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2026年08月10日(月)

【アニュアルレポート2025】岐阜県産ヒノキにおける乾燥技術のさらなる向上を目指して

【目的】

 樹心(髄)を有する製材(以下、心持ち材)は、乾燥時に割れが生じやすい。これを防ぐ技術として、2000年代以降、高温セット(乾燥初期に、高温・低湿度で乾燥を行い、表面割れの発生を抑制する処理)を用いた人工乾燥法(高温乾燥)が普及している。すでに、国内の主要針葉樹材においては、高温セットを用いた人工乾燥時のタイムスケジュール(乾燥スケジュール)について、標準的なマニュアル1)が作成されている。

 岐阜県を代表する針葉樹種であるヒノキについては、高温セットにより表面割れの抑制が比較的容易に行えるほか、熱負荷による強度や耐朽性の低下もほとんどないとされている。しかし、「東濃檜」のようなブランドを冠するヒノキ材においては、色合いや香りの変化を忌避して高温乾燥を行わない場合も少なくない。今年度の教員研究では、「できるだけ色合いの変化を抑えたヒノキの乾燥スケジュール」の開発を目指し、その基礎データを収集した。

[参考文献]1)「安全・安心な乾燥材生産技術の開発」研究グループ:安心・安全な乾燥材の生産・利用マニュアル (2012).

 

【概要】

 人工乾燥時の「色合いの変化」を抑えるには、高温セット時の乾球温度を下げることのほかに、処理時間を短縮することが考えられる。しかし、極端に短い処理時間でどの程度の表面割れの抑制効果が得られるのかを検証した例はごく少ない。そこで、今年度の研究ではごく短時間の高温セットを行い、「表面割れ」と高温セット前後の材表面の「色差」の測定を行った。併せて、高温セット前の製材の水分状態(含水率)が表面割れに与える影響について検証した。

  試験体(製材)には、ヒノキ心持ち正角材40本(演習林内より伐採、径級18~22cm、長さ4m、曲がりは最大矢高25mm以内)を用い、2条件の短時間高温セット(標準的な高温セット1)の処理時間の1/2(高温セット条件:A)および1/4(高温セット条件:B))を実施した(表1写真1)。高温セット前後において、含水率および材表面の色(明度・彩度)を測定するとともに、表面割れ(割れ長さ)を評価した(写真2)。また、初期含水率(乾燥前含水率)と表面割れの関係について整理・解析を行った。

写真1 蒸気式乾燥機による高温セット(窯入れ作業の様子)

 

表1 検討した短時間の高温セット条件

 

 測定の結果、極端に短時間の高温セットであっても、約半数の試験体において、表面割れはほぼ抑制された(図1)。材色の変化は(一般的な高温乾燥1)に比べて)小さい傾向を示した(写真3図2) 。また、特に表面の初期含水率が低い材ほど表面割れが大きくなる傾向が示唆された(図3) 。実務においては、慣例的に人工乾燥前に前処理として製材に散水を行うことがあるが(写真4)、今後はこうした前処理の効果についても検証が必要であると考えられる。

 なお、以上について、学会発表にて成果を発信した(石原亘、田中健斗:ヒノキ心持ち正角材における短時間の高温セットによる表面割れの抑制効果,第76回日本木材学会大会,研究発表要旨集,E17-P1-07 (2026).)。

 

写真2 高温セットを行ったヒノキの「表面割れ」の測定

 

図1 各試験体(製材)における高温セット後の表面割れの長さ
注:1)表面割れは、木口からの割れと、それ以外(材面の割れ)に分けて集計した
   2)木口はシリコン樹脂で被覆の上、高温セットを行った

 

写真3 高温セット後の材色

 

図2 色差および色彩の測定結果

 

図3 表面割れと初期含水率の関係

 

写真4 実務で慣例的に行われている人工乾燥前の散水(写真提供:東濃ひのき製品流通協同組合)

 

【教員からメッセージ】

 私は、前職(北海道立総合研究機構・林産試験場)において、主に「カラマツ」「トドマツ」といった寒冷地に生育する針葉樹を対象に研究をしていました。岐阜の地に来て最も驚いたのは、演習林で伐採された「ヒノキ」材の色合いの美しさです(もちろん、「カラマツ」「トドマツ」もそれぞれ個性があって、愛着のある樹種ではありますが)。この「ヒノキ」の美しさを最大限に活かす乾燥技術(乾燥スケジュール)の開発を目指し、岐阜県森林研究所の協力も得ながら、今年度は基礎的な研究に取り組みました。今年度に得られた成果はファーストステップにすぎませんので、これからも地元企業や全国の研究機関と意見交換を行いながら、研究を進めていきたいと考えています。

 

木造建築専攻 講師 石原 亘