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2023年11月24日(金)

雨漏り調査の散水試験(メンテナンス実習2023)

毎年行っているメンテナンス実習の授業。
自力建設を体験済みの2年生・クリ科の木造建築専攻とエン科の林産業コースの合同授業です。

過去の自力建設22棟の調査、修繕・改修を行っています。今年の調査対象は8棟。

2つのグループに分かれて、それぞれの建物調査を行い、改修方針を立てていきます。

2004年度 風の円居

2002年度みさきの茶屋、2010年度あらかしのだんだん

調査時に懸念事項だった雨漏り部分の散水試験も行いました。
2005年度自力建設「switch(駐輪場)」のトップライト部です。

switchのトップライトは、屋根の板金を立ち上げ、ポリカーボネイトの板が取り付けられています。

まずは現地を上下からしっかり観察し、雨水浸入の仮説をなるべく多く立てます。
各所のコーキングの劣化や、板金の立ち上がりの取り合う部分も気になります。

8つほどの雨水浸入の仮説を立て、それぞれ検証することになりました。

まずは、下部の板金の取り合い部分に水をかけていきます。10分程度の散水では何も変化がありません。(部材構成の複雑な木造住宅では1カ所あたり90分程度の散水が標準)

散水位置を徐々に上部に上げていき、仮説の検証を行います。トップライトの縁にかけた際、雨漏りが発生!!
ポリカーボネイトの板と板金の隙間のコーキング劣化により水が芯している様子が確認できます。
しかも、ポリカーボネイトの板なので、浸入後の水の動きも見れました。右から入った水が、左の方まで拡がって直下以外からも漏出しています。一か所から入って2か所から漏水です。これで、浸入箇所が特定できました。

ですが、原因究明で安心してしまいがちですが、ここで終わってはいけません。
事前に立てた仮説を全て見ていきます。

さらに上部、の板金の継ぎ目に散水試験を行うと、さらに漏水が発覚。これもコーキングの劣化が原因です。

一通り散水試験を行い、4カ所からの浸水が確認できました。

では、対策を考えるにあたって、この部分を解体してさらに状況の分析を試みました。

分解してみると、すでに褐色腐朽菌にやられている下地材や、今回の散水試験では漏出しなかった部分も一部雨水浸入が発生している箇所を確認できました。

ゼミ室に持ち帰って、現状図面と課題の整理、対策案を検討します。
基本方針はシンプルな納まりにして状況把握がしやすいように改修することにしました。

次回までに、必要な木材や材料を段取りしていきます。

実際の現場でメンテナンスまで考えることができるのは非常に勉強になります。

 

合わせて、簡易的なメンテナンスを3施設同時進行で行っています。

9期自力建設「こならのみち」です。

散策路に跳ねだしていたデッキに雨が当たり先端が劣化していました。少し短くなるように切りそろえて雨掛かりを減らしました。

二枚重ねのデッキなので、上下の板をきれいに切りそろえないといけませんが、そこは自力建設の経験者、丁寧な施工でパリッと仕上がりました。

1期自力建設「森の中の四寸傘」です。

屋根の雨漏りで野地板が一部劣化しています。

過去にもメンテで修繕しいますが、少し複雑な屋根のため課題が残っていました。今回は、気になる隙間をコーキングで埋めています。

次回の授業までの経過観察を行います。

 

17期自力建設「里山獣肉学舎」です。

建具がそって、開閉時に建具が擦るという課題がありました。建具同士のクリアランスがぎりぎりだったため、少し板をカンナがけを行い調整しました。

少しマシになりましたが、もう少し改善できそうです。課題は次回に持ち越しです。

教授 辻充孝