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2026年05月01日(金)

自力建設2026テーマ「育苗用実験温室」

26年度の自力建設が始まりました。

自力建設は毎年、先輩学生が学内全体にアンケートをとって、アカデミーに必要となる建築をテーマを設定しています。3月に卒業した24期建築専攻の先輩たちから後輩へのプレゼントという形です。

今年度のテーマは「育苗用実験温室」。

将来の日本の森を気候変動から守るための、最前線の研究拠点を作るという狙いが込められています。

演習林に植林する苗は、アカデミーで育てています。

プランターで1年かけて育てた苗を畑に移植しさらに1年かけて育てています。高温になる美濃市では畑の夏の水やりが大変。一日忘れると枯れてしまうこともあります。
1年300~400本程度の植林とすると、2年分で計800本も常に管理することになります。

他にも、コンテナ苗や広葉樹の苗も育てたりと様々な苗を管理しています。

また、演習林では鹿やウサギの獣害もあり、せっかく植林した苗を食べられてしまうこともあり、背の高さまで育てて食害されないようにした大苗の植林の可能性も検討したり、気候変動による高温化に対応できる樹種の検討など、苗ひとつとっても様々な可能性が見えてきます。

そこで、今年度のテーマは、「育苗用実験温室」です。

早速、木造建築専攻1年生と計画予定地であるフォレストラボ東側の敷地を見に行きました。現在もこの場所でコンテナ苗や広葉樹の苗を育てています。

今年の木造建築専攻1年生は6名。

もちろん苗のことは考えたことがありませんが、まずはファーストインプレッションで計画案を考えてみます。

計画を初期段階で考えることで、計画地で何を読み取ったのか、何が分かっていないのかなど、今の立ち位置が明確になります。

30分ほどの短時間設計で考えた計画案が学生から6案+教員から2案が出そろいました。作業台を中心に円形に配置したり、多層化したり、現状の課題を整理したりと、それぞれ面白い視点で考え始めています。

当然、何が理解できていないのか、注意点は何かなど、課題も見えてきました。

夕方には、想定施主である塩田先生、中森先生に、具体的な活用内容のインタビューを行いました。

塩田先生のインタビューでは、苗木生産の過程、ドイツでの気候変動に対する対応の話、実が食べられる気になる木、周辺の育苗施設の参考事例など、興味深い話を聞くことができました。

施主である中森先生からは、現在の水やりの苦労だけでなく、コンテナ苗や広葉樹など、多様化する育苗の最前線の課題を伺いました。

育苗の現状の課題や施設に求めたい機能、3種に育苗状況(マルチキャビティコンテナ苗、セルコンテナ苗、挿し木用の育苗箱)、広葉樹の育苗の可能性など、実際の設計に必要な条件を聞くことができました。

(マルチキャビティコンテナ苗:特殊な容器を使った最新の育て方)

予算150万円という限られた条件の中で、いかに「自動散水」や「温度コントロール」といった機能を盛り込むか。しかも、高温多湿な温室環境下で、いかに木造建築を腐らせずに守り抜くか。

単なる「苗置き場」ではない、アカデミーの知見が詰まった「実験建築」としての腕の見せ所です。

特に、湿気を好む苗木と、湿気を嫌う木造建築。この矛盾をどう解くかが、今年の学生たちの最大の関門になりそうです。

代表設計者を決めるプロポーザルコンペは6/1(月)です。
どのような計画案が出てくるか楽しみですね。

木造建築教員 辻 充孝

課題文------------------------------

■自力建設テーマ
 気候変動の進行により、森林環境を取り巻く条件は大きく変化しつつある。これに対応するためには、将来の環境条件に耐えうる樹種の探求や、生育速度の比較実験を通じた知見の蓄積が不可欠である。同時に、苗木の樹種同定能力を育成する教育環境の整備も重要となっている。
そこで、今年度の自力建設テーマを 「育苗用実験温室」 とする。
提案にあたっては、針葉樹・広葉樹の双方に対応できることを前提とし、十分な育苗スペースと、作業動線を確保した作業スペースが必要である。
設備面では、年間を通じた温度コントロールを可能にする仕組みを備えること。さらに、水やり作業の負担軽減のため、自動散水設備の導入についても要望が上がっている。
高温多湿環境での利用が想定されるため、木材の腐朽や蟻害に対する劣化対策の検討は不可欠である。
関係者へのヒアリングを行い、課題の抽出と調整を進めながら、森林文化アカデミーらしい実験性・教育性を備えた建物となるよう、提案をまとめてほしい。

■必要機能
・苗木の育成に必要な散水設備(無人で散水できると尚良い)
・室温や日差しを制御可能な環境装置
・苗の移動に不自由がない出入り口の確保
・実験に合わせたフレキシブルな空間の可変性

■想定施主
(主):中森さつき、(副):塩田 昌弘

■主な想定利用者
林業専攻、エンジニア科の学生ならびに教員

■予算
150万円(予定)以内(学内から算出される木材は除く)

■木材

計画にあたって事前に準備している木材を用いること。

■計画予定地
フォレストラボ東側