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2020年09月28日(月)

令和2年度 第11回 岐阜県地域森林監理士養成研修を開催しました。

1.  森林生態系に関する基礎知識      9:00〜11:00

  講師:岐阜大学 応用生物科学部  准教授 安藤 正規

 

 植生は生態系内で常に変化しており、遷移は『すごろく』に例えられたりします。遷移のサイコロには『攪乱』と『進む』の2つの目しかありません。

 撹乱がなければ、一定のプロセス(草本⇒陽樹⇒陰樹)で遷移し、『攪乱』が起こると植生が戻ったり、道が変わったり、道が変わることによって極相も変わることもあり、繰り返し食害が起こり、草地の状態が維持されると、サバンナ(草原)のようになり、森林には遷移しにくいということを学びました。

 また、植物は動くことができないため、虫や動物に対する防御戦略として、毒を蓄えたり(化学防御)、トゲなどをはやしたり(物理防御)、食べられても旺盛に再生する(採食耐性)ものがあります。しかし、ニホンジカは、毒がある植物は食べないが、食べにくい植物は、好みの優先順位は低くても、他に食べるものがなくなれば、食べるようになることも学びました。

講義風景1

 

2.森林被害防除の対策例      11:00〜12:00

 講師:森林文化アカデミー  教授 伊佐治 彰祥

 講師である伊佐治教授は、獣害対策を行う場合、『どの動物による被害なのか』を特定してから加害獣に対する対策を講じることが非常に重要であると説明しました。

 また、野生動物の食害は、口・歯の形状の違いにより食害状況等が異なり、研修生は、加害動物を特定するときの勘どころについて学ぶことができたと思います。

講義風景2

 

3.野生動物管理に関する基本概念      13:00〜15:00

 講師:岐阜大学 応用生物科学部  教授 鈴木 正嗣

 

 鳥獣保護法は、野生動物が減少していた時期に制定され、高度経済成長期以降に野生動物が急激な増加に転じた後もそのままになっていた。この傾向は、欧米先進国でも共通する状況でした。

 同じ獣害でも『農業被害』と『林業被害』では、被害状況が異なり、被害防止策も大きく異なります。

 林業被害への対策は、農業被害と比較して、非常に難しいと説明がありました。

 特にニホンジカは4−5年毎に倍増しています。このことは、30年前から専門の学者は、ニホンジカの爆発的な増加を予想していました。

 そして、ニホンジカの増加に伴う個体数調整の必要性に関する国との長年の議論と近年のニホンジカによる被害の増加の結果、平成25年12月に『鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律』として成就しました。

 この法律から、被害を及ぼす個体を調整することが非常に重要であり、政策として、個体数管理を行うためには、趣味として行う『ハンター』にのみに頼るのではなく、生態学に精通した個体数管理を実践できる『専門的・職能的捕獲技術者』の育成が必要であることを学びました。

講義風景3

4.現地視察(森林被害防除対策)      15:00〜16:00

 講師:森林文化アカデミー  教授 伊佐治 彰祥

 

 午前中の講義に続いて、伊佐治教授は、演習林内で、クマハギ防止テープ、シカ柵、ツリーシェルター各種を設置し、獣害対策を行っている現場を紹介しました。

 シカ柵設置現場では、ニホンジカに侵入され、植栽木の食害により、ニホンジカの不嗜好性植物が目立っていることを確認しました。

現地研修状況

 研修受講生は、今回の現地研修を通じて、午前中の座学で学んだ内容を演習林内で確認することができ、非常に有意義な研修であったと思います。