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2025年05月28日(水)

自力建設2025プロポーザルコンペが行われました!

入学から2ヶ月弱、木造建築専攻一年生による「自力建設2025プロポーザルコンペ」が行われました。
課題発表からは1ヶ月。寝ても覚めても設計が頭を離れない経験をしたでしょうか。でも卒業後に実務が始まると、ずっとそんな感じ。それがクリエーターとして生きるということです。

自力建設2025プロポーザルコンペの様子

そして今日は、これから一年かけて心身を注ぎ込むプロジェクトのリーダーが決まるコンペ。学生はもちろん教員も緊張します。
大学と違って、多様な背景を持った世代の違うメンバーが集まるのがアカデミーの学びの強み。今年の7人も多種多様でした。


司会進行の小原先生。時間厳守の安定運営で進めてくれます。今年度のテーマは「屋根付きチェーソー練習場(仮)」
まずは辻先生から、コンペの概要について説明が行われました。

自力建設2025プロポーザルコンペの様子自力建設2025プロポーザルコンペの様子

このコンペは設計者を選ぶコンペです。提案内容や人柄など総合的に判断して、学生も教員も事務局も一人一票の投票を行います(想定クライアントは5票)。
投票用紙にはコメント欄があり、記名投票でそのまま建築学生に渡します。自分の案に90人近くがコメントをくれることは、建築実務でもまず無いでしょう。貴重な体験です。後日発表時に配るコメントシートの束、宝物にしてね。

自力建設2025プロポーザルコンペの様子

共通課題説明は、一年生の髙木さんが担当でした。
今回の敷地や詳細な設計条件を、スライドでわかりやすく会場に共有してくれました。
3-4人で1グループつくって、最大6グループを同時に実習したいという要望が、予算内でどの程度実現できるのかが焦点になりそうです。

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森光照「ヒトヒネリ」

自力建設2025プロポーザルコンペの様子
自力建設2025プロポーザルコンペの様子

トップバッターの森さんは役所勤務から林業経験を経て、木材利用のためにアカデミーの建築専攻に入学しました。
初めての設計ですが、ユニークでありながら動線と架構が合致したプランで、個人的には驚きました。模型もつくり込んで熱意を感じます。。「ヒトヒネリ」というネーミングに産みの苦しみが込められているような。


 

畑佐 向日葵「木環の学び舎(もくわのまなびや)」

自力建設2025プロポーザルコンペの様子
畑佐 向日葵「木環の学び舎(もくわのまなびや)」

岐阜高専の専攻科で建築を学んだ畑佐さんは木材の流通と木造建築を学びたくてアカデミーに入学。今期最年少ですが建築経験者で二級建築士も持っています。
円環状に並ぶ樹状方杖が、意匠的にも美しい計画です。つくり込まれた3Dモデルやロゴなど、説得力のあるプレゼンで会場を引き込みました。


 

髙木 始「Bold and detailed」

自力建設2025プロポーザルコンペの様子

髙木 始「Bold and detailed」

農水省勤務からアカデミー建築に入学した高木さん。
樹状を模した架構を並べて、その間にタープを張ることで、同時に実習できる人数を増やすアイデアです。
待機している人とチェーンソーを使っている人を明確に分離する、わかりやすいプランでした。
耐震に気を遣った形跡が見られ、ユニークな形状ながら堅実さも出ています。

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古池 康彰「木載舎(もくたいしゃ)」

自力建設2025プロポーザルコンペの様子
自力建設2025プロポーザルコンペの様子

美濃のお隣の郡上八幡で育った古池さんも初の設計提案でしたが、スライドの構成が非常にわかりやすい。
コンセプトは「集中して作業できる、武道場のような空間」で、だからこそシンプルで気が散らない設計にしたという明快さが前面に出ました。
コンセプトは言葉で考えますが、それを形態に変換する思考につながって設計に反映されているのが良かった。

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奥村 千里「紡木人(つむぎと)」

自力建設2025プロポーザルコンペの様子
 

木造住宅設計施工をする会社から、さらなるステップアップのためにアカデミーに入学した奥村さん。
建築経験者としてのスキルより、演習林で見た伐倒の感動や、林業のかっこよさ、木材への感謝など、
ここ2ヶ月のアカデミーでの感動が設計の原動力になったような案でした。
割り切って余裕を持った3ブースとし、タープも危険だから使わないという潔さが光ります。

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千々和 駿「Gate」

自力建設2025プロポーザルコンペの様子
自力建設2025プロポーザルコンペの様子

「異なる世界へ映る舞台装置、入門、門下生」というコンセプトでゲートと名付けられたプラン。
長方形のシンプルなものですが、丸太柱で鳥居を思わせる神聖なイメージが付加された建築です。
文化人類学を学んだ千々和さんならではの心のこもった言葉選びが会場の雰囲気を変えました。文系の強みが出たプレゼンです。

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坂巻 陽平「曇森(くもり)」

自力建設2025プロポーザルコンペの様子自力建設2025プロポーザルコンペの様子

高知新聞の記者から林業に転身し、アカデミー木造建築に入学した坂巻さん。
先日書いてくれたブログ記事の無駄のないセンテンスに驚きました。
会場を笑わせながらも、結論から言うキビキビとしたスライド構成で聞く人を退屈させないプレゼンでした。
雲の形状を模した屋根と、現場は日が照るより曇りが嬉しいのだという林業経験者の実感から設計された案でした。
無駄がなさすぎて時間が余っていましたが……。
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自力建設2025プロポーザルコンペの様子

休憩時間にはポスターや模型を前に自分の案の解説します。

自力建設2025プロポーザルコンペの様子

会場からは真剣な質疑が。「その垂壁は、準耐力壁にならないのでは?」鋭い指摘です。

自力建設2025プロポーザルコンペの様子

高校卒業したばかりのエンジニア科からも質問が出ていました。一つの設計案に、世代を超えた忌憚のない意見が飛び交うのが、この会のいいところ。

自力建設2025プロポーザルコンペの様子

想定クライアントの杉本先生は「こちらの要望をこんなに真剣に汲み取ってくれるとは……」とクライアントとしての心持ちを新たにした様子。

自力建設2025プロポーザルコンペの様子

最後は、想定クライアントの杉本先生から感謝のコメントが。「短期間でこんなに考えてくれてありがとう!」

何かをつくると、そこにはこれまで生きてきた経験が載ってきます。
7人の発表に見えるバックグラウンドと未来への期待が、毎回心に響きます。

結果発表は来週の火曜日。
棟梁が選ばれ、今年の自力建設の行く末が決まります。

 

木造建築教員:松井匠