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2026年01月29日(木)

わずかな隙間が耐久性能を激増させる【木造建築の雨仕舞い】

こんにちは。「雨漏り診断士」の松井匠です。
わたしは木造の耐久性能を上げ、同時に木を美しく経年変化させてくれる「雨仕舞い」の技術が大好きなのですが、今日「メンテナンス実習」という授業で「水の回り込みのわかりやすい事例があるよ」と辻先生が声がけしてもらって見学した自力建設の状況が非常におもしろいことになっていたので、全国の木造建築実務者、学生に共有したいと思います。こういう発見があるから自力建設とそのメンテナンスはおもしろいなー。

これです。
現場は2006年度自力建設「桂の湯殿」の軒先です。
竣工して19年経っているわけですが、軒先の板が腐朽して落ちています。
でもよく見ると、左の板と右の板で状況が全く違います。左は腐朽。右は健全。

ちょうどこの部分は谷になっている先っぽの部分なので、屋根の水が集まるところ。
自力建設は屋根も学生の設計施工。緩勾配なので、水がゆっくり流れてしまい、
先端の軒先板金の水切りを回ってしまったようです。

軒先の板金は、最後に「10ミリ」くらい下がったところを折って水切りにしているわけですが、屋根野地板と水切りがほぼ接しています。ここで「毛細管現象」によって吸い上げたというわけですね。水は、せまーいところを表面張力で登ってしまうのです。

水の流れというのはひたすら物理現象ですので、一度水が回ったら、同じ条件で何度でも回ります。
木材の腐朽は腐朽菌による「生物劣化」ですので「水・酸素・温度・たべもの」が全部適度に揃ったときに発生します。酸素と温度と木(たべもの)がある状態に、雨水が供給され続けると、腐朽菌が大活躍し、このように食べられてしまうわけです。

一方、健全だった板は、板金と板に隙間があります。10ミリくらいでしょうか。
このくらい隙間があれば、水切りを登ってきても、木に水が触れることはありませんね。

つまり、たった10ミリの隙間で明暗が分かれた事例です。
屋根が緩勾配で谷になっているという過酷な条件で、軒先が全く腐っていないというのは、まさに「雨仕舞い」の技術。(学生施工の偶然とはいえ)素晴らしい!良いものを見せてもらいました。

 

ちなみに、全建築実務者必読の名著で雨漏り診断士のバイブル「雨仕舞のはなし」(著:石川廣三 発行:株式会社彰国社)では、
水切りの「板状立ち下げ型」に軒裏が接している場合、安全な水切りの所要寸法は「22ミリ」とされています。

雨仕舞いでここまで差がありますので、みなさま参考にしてください。
こういう情報を発信するのも、アカデミー木造建築専攻の役割ですね。

以上報告でした。

 

木造建築教員 松井匠