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2026年02月25日(水)

「紡木人」山の木が建築になるまで(構造材の歩留まりと金額予測)自力建設2025

こんにちは。

自力建設「紡木人」で使用したヒノキは林齢64年生のヒノキ林を皆伐したもので、私たちが入学する一年前の2024年にエンジニア科の23期林業コースの学生が伐採してくれたものになります。
自力の設計を始める前に林業専攻の方々に伐採を行った演習林を案内してもらったのですが、塩田先生がこの地で60年以上前に植えられた木を、これから林業を目指す学生が伐採をして、その木が使われてチェーンソー練習場ができ、そこからまた新たに人が育っていく場になると考えると感慨深いみたいな話をしていて、私もすごいな、今までの歴史を紡ぎながら本当にそういう場になっていくといいなと思ったのを覚えています。

2025/05/01演習林の案内にて 米澤翼さんより木の流れについての説明

紡木人のコンセプトが、木に関わる人々の技術や想いを紡いでいける「紡ぎ手となる空間」になったきっかけでもあります。
ちゃんと山の木が建築になるまでの流れを伝えたい。ということで今回は構造材の歩留まりと金額予測に関してのお話です!

ただ関わっている学年がずれていたり、前年に伐採された以外の木も使用していたりと、木の履歴が連続できていない部分もあるのですが、わかる範囲でまとめていこうと思います。これからは徐々にデータとかも引き継いで連続させていけるようになるといいなとのことで、しっかりブログ書きます。

全体としては、立木(山で木が立っている状態)→造材(伐倒・枝払い・採材)→原木→製材→乾燥→プレーナー掛け→墨付・刻み→建て方→完成といった流れになります。
と言っても工程も多く、期間も2年弱くらいかかっていて内容が入ってきにくいので、全体の流れについて下図にまとめました!米澤さんがイラストを使って説明してくれたのがわかりやすかったのもあり、私も絵描いてみました笑。

 

山の木が建築になるまでの流れと歩留まり 紡木人ver.

採材や製材、プレーナー掛け、刻みが行われるにつれて材は元の状態から徐々に小さくなっていきます。
原料の材積に対して、加工後の材積がどれくらいになったかを歩留まりと言います。
“歩留まりが良い”とはロスが少なく、効率的に材料が活用されている状態を意味します。
上図では作業の流れと合わせて、おおよその歩留まりの数値も合わせて記載しています。
この内容について①立木→原木になるまでと②原木→建築になるまでの二つに分けて詳しく話をしていきます。

①立木(山で木が立っている状態)→造材(伐倒・枝払い・採材)→原木の流れ

2025年度の調査・皆伐データを林業専攻の渡邉久美子さんからいただきました。
こちらは紡木人で使用した木のデータではなく、次年度(2026年度)以降に自力建設等で使われる予定の調査・皆伐データになります。
紡木人で使用した立木や原木のデータが一部不足していることもあり、こちらのデータを参考にして立木から原木の流れを整理しました。
皆伐地は面積0.1ha、樹種ヒノキ、林齢:65年生のヒノキ林になります。アカデミー演習林の詳細な情報は演習林GIS「morivis」で見ることができます。
何年生の木か、また今までつくられてきた自力建設の情報も載っていて、つくり自体もとてもかっこいいので是非見てみてください!

2025年度演習林で皆伐した範囲

作業前と作業後の様子

今回皆伐した木の本数はヒノキ72本、スギ3本の計75本。
立木時の幹部分の材積を樹種、胸高直径、樹高から予測した合計がヒノキ47.28㎥、スギ4.41㎥、合わせて51.69㎥。
そしてこの総幹材積予測51.69㎥から、A材・B材・C材となった分は73%の37.738㎥となりました。残りの27%は木の先端部分や根張りの部分等になります。
A材は通直な原木(主に製材用)、B材はやや曲がりや小径(今回は集成材用)、C材は枝条や曲がり材等(主にチップ用)といった分類になります。

総幹材積予測から建築の構造等に使われるA材になった分は35%の18.359㎥となりました。
この中の13.051㎥、金額換算をすると272,948円分が来年度の自力建設用の材となっています。
これが製材されてどういった材が何本できるかは、今ちょうど製材をしているところなので、石原先生と私たち建築メンバーで製材記録を残していこうと思います。

このように次年度用のデータを参考に、木人の構造材に使用したA材の歩留まりを35%と想定して建物完成までの歩留まりを見ていきます。

立木の総幹材積予測からA材・B材・C材になった割合

②原木→製材→乾燥→プレーナー掛け→刻み→建築完成までの流れ 

続いてこのA材になったヒノキの原木が建築になるまでのお話です。
紡木人では4mの材が柱に10本、登り梁に21本、桁に10本、方杖に18本と計59本使われています。

原木のデータはわからなかったので、原木の立米はヒノキ末口直径24cm、4m材が59本であったと仮定して、末口二乗法で24(cm)×24(cm)×4(m)×1/10000×59(本)=13.593㎥としました。
末口二乗法とは丸太の細い方の切口(末口)の直径(cm)の2乗に長さを掛け、材積を求める手法で、計算式はV=d²×L×(1/10000)、Vは丸太の材積(㎥)、dは末口径(最小径、cm)、Lは丸太の長さ(m)になります。

この原木13.593㎥のヒノキが、製材されて、プレーナーをかけて、刻まれて建築完成時の構造軸組材になった分は18%の2.5170㎥でした!

登り梁21本は仕上寸法3.8mとなるべく4mめいっぱい使ったり、方杖は1本の4m材から部材を2本とったりと歩留りを意識して設計をしていたのですが、結構小さくなるなと感じました。
内訳は製材の過程で35%、プレーナー掛けの過程で71%、刻みの過程で72%の歩留まりとなりました。この内訳の数値は紡木人で使った一本一本の材の変化を追って計算をしています。

紡木人の原木から建築までの歩留まり

歩留まりのイメージ

一本一本製材後の寸法から、プレーナー掛け、刻み後の寸法を出して算出しています!

また紡木人で使われた木がいくらだったのか、価格の予測も合わせて行いました。

まず原木時(玉切りされた丸太の状態)の価格予測は、13.593㎥×20,914円/㎥=284,284円。
そしてその原木が、製材、乾燥、プレーナーをかけた後の価格予測では、今回無節材が多かったのも考慮すると724,343円、無節材を考慮せずすべて特一等で換算すると341,187円となりました。

これだけの木材を使わせてもらっていたことに感謝するとともに、建築として木の表情をどのように魅せるのか、うまく使い分けをしながら適材適所な使い方ができるといいなと感じました。

今回紡木人では道路から見える側や柱部分に無節材、木の4面で一番素敵な表情をしている部分を使っているので、ぜひ近づいて見てもらえたら嬉しいです!

紡木人の構造材の価格予測と木材の材積

これらの結果から、幹部分(立木時)から構造軸組部分(建築完成時)になった歩留まりはおおよそになりますが、

(①立木の幹→A材の原木になった割合の35%)×(②A材の原木→構造軸組になった割合18%)=6%となりました!

改めて数字にするとちょっと驚きますが、ただそれだけ各工程の中で選び抜かれてきたものが今建築として立っていると思うとすごいなとも感じます。

そして切られたり削られたりした後の材のすべてが捨てられているわけではなく、使える部分は下地材や桟木になったり、薪、プレーナー屑(畜産用)、堆肥として利用されたり、モリノスの子供たちが使う材になったりといろんな場所で使われています。
建築材として良質な部分は、ちゃんと考えて設計して建築材として使っていき、他の部分もそれぞれの用途にあった使い方ができるといいなと思いました。

ちょうどこの前、クリエーター科25期の林業・環境教育・木工・建築専攻の皆と斧と鋸とロープを使って木を伐採する授業があり(ものすごくいい授業だった)、枝や小径の部分、枝の跡がある部分をグリーンウッドワークや椅子や何かつくるのに使いたいと言っていて、自分たちは普段使っていない部分でも他の人にとっては貴重だったりすることを知り、視野を広げてより良い使い方ができていくといいなと思いました。

そして20260203とかかれている木はこのとき皆で来年度の自力用に製材したものになります。アカデミーの木は先人の方のお陰もあり、本当に四面・三面無節材が多い。来年の1年生の方々、皆が紡いできた木を使って素敵な建築をつくってくれたらなと思います。

クリエーター25期の皆で伐採・運搬・製材した材 20260203

最後にエンジニア科、林業専攻のみなさま、先輩や皆が伐ってくれて造材してくれた木で紡木人ができて、来年の自力ができます。これから社会に出てアカデミーにいるときよりもお互いのやっていることは見えにくくなるのかもしれないけど、林業と建築が繋がっていることを知っておいてもらえたら嬉しいです。

良質な材をありがとうございました!これからもよろしくお願いします!

演習林で伐採しているエンジニア科の学生たち

木造建築専攻1年 奥村 千里