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2018年06月12日(火)

太田猛彦先生、『森林飽和』を解説

常識を次々と覆す画期的な国土論『森林飽和』

 岐阜県立森林文化アカデミーのクリエーター科1年・2年共通科目「森林文化論」。

 今回はNHKブックの『森林飽和』の著者、太田猛彦東京大学名誉教授をお迎えして名著にかかるお話をして頂きました。

 先生は砂防工学や治山工学がご専門で、「森林飽和」「農林水産業の技術者倫理」「森林の機能と評価」「宮川環境読本」「水の事典」「森と水と土の本」「渓流生態砂防学」「水と土をはぐくむ森」などの書籍も出版されています。

 『森林飽和』の書籍の帯にある「常識を覆す画期的な国土論」と記され、森林にまつわる幅広い視野で森林について解説されました。

  最初に「日本の森林の現状をどう見るか」と題して、」3.11東北大震災以降の台風や土石流、大水害、地震、九州北部豪雨災害などと、森林をめぐる最近の動向について、特にSDGsについて詳しく解説されました。

 例えば「人工林は天然林に比べて特に災害に弱い」などという誤解を解く必要がある。一方で、森林の能力を超える自然災害が存在することも知るべきである。と語りかけられました。

 

 なぜ、流木災害が多くなったのか

    1.森林が成長した。 2.豪雨の規模が大きくなった。

 森林が成長して大きくなったことで、浅い表層崩壊は減少した。 しかし大規模豪雨で厚い表層崩壊が多数発生。表層崩壊は必ず流木を発生させる。2017年の九州北部豪雨は土砂災害であって、その土砂の上に流木が発生した。

 

 表層崩壊の発生には地質が大きく影響している。花崗岩類や片岩類の順に発生しやすい。

 

 地球規模で考えると、様々な分野が「不安定な領域を超えてしまっている」

 プラネタリー・バウンダリーの考え方で表現された現在の地球の状況は

 それは窒素やリン、絶滅の速度も、不安定な領域はより一層多く、気候変動や土地利用の変化もあることをふりかえるべき。

 

 ・様々な生き物がバランスを取って、繋がって生きている状態

 ・生物多様性の保全の意味・・・・環境の変化への適応を保障 バイオミミクリー、多面的機能発揮の源泉

 

 農耕社会と現代社会(工業化社会)を比較すると、

  農耕社会は「地上資源に依存した社会」、工業化社会は「地下資源に依存した社会

                    → だからこそ、大量の廃棄物が発生する。

 

 石炭類の利用、鉄鉱石の利用、石灰岩の利用、石油の利用

    こうした地下資源の利用は、地球の共進化の方向に逆行している

 最後に、10人の学生が太田先生の『森林飽和』に、サインをしていただくサイン会も盛況であったのです。

太田先生、今回も思慮深い内容のお話、誠にありがとう御座いました。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。