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2019年09月10日(火)

第3回 森林経営管理制度運用にかかる実務者研修会を開催しました。

 第3回森林管理制度運用にかかる実務担当者研修を7月12日に開催しました。

 

最初に、ワークショップで講師を務めるのは、FOREST MEDIA WORKS株式会社 代表取締役 楢崎 達也氏です。今回のワークショップは、6/6に林野庁森林利用課 室木係長から説明があった森林経営管理法に基づく意向調査の具体的なやり方について議論をしました。

意向調査を行うにあたり、一度に市町村内全域に対して意向調査を実施しても、その後の経営管理権集積計画策定などの際に対応が難しくなってしまう可能性があります。

このため、林野庁が示された手順と取り組みのポイントを踏まえながら、市町村として意向調査実施対象地域の優先順位づけを行い、この結果をいかに効率よく活用するのかが重要となります。

この点を中心に、また意向調査を実施するに当たって想定できる課題について、市町村担当者がグループに分かれ、議論をしていただき、それぞれのグループ内で出された意見を発表していただきました。

この議論のなかで出された意見は、大きく次の3つがありました。

  • 意向調査をいきなり実施せずに実施するエリアの抽出のための優先順位づけをまず行うべき。
  • 意向調査のやり方の仕組みをまずは構築すべき(誰が作るのかが課題)。
  • 意向調査の結果を想定して事前に対応方針を決めておくべき。

今回のワークショップで出された意見が、今後、市町村が行う意向調査の一助になればと思いました。

 次に中津川市林業振興課 内木 宏人統括主幹(兼)対策官から平成30年度から現在までの中津川市の取組に関する事例紹介をしていただきました。

 直前のワークショップの議論では、意向調査をする際に効率的な調査ができ、効果が上がりそうなエリアを抽出して行うべきという意見が出されていました。

 しかし、中津川市では、森林環境譲与税すべてを活用しても年間に市内の25%の面積しか間伐ができないため、経営管理権集積計画を策定するエリアを絞らねばなりません。

 平成30年度に、中津川市では、森林簿、登記簿、地番参考図から林地台帳を作成する際に、森林簿と登記簿の情報がどれほど食い違っているのかを分析しました。分析の目的は、法的な森林所有者の確度が高いエリアを選んで意向調査をすることにより、調査後の混乱リスクをできるだけ低減させるためです。

 分析をしてみた結果として、不動産登記法で定められていない地目が存在したり、1筆に2つの地目が記載されていたり、登記情報がない地番がある などの想定されない課題があることがわかりました。また、森林簿と登記簿上の森林所有者が整合している場合であっても亡くなってしまっている場合は、所有者不在(相続権者が発生)となってしまうこともわかりました。森林経営管理法の手続きでは、手続きが進むと真の森林所有者であることを確認する場面が出てきますので、その時の対応方法を考えておく必要があることがわかりました。

 最後に講義をされたのは、宇都宮大学に社会人学生として通っておられる品川尚子弁護士です。

 品川弁護士は、近年は森林や木材産業に関する案件を専門とされている法律のエキスパートです。

 森林経営管理法が検討されていた段階から市町村向けの研修をされたりして活動されてきました。

 今回の講義では、市町村に森林管理を積極的かつ効率的に進めてもらうために、意向調査が進み集積計画を策定する際に必ず必要となる所有者確認の適切なやり方について教えてもらいました。キーワードは『デスクワークでできる所有者確認』です。

 本日の講義では、所有者本人が亡くなっている場合の相続人の探し方の基本を教えていただき、実際に栃木県で不明になっているとされた所有者探索の具体的事例を紹介してもらいました。

 こういった法的な処理になれない私たちは正直難しく感じましたが、品川先生曰く、「慣れる」そうです。後半は、会場から所有者確認においての質問、過去に発生したトラブルに関する質問が多く出され、それらに対して品川先生に回答してもらいました。

 法律の専門家の間では、法的に認められる所有者の確認は常識的な作業とのことですが、林業分野の私たちにとっては、未知の分野です。ここにきてあらためて、所有権に関する法律的知識の重要性を感じることができたと同時に、今回の研修を通じて、弁護士さんを身近に感じることができ、非常に有意義な研修となりました。