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2018年06月20日(水)

「第3期ぎふ木育指導員養成講座が始まりました!」

6月10日、いよいよ第3期の『ぎふ木育指導員養成講座』全7回が始まりました。この連続講座は、2020年にオープンする、都市部における『ぎふ木育』の総合拠点である「岐阜県立木のふれあい館(仮称)」及び岐阜県内に100カ所設置中の「ぎふ木育ひろば」でのプレーヤーの人材育成講座であります。今年も募集期間が短いにもかかわらず約3倍という多くの応募者の中から選ばれた10名の方が受講をスタートしました。以下、スタッフのクリエーター科2年 若林知伸君がレポートしてくれました。

講座主任 松井 勅尚

第一回の講義は「ぎふ木育指導員スタートアップ1 〜ぎふ木育30年ビジョン  ぎふ木育概論」と題し、ぎふ木育の概論講座から始まりました。

オリエンテーションが行われた後、本学の松井勅尚教授より最初の講義が行われました。松井教授からはまず、「この講座は仲間を作って行くこと、一緒に場所を作って行くことを心がけてください。」とメッセージをいただきました。
続けて、アイスブレイクとして自己紹介タイムが設けられました。受講生、スタッフ一同、席を離れ、1体1での自己紹介を行いました。テーマは自分の好きな木は? 皆さま、名前と出身と木の話でまずは少し緊張がほぐれたようです。

緊張がほぐれたののも束の間、続いて木についてのテストが行われました。いきなりのテストに皆様少し慌てたようです。

 

そしていよいよ松井教授のお話が始まりました。


「自然と人をつなぐものは、、、?自分の経験でしか話せないので私なりに話していきたい。」
「ぎふ木育のキーワードの一つはダイバーシティ。だから違っていていい。でも大きな方向は皆一緒。」
「もう一つのキーワードはCSV(共通価値の創造)。関係ないと思う対立間の中にも、共通のものがあるはずだと考えることが大事。」
そういったキーワードからぎふの木育を捉えたのち、日本人の思考、そして今の社会の課題について触れていきました。
「日本人の選択のくせ・・・それは、四季の移ろいの中から生み出されたもの。」
「・・・例えば結界石。サインが分かっていれば、わきまえられるというのはすごいことだと思いませんか。」
「目の前に使える木があるのに、海外から6割以上も木を輸入して使っている。」
「小学生が、人の命を大事にできていない。」
「両方に共通しているのは、人と森・・・生き物の命を大事にできていないこと。」
そして、木育が成り立ってきた経緯について説明がされました。
「ぎふ木育は、わざわざ”森”という言葉を入れている。それだけ森に対する思いが強い。」
そして木育指導員が活躍する場についても触れられました。
「意思を育てる場にしてほしい。それは自分らしく生きて行けているのかということを問いかける場でもある。」
最後に「みなさんなりの木育とは何かを見つけてほしい。」
という言葉で、午前の講義は締めくくられました。

午後の講義に入る前にお昼休みとなりました。しかし、今回の講座も第一回から盛りだくさんです。お昼休みには、樹木の葉クイズが出題されました。今朝スタッフが取りに行った10種類の樹木の葉が並べられ、合わせて木材サンプルも並べられました。この葉は何の木の葉か、この板材は何の木か、お昼休みもうかうかと休憩していられません。

そして嬉しいサプライズがもう一つ。なんと受講生のお一方が朴葉寿司を持ってきてくださったのです。これにはスタッフもびっくり。ありがたく、そして美味しく頂戴しました。ありがとうございました。お陰で?松井教授から、「ホオノキはどの板材?」とのクイズが追加されましたが・・・

 

さて午後は森のなりわい研究所の伊藤栄一氏から講義がありました。


「森とお付き合いするということ」という題で、先の森林側からの木育という立場でのお話をしていただきました。まずは伊藤氏なりの木育に対する考えが話されました。
「地球上で人の行いの影響は大きい。地球で生きていく生物として、何を大事にするかを考えることが必要。」
「林業の最大の担い手は広義で言えば買い手である。消費者という間接的な担い手としてどうこれまで関わってきただろうか。」
そして、伊藤氏が木育という活動に関わるきっかけとなった生い立ちについて話が続きます。
「図鑑で名前を調べ、覚えているとほめられた。それが生き物が好きになったきっかけ。」
「大学時代にカモシカの調査をしていたが、それは実はヒノキの食害の調査だった。このことから、対立的な環境の問題になっていることがわかった。」
「林業として安定供給を考えると人工林は無難である。しかし、里山からみると単一林であり扱いづらい。やったことだけが正解ではなく、常に違った視点から見てほしい。」
さらに、森との付き合い方、自然との向き合い方についても解説がありました。
「インパクトに対する耐性が強いのが日本の森である。いろいろなことをやってみようというのができる。」
「木を伐らないと植えられない。森づくりのはじめは伐採である。」
「自然は必ずしも自然とはいえない。しかし、人が関わった中にも豊かな生態系があり、適度に使うことが必ずしも自然破壊につながるわけではない。」
「人の欲望は止められない。そういった部分は“祟り”でコントロールしてよい。ある程度の方向性をみなで共有しながら、人智が及ぶ範囲をコントロールすることが大事。」
最後に伊藤氏からのメッセージとして、
「森や木を学ぶことはまずはきっかけなのではないか。効率主義から一歩引いて、判断するためのものさしを磨くことを大事にしてほしい。」
とあり、講義は締めくくられました。

最後の講義は、岐阜県木育推進室室長の藤掛雅洋氏より、ぎふ木育30年ビジョンについてのお話でした。

ぎふ木育30年ビジョンの中身について触れ、
「人と自然との関係性、行政の政治のような視点で整理してしまうと方向性を誤ってしまう。」
「皆さんにとっては、バイブルではなく、考えるきっかけとしてみてほしい。」
と解説がありました。
そして、藤掛室長からも同じように、
「皆さんなりの木育を考えてほしい。連続講座の最後に発表をしていただく。」
と課題発表があった後で、考えていく視点として3つのキーワードについて話がありました。
「生活の中での自然との関係性を見直すことが、本来大事なのではないか。」
「東京へ行くという目的は一緒だが、行きかたは様々という考え方として多様性を捉えてほしい。」
「自己肯定感を支える土壌としての自己有用感の希薄さが問題。」
そのようなキーワードを踏まえて
「指導員になってほしいが、指導員に成り下がることはならないでください。」
という厳しいメッセージとともに、「木のふれあい館(仮称)」などの説明をし、講義は終わりました。

最後に、ふりかえりとして、木育カフェが実施されました。
1つのテーマについて、グループになって話していただくという時間を3回行いました。今回は、とても堅いカシの木を磨きながらの「木育カフェ」。それぞれの講義の感想と全体としての感想について話していただきました。

 

受講生からは、
「受講をとても楽しみにしていた。すぐに活かせるフィールドはまだないが、私が感じた楽しかったという思いを知ってもらえるように取り組みたい。」
「指導員として個人だけのものではなく、発信していけるようにという気持ちがより強まった。」
「好きな木はなに?という自己紹介を兼ねての問いかけが、自分を見直すきっかけになった。」

という感想をいただきました。

初回は講義とWS中心でしたが、無事終えることができました。受講生の皆様もやる気に満ち溢れていらっしゃるようで、今後の講座が楽しみです。
次回は6月30日にスタートアップ2を実施します。

クリエーター科2年 若林知伸