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2020年06月28日(日)

和傘の後継者育成支援とNHKテレビ番組のご案内

森林文化アカデミーでは今年度、岐阜和傘の部品を作る職人の後継者育成をお手伝いしています。

岐阜和傘の生産者の間では今年から一般社団法人「岐阜和傘協会」を設立し、後継者がいなかった和傘部品職人の育成を始めました。「傘骨」と、骨をつなぐ「傘ロクロ」です。

傘ロクロは、岐南町の長屋木工所を営む長屋一男さんが日本でただ1人の職人です。この後継者候補として、金属加工業から転職した近藤智弥さんが選考を経て選ばれ、働き始めています。

 

傘ロクロ職人といっても、最近は需要の減少に伴い、一人で何役もこなさねばなりません。長屋さんも竹や木の柄の加工、ハジキと呼ばれる留め具の加工と取り付け、ロクロへの柄の取り付けなど、さまざまな仕事をこなし、使う道具も多岐に渡ります。下の写真は竹の柄を回転させる専用機械の上で、カンナで節を削っているところです。これらすべてを後継者に教えるのは、大変な時間と労力を伴います。

 

森林文化アカデミーでは、近藤さんに木工専攻の一部の授業、「手工具」や「木工機械使用法」を学んでもらうことを提案し、実現することになりました。「科目履修生」の制度を活用します。

近藤さんは授業のある日は長屋木工所を休み、アカデミーに来て木工専攻の1年生と一緒に学びます。授業料は岐阜和傘協会が負担してくださっています。

6月の学校再開とともに「木工機械使用法」の授業が始まりました。

バンドソーでの巾割り

 

続いてノミやカンナの使い方を学ぶ「手工具1」が始まり、9月初旬まで続きます。

 

これらの手工具や木工機械の技術はもちろん師匠である長屋さんからすべて学ぶこともできるのですが、あえて森林文化アカデミーから提案した理由は2つあります。

1つは、幅広い安全への理解など、伝統工芸の現場では教えるのが難しい部分を補うこと。もう1つは、工房で常に師匠と弟子が1対1になりストレスが生まれるのを避けるため、多くの人のつながりを作ることです。近藤さんにとっては、同じものづくりの志を持った仲間ができ、相談相手にもなります。教える側では、長屋さんと私(教員・久津輪)が常に連絡を取り合いながら教育方針を決めています。

伝統工芸の後継者育成はいま各地で行われていますが、うまく行っているところは第三者によるサポート体制が機能しているように思います。岐阜和傘の後継者がうまく育つよう、森林文化アカデミーとしても支援を続けていきたいと思います。

 

岐阜和傘に関わるNHKのテレビ番組が放送されます。ぜひご覧ください。

7/3(金)23:15~23:44 NHK BSプレミアム
最後の○○〜日本のレッドデータ〜(2)  MC 草彅剛
長屋一男さんの特集で、草彅剛さんとスタジオで対談します。森林文化アカデミー教員の久津輪もインタビューで登場します。

7/5(日)8:00〜8:25 NHK総合テレビ
「小さな旅」 岐阜県 長良川界隈
長屋一男さんや和傘職人の田中美紀さんが登場します。
(小さな旅は、放送終了後もNHKオンデマンドで視聴できます)

 

久津輪 雅(木工・教授)