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2016年10月20日(木)

「保育の合理化WG・欧州製獣害防止資材キックオフセミナー」の開催!!

岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアムの保育の合理化ワーキンググループでは、森林資源を将来にわたって循環利用していくために、保育技術の合理化と効率化を図ることを目的に活動しています。しかし、近年のニホンジカ増加に伴う造林木の食害や樹皮剥ぎ被害は、木材の利用価値を下げるだけではなく、森林資源の循環利用や森林生態系へのダメージが懸念されます。

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ニホンジカの食害動画再生

そこで、ドイツ支社を持つBerry Plasttics Group社(以下、「BPG社」)がドイツ・ロッテンブルク林業大学と共同開発に取り組む、欧州製獣害防止用資材(「TUBEX」製品)を試験導入することで、日本での効果検証と併せて、ドイツと連携した獣害防止用資材開発に取り組むきっかけとするキックオフセミナーを開催しました。

(※「TUBEX」は商品名になります。)

 はじめに、保育の合理化WGリーダーの有限会社根尾開発代表取締役の小澤建司社長に、当キックオフセミナーの開催趣旨をご説明いただきました。

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(保育の合理化WG小澤リーダー)

次に、「欧州製獣害防止用資材(TUBEX)の開発コンセプト」と題して、BPG・ドイツ支社テクニカルセールスマネージャーのマーティン・ザットラー氏による「TUBEX」製品の内容を日独逐次通訳の辻寛氏を返して、説明いただきました。

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(向って左がマーティン・ザットラー氏、右が通訳の辻寛氏)

BGP社は、ドイツ及びイギリス国内における獣害防止用資材としては、約65%のマーケティングシェアを誇っています。これは、開発から10年間をかけて調査研究されたデータに基づき、4回の改良を加えた現在の仕様となっているからです。

では、その内容を解説します。

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まず、「TUBEX」製品には、大きく「チューブタイプ」と「メッシュタイプ」の二種類に分かれます。

チューブタイプには、緑色の「Ventex」と透明の「Ventex Clear」の二種類に分かれます。緑色の「Ventex」は、植栽木の伸長生長に有効な赤外線の波長を通しやすい構造となっています。同じ緑色でも「Ventex 12D」は、生分解性構造となっており5年程度で分解が進み、設置後の回収が必要ないとのこと。(ドイツでは環境問題の意識が高く、この点も重要視されています)

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(ドイツ・KWF林業機械展の展示写真、左「Ventex」右「Ventex 12D」)

一方、透明の「Ventex Clear」は、複層林の下層など直射日光が当たりにくい薄暗い場所(周りの樹高と同程度に下層空間の広がりがある場所)で有効な資材となっています。

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(ドイツ・KWF林業機械展の「Ventex Clear」展示写真)

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さらには、チューブと木製支柱を連結するための結束バンド部分は、チューブが破損しないよう部分的に強化されています。チューブ上部は反り返し構造となっており、植栽木の樹皮があたっても傷つくことを防ぐ配慮がなされています。また、生分解性である「Ventex 12D」の結束バンド自体も生分解性構造になっているなど様々な工夫が施されています。

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次にメッシュタイプは、輸入時は折りたたまれた状態となっていることから、設置にあたっては折りたたまれた状態を開いて、正方形に形を整えてから施工する必要があります。

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なお、メッシュタイプには、ビニールで覆われているタイプがあり、これは温室効果による植栽木の成長促進効果があります。また、ビニール部分も生分解性の素材となっているため、一定期間を過ぎると分解し、回収する必要はありません。

これら5種類の「TUBEX」資材を約500本の提供を受け、県内の本巣市、山県市の2箇所で試験施工します。(※試験施工の状況については、別途紹介します)

なお、支柱として使用した木製杭は、コンソーシアム会員の森の合板協同組合より提供いただきました。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。

 

続いて、「日本の風土にあった資材の追及」と題して大同商事株式会社東京営業グループ課長の木立 治(きだちおさむ)氏からは、日本国内に生息する野生動物のうち森林に被害を与える獣種の生態と分布状況の説明、防除として用いられる「ネット柵、忌避剤、単木資材」それぞれのメリット・デメリットに関する説明がありました。

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(向って右が木立氏)

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(野生動物の生態・分布の説明)

その中で、同社が単木資材として開発された「くわんたい」については、急峻な日本の地形での作業を考慮して軽量化を図ったことや、高温多湿の気候を考慮して通気性を高めていること、多雪地域でも雪が付着しない素材を使っているなどの解説がありました。

 

閉会のあいさつでは、森林文化アカデミーの森林技術開発・支援センター長から「今回のキックオフセミナーは、これからの獣害対策に向けたスタートを切ることを目的に開催した。今後も積極的な参加をお願いしたい。」と締めくくっていただきました。

なお、「TUBEX」資材の試験施工の結果は、順次情報提供して行きます。

 

また、今回のキックオフセミナーの内容については、NHK岐阜放送局の10月13日(木)「ほっとイブニングぎふ」と同日21時前のニュースでもご紹介いただきました。ありがとうございました。