な森を作ることが大事であると伝えていく事も、木育の役割になると思われる。

人工林の見学を一通りして、午前の講義は終わりました。

午後の講義は里山をテーマにした講義です。広葉樹が生えたなだらかな坂に移動し、一息つきながら話が始まりました。受講生に里山のイメージを聞いた後、伊藤講師からお話がありました。


「里山には位置的、生態的、システム的な概念がある。人による利用があって、里山が作られてきたが、それらがなければ里山としての形は崩れてしまう。今の社会にかつての里山と呼ばれるものはないのではないか。
「今、里山を保全する活動などが行われていても、山から取ってきたものは使い道がなく、ごみになってしまう。これはかつての里山とは違う。木育や森のようちえんなどのように、人が使う目的があって、その上で里山化するのは良いとは思うが。現代人として意味がある行いの中で、森林の管理などができるように有効活用を考えてほしい。」
森に対して、人に関心をもってもらう、有益に思ってもらう、そういう変化をもたらす事に重要になるのが木育であると思う。動機づけになるようにしてほしい。
以上のようなお話をいただき、演習林を後にしました。

講義室に戻り、最後は恒例の木育カフェが行われました。
人工林の講義を受けての感想は、
「人が手を加えたもの=いい印象はあまりないというイメージだったが、木材の畑、人と山との共存場所と伺って、そういう場所も良いなと思った。考え方が広がった。」
「山に入ってみて、造林してからの時間と手間を知り、人の時間軸と木の時間軸が違うと改めて感じた。その時必要なものでも、時間の経過で価値と活用が違うと知った。」

一方、里山に対する感想には、
「人が使い続けるシステム作りがなければ里山は持続できない。今後何ができるのだろう。」
「里山の利用方法を考えなければ、何とかしなければと思っていても誰もやらない。私たちが魅力を教えていかなければならない。」
「昔は人が入り里山が活きていた。活用されなくなり、獣害などの問題を感じた。」
といった事が話されました。
それらを受けて最後に、現代にあった利用方法について話し合っていただいたところ、
「都会に住む人はコンクリートに囲まれて生活している。そういう自然欠乏症の人に対して、里山は有効活用できるのではないか。子供から大人まで、森に関われるようにしたい。」
「今の子供の遠足でテーマパークに行ってしまうが、それを森の中で一日ゆったりと過ごすイベントなどにしたらどうか。」
「デイサービスでは折り紙をするなど受け身のことが多い。痴ほう予防のためだが、つまらない話でなく、またお年寄りを子ども扱いしないようにしたい。お年寄りから教えられるものがいい。森でのレクリエーションを通して、お年寄りの尊厳を守れるような活動をしていきたい。」
という意見をいただきました。

最後に伊藤講師から、
「こういう講義を通して、私も刺激を受けている。まずは、今回私が話したことを疑って、森についてより詳しく知ってほしい。」

というお話をいただき、今回の講座は終了しました。
次回は11月17日に実施されます。

クリエーター科2年  若林 知伸

受講者の皆さんには、事前に

『あなたがイメージする「人工林とは?」「里山とは?」』という宿題が出ており、今回の演習林での研修に臨んでもらいました。

冒頭で講師の伊藤さんが問題提起された「良い山とは何か?の問いと同様、普段会話してる当たり前に通り過ぎる言葉を、現場を前にして問いかける大切な時間となりました。

この連続講座も残す所後2回となりました。受講者の皆さんの学びの深まりを実感できます。

講座主任 松井 勅尚