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2017年10月31日(火)

第5回「ぎふ木育指導員養成講座」が開催されました!

10月21日(土)、第5回「ぎふ木育指導員養成講座」が開催されました。今回は、岐阜県郡上市にて、初の野外実習です。「山から里、里から街へのつながり。〜自然と人とのかかわり、人と人とのつながり〜」と題し、人を通じて木と暮らしのつながりを考えていただく講座です。林業の現場を知ってもらい、伐採された木がどのように加工され、加工されたものがどのように私たちの生活に根付いてきていたかを知って、考えていただくことが狙いです。

 

午前は、林業の現場を見ていただくため、郡上市の森に入りました。講師は郡上エネルギー株式会社社長の小森胤樹さん。小森さんは林業会社に勤められたのち、地域の木材を使用して環境や経済活動に貢献するために「株式会社 郡上割り箸」を立ち上げられました。さらに地域のエネルギー資源(木質バイオマス)を有効活用するために、郡上エネルギー株式会社も立ち上げられ、現職に就任されております。

まず、松井先生から開会の挨拶がされたのち、郡上市の市有林に向かいました。今回は市のご厚意で人工林の見学が実現いたしました。明るい林道を通って山の中に入ると、樹高の異なる樹が混在する一帯(複層林)に到着しました。小森さんからは、この森の施業の方針(どうして複層林になったか)と今どんな状態であるかということを解説していただきました。また、伐採する樹の選び方なども教えていただきました。そして、実際に伐採作業を実演していただきました。今回は、チェーンソー切断後、ロープで引っ張って倒す形式が取られました。まず、小森さんがチェーンソーで受け口、追い口を作ったのち、合図と共に受講生とスタッフでロープを引きました。

掛け声で一斉に引くと、めきめきと音を立てて樹が倒れます。このまま一気に倒れるかと思いきや、なんと下方にあった別の樹に寄りかかってしまいました。「かかり木」という状態です。実は、これは小森さんが意図的に見せてくださったそうで、伐採の際にとても気を使うシーンです。というのもこのかかり木の状態が林業作業の中でも事故につながりやすい状況だからです。危険が無いようロープは予め安全な方向に設置されていたのでした。皆で引っ張り続けること5分ほど、ついに倒すことができました。無事倒すことができ、皆さん盛り上がっておりました。さらに小森さんにより、小径木の現場での実際の倒し方を実演していただいたのち、場所を移動し、今度は皆伐後の植林地を見学しました。そこでは、鹿等の獣害対策のためにツリーシェルターを設置していました。ツリーシェルターが立ち並ぶ光景を目に焼きつけ、森を後にしました。

続いて、古今伝授の里フィールドミュージアムに移動し、お昼休憩をとりながら、小森さんの講義が開催されました。講義では、まずいくつかの森の写真が映し出され、気持ちがいい森か気持ちの悪い森かということが受講生に質問されました。その後、日本の人工林の現状についてお話いただきました。世界でも3本の指に入るほど、高い森林率を誇る日本が、その資源を有効活用できていないということが、データを持って解説されました。特に人工林の面積は変わっていませんが、材積は戦後大きく増えているということが強調されておりました。その森林資源をどう活用するのか、小森さんの取り組みを教えていただきました。樹を伐ることが、未だに悪いことだと誤解されている場面もあり、地域の森林資源が有効活用されていない、そんな状況を打破したいという小森さんの思いが伝わる講義でした。貴重なお話をいただき、本当にありがとうございました。

さて次の部は、伐採された樹が人々に製品となって渡るまでの現場と、渡ったものがどのように使われてきたかという歴史を学ぶ実習です。2グループに分かれて、ものづくりの現場として有限会社イチシマ様と、木工製品が使われてきた歴史を学ぶ場として明宝民俗資料館へと見学に行きました。

 

【有限会社イチシマ見学】

郡上市でおもちゃの木工製品を製造していらっしゃる有限会社イチシマの工場を見学させていただきました。代表取締役の細川資宏さんとご子息の細川詠司さんにご挨拶をしたのち、お二方のご案内で、早速工場の内部へ。まずは大型機械のNCルーターです。コンピューター制御により、0.01ミリ単位での切削が可能である機械を見学させていただきました。丸い棒に、溝を掘る工程を実演していただき、ものの数分で12個の部品が出来上がる様子が見られました。次に、少し工程を戻って、板材の荒木取り(大まかに材を形取ること)の場所へ。そこには、ブナやカエデなどの材がストックされていました。木取りの方法だけでなく、材の購入ルートや、選定理由なども伺いました。販売における最近の顧客事情や苦労している点なども伺うことができ、製品の生産から販売におけるつながりを聞くことができました。次に、荒木取りが終わった材の加工場を見学させていただきました。そこには、大型から小型まであらゆる機械がずらりと並んでいました。実際に機械が動き、加工する場面を見させていただくことができ、受講生のみならずスタッフもかじりついて見てしまうほど、面白い機械がありました。

その中で、機械で加工できる材とそうでない材についてのご説明や、すでに機械メーカーが廃業しており、自分たちでメンテナンスしていかなければならないことなどを伺うことができました。そして、自社で独自に治具を開発し、作られている木ネジや、塗装、組み立て、検品の現場を見せていただき、一通り工場内の見学を終了しました。

最後に、社長から国産材を使用することに対する思いや、ご子息から今後の会社の展望や思いなどを伺い、本日の見学は終了しました。実際に製品を作っている現場を見て、製品作りの難しさの一端を知ることができたと思います。有限会社イチシマの皆様、貴重なお時間を頂き、本当にありがとうございました。

クリエーター科1年 若林 知伸

 

【明宝歴史民俗資料館見学】

物を大切に管理するということの生徒の実践活動のために、と昭和39年、奥明宝中学校民俗資料館として設立された資料館は、規模拡大にともなう村立化を経て、昭和52年に現在の旧小学校跡に移転してきました。今年で築80年となる木造校舎はその際、改築されたとはいえ建物そのものが「歴史民俗」の名にふさわしい雰囲気を有しています。縄文遺跡や鉱山跡があり、木地師が出入りし、製糸業も盛んであった等、様々な歴史的背景のある土地柄ゆえ、館内には興味深い民具類が所狭しとあふれています(国の重要有形民俗文化財約3600点をはじめ約47000点の資料を所蔵)。

文化財保護協会の末武東さんに解説をお願いし、地元・郡上市民のクリーエーター科2年 鷲見菜月さんによるワークシートの課題に沿って館内を巡ります。課題は3つ

①気に入った道具や気になった道具の写真を撮ろう(個人ワーク)

②針葉樹で作られた道具を探そう(グループワーク)

③一押しの針葉樹の道具を見せ合おう(②のつづき)

班ごとにひとつ針葉樹の道具を選び簡単なプレゼンテーションをする、という最終テーマに向け、まずは個人で、その後3班の班単位で館内を見て回りましたが、関心を引くものが多く、また、不明点を御解説くださる末武さんのお話に聞き入り、ついつい足が止まります。それでも3班3様の選りすぐりの1点を発表、昔の人の知恵にふれ感嘆の声があがります。最終班には「材は広葉樹ではないのか」との疑いがかかり審議入りする一幕も。前野先生・末武さんによる明快な解説のもと晴れて針葉樹と判定され、一同拍手の盛り上がりをみせました。

木の持つ性質から適材適所の活かされ方を知り、伝える手法を学んだ前回プログラムを踏まえ、午前のスギ伐採現場を目にしてのちの資料館学習は、ふるくから人々の暮らしのそばにあった針葉樹について、実際にどのように使われ進化・発展してきたのか、具体的に「道具」という観点から理解を深めるのに格好の場といえました。立ち木から材となり実用品として活かされた木についての学びは、木で作られた多様なものの「形」にふれることにもなり、次回以降のプログラムにも有効につながっていきそうです。

クリエーター科1年 柴田 眞規子

「百聞は一見に如かず」今回は、この言葉がぴったりでしょう。

次回は、岐阜県図書館へ研修会場を映し、「岐阜の伝統工芸と郷土玩具」と言うテーマで開催します。

「第2期ぎふ木育指導員養成講座(全8回)」講座主任:松井 勅尚