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2025年12月22日(月)

里山の課題を解決するために会社をつくる(里山利活用実習 最終回)

<2026.12.19> クリエーター科1年・共通科目の「里山利活用実習」。今年最後の授業は、美濃加茂市蜂屋地区で実施しました。共通科目なので、林業、森林環境教育、木族建築、木工と他分野の学生が一同に学びます。多様な視点で学びあえるのが、アカデミーのとても素晴らしい特徴です。

講師は、自身の住む里山で、2023 年に「(株)やまのはたへ」を設立された酒向一旭さん。10年以上勤めた美濃加茂市役所を辞め、会社を起業されました。

ロードキルされたタヌキを説明する(株)やまのはたへ 代表 酒向一旭さん

まずは酒向さんのフィールドとなっている里山を巡ります。酒向さんはここで生まれ育ちました。

酒向さんの住む地域は「蜂屋累層」と呼ばれる火山活動でできた地層が特徴

集落の人たちと一緒に、竹林整備を行い、広葉樹の若い森を徐々に広げています。その森は、「森のようちえん」の活動場所や、こどもたちの遊び場になっています。

体験イベントで間伐を行った森

畑、実のなる木や植物、きのこのホダ木、ビオトープとなる池、間伐した木材、薪などなど、歩くと人々が利用している、たくさんの資源が目に入ります。そして、整備のために伐採した竹は、チップにして桜を植える土壌になっているそうです。里山の循環に、無駄がありません。

空輸用ネットをリサイクルした遊び場

体験用の自然農でつくる畑。ビオトープのための池を作成中

集落にある家も、里山の大切な資源。増えてきた空き家は会社で購入もしており、シェアハウスにコンバートしていくとのことです。

森のようちえんの園舎も空き家をリフォームしたもの

酒向さんが住む、そして職場ともなる里山を一周したあと、里山を活用した事業についてお話をいただきました。

「(株)やまのはたへ」の主な事業は、次の4つとのことです。
①農家: 耕作放棄地を再生し、無農薬・無肥料の米や野菜を栽培。
②木こり: 冬場の収入源として倒木処理や竹藪整備を行う。
③猟師: 獣害対策としてイノシシや鹿を駆除し、その命を食肉や加工品として無駄なくいただく。
④自然体験: 子どもたちが年間を通して田植えから餅つきまで関わるプログラムを実施。

そのいずれもが、逆算的な事業計画から入っていないとのこと。自分が住む地域の課題を解決しようと動いているうちに、次々と事業になっていったと酒向さん。

「草刈りなどお金にならないが必要な「仕事」と、収入を得る「稼ぎ」があります。その両立が不可欠だと考えます。その中で、あえて厳密な事業計画を立てず、日々の実践の中で生まれる「偶発性」が大事だ、ということがわかってきました。一見無駄に思える活動も、やり続けることで予期せぬ発見や新しいビジネスモデルにつながる可能性があり、それ自体が戦略となりうる、今はそう考えています」

もともと、里山は人が暮らすために自然に関わり続けることでつくられてきた「生態系」です。それは、「お金にする」というだけではない、自分たちの暮らしを支えている自然との共生の姿があったはずです。

この授業のタイトルは「里山利活用実習」。でも、「里山」をなんのために「利活用」するのか?
郷愁を誘うノスタルジーでも、経済合理性だけでもない、これからの「人と自然の関わり方」を考える森林文化アカデミーで学ぶ者にに必要な大切な視点を、最前線の方から示されたと感じた一日でした。

酒向さん(中央)が持つ360度カメラに向かって記念撮影

酒向さん、本当にありがとうございました。これからの里山の姿を、これからもぜひ学ばせてください。

<森林環境教育 教員 小林(こばけん)>