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2023年06月02日(金)

ドイツ林業についてのリモートゼミを実施しました

クリエーター科林業専攻では、林業、森林に関する講義や実習のほかに、林業専攻ゼミというゼミを行なっています。ここでは2年生の課題研究の進捗の確認や情報共有を行なっていますが、今回、ドイツのロッテンブルグ林業大学(以下、ロッテン大)の在学生の方を講師として、リモートゼミを行いましたので報告します。

講師はロッテン大2年生の小原光力さん。アカデミーOB(18期)でもある小原さんはアカデミー在学中の2019年にロッテン大に留学し、その後留学中の研究成果を「ドイツBW州小規模私有林経営における森林官の役割」と題してアカデミーの課題研究にまとめ、卒業しました。卒業時にはロッテン大での経験や大学連携における功績から学長賞を受賞されました。アカデミー卒業後、再びドイツに渡航しロッテン大に入学し今に至っていますが、その間にもアカデミーとの連携において様々な架け橋的役割をしてもらっています。

 

今回のゼミは5/19,29と2回に分けて実施しました。ロッテン大での学び、ドイツの森林利用の歴史、造林の考え方、気候変動への対処などを話していただきました。放課後の1コマをあてていたのですが、活発な質問や議論となり、90分では到底収まらず…

ゼミの内容

リモートゼミの様子2

森林利用の歴史の中では、シュバルツバルトにおける針葉樹の択伐林施業や木材流送に関する話題が印象的でした。木材流送については日本でもかつて行われていたのと類似した「管流し」や「筏流し」が19世紀まで長く行われていたようで、南ドイツではライン川を通して木材をオランダまで運んでいたそうです。行きは木材を組んだ筏で移動するわけですが、帰りは徒歩で帰っていたとのことで当時の苦労が偲ばれます。

またドイツでは過去の森林荒廃の歴史を受けて、林業の持続可能性の概念が古くから意識されているということや、一つの森林に多面的機能全てを保有させようという考え方(統合)が重視されているという話が印象的でした。

さらにドイツトウヒPicea abiesは気候変動の影響によりキクイムシ被害が深刻で将来的には造林木としては成り立たなくなるであろうとのことでした。樹種ごとに気温上昇シナリオにあわせたシミュレーションがなされており、トウヒ、モミ類などの針葉樹は大きな影響を受けることが懸念されているとのこと。単層林、単一樹種の純林よりも複層林、混交林が良く、恒続林と言われる近自然的林業を目指しているようです。

それ以外にもドイツにおける林業助成制度や森林病虫害の話題などでも盛り上がり、充実したゼミとなりました。

 

小原さんは9月からはドイツを離れ、オーストリアの林業事業体で調査・研修をされるとのことです。年明けには日本での調査・研修のため一旦帰国されるとのことでその時に対面でのゼミをしてもらうことになっています。(教員 津田)